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日本にGoogleやFacebookがどうしたら生まれるか?

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若者が起業しない事、起業家が中ぐらいの夢しか追わない事が原因か?

ここまで、くどくどと米国のスタートアップ環境について述べてきたが、そろそろ本題の日本の話に入りたい。

まず、日本の「起業家」について。

冒頭の「日本にはVCマネーが少ないからメガスタートアップが育たない」説とならんでよく耳にするこんな説がある。

「日本の若者は起業志向が低すぎる」とか、それゆえに

「起業家の絶対数が足りない」とか、あるいは

「日本の起業家は中くらいの成功で満足し、大きなリスクを負わない」などなど。

上記は、個々の事象として見ると、当たっている面がそれなりにあるかもしれない。

しかし仮にあったとしても、それはまたしても「結果」であって、日本にメガスタートアップが生まれない「理由」では決してないと断じたい。むしろその逆である。

理由は簡単に説明できる。

「日本で若者の起業志向が低い」のは、日本で起業する事の期待収益率が低いからである。 ゆえにその結果として「起業家の数も少ない」。

あるいはそももそも日本で起業する事の期待収益率が中くらいしかないのであって、べつに起業家が意図して「中くらいの成功を狙って」いるわけではなく、素晴らしい才能が、置かれた環境のなかで血のにじむ懸命な努力をした結果がそうなのである。

(そもそも筆者は10億円の買収イグジットは日本では大成功だと思っており、「中くらい」などとは微塵も思っていない事を付け加えておく)

「米国では、スタンフォードやハーバードの秀才がたくさん起業するではないか」と言うが、「崇高な志」や「リスクを果敢に取る勇気」やらをもってして起業しているわけでもなんでもなく (まあ、そういう人もいるのだろうが)、単にそれが最も期待収益率が高いという理由で合理的に起業というキャリアを選択しているに過ぎない。

合わせて、「失敗のコスト」が限界まで下がっている事がそれにダメを押している。(その点は日本も同様だが)

Y-combintorのポールグレアムも言っている通り、「大学を出て起業した22歳が失敗したところで、単に23歳の失業者になるだけの話」なのである。 新卒一括採用の日本と違って、その時点で就職すれば良いという話だ。

兎も角、日本と比べて圧倒的に期待収益が高い米国における若者のキャリア選択と比べて、「日本の若者がリスクを取らない」とか「内向きで起業志向が低い」というのは本末転倒であり、もっと言えば、いつの時代も若者のキャリア志向はその親やじいさんばあさんが作ってきた社会状況に対して最適化される。 今の日本では 「起業しないのが合理的選択」という社会をオトナ世代が作った結果である。

逆に言うとこれを変えれば状況も変わる。このことは後述する。

話が脱線したが、日本の「起業家の質」について。

私は米国の著名スタートアップのファウンダーとメンタリングセッションで一緒になる機会もあるが、はっきり言って米国で成功した起業家のレベル・資質に日本の起業家が負けているとは必ずしも思わない。

むしろ90年代からのインターネットと新興企業向けIPO市場の誕生以来、数世代にわたり着実に成功の拡大再生産がなされ、着実にレベルが上がり、すそ野が広がっている事を実感する。

またインベスター側とて、個々人のレベルでは米国のベンチャーキャピタリスト並のスキルや行動力をもった人も複数いると思う。

さりとて、既述の通り、シリコンバレーの富の拡大再生産は1900年代中盤から60年ほどかけて何世代にもわたって、現在の資本量や世界中から集まる人材層のぶ厚さが形成されてきたのだ。生態系というものはすべからく一朝一夕にできる代物ではない。

今後はニューヨークや北京・上海やがそれに続くであろうし、私がVC投資の拠点としているシンガポールにもその可能性はあると思う。世界で最も成長する地域のひとつである東南アジア、そしてハブ都市たるシンガポールには、投資家、起業家、ディールフローが集まってきている。

東京は上記の通りミクロの才能において十分にそのポテンシャルがあるのだが、いかんせん米国や中国、シンガポールなどに比べた圧倒的なビハインドはその市場規模の小ささと低成長という、マクロ環境にある。

そこでいよいよ、最終結論である。

日本からメガスタートアップが生まれるためになすべき事

米国の状況から逆算的に考えて、日本にGoogle級のスタートアップが生まれるために最も重要な事は何だろうか?

それはズバリ、「海外に出る事」。 これしかないと考える。

海外に出ると言っても「海外に逃避する」という意味ではない。確かに既述の通り、日本の会社はあまりに不条理な足枷を強いられている点が多いし、そのために企業が海外に逃避する傾向がある事は巷間言われている通りだ。

しかし、ここで言っているのは「海外の市場を獲りに行こう」という事だ。

米国を米国たらしめる最大の理由の一つは、その市場の大きさにある。

まず米国自体がGDPでざっと日本の2.5倍と世界でもダントツの大きさだが、それ以上に英語圏が大きい。

英語を母国語とする人口だけで5億人おり、英語を公用語として使う人口でいうとその数倍はいる。

つまり、工場も販売スタッフも不要なインターネット産業においては、米国のスタートアップはDay1(創業初日)から日本の10倍くらいの対象人口の世界市場でデビューする。

さらに英語圏で有名になった後であれば、日本など他言語への展開も比較的容易である。

事実、Googleの売上のうち半分以上は米国外から得ているし、Facebookも北米売上は全体の半分以下である。

また英語と世界の言語市場を競う中国語の台頭も著しい。

ご存じ13億人の国内人口だけではなく、シンガポールや米国にだって、世界中いたるところに中国語話者は散らばっている。

理屈からして同じサービス・産業で戦おうとする場合、より市場が大きい地域を制するほうが大きくなるに決まっている。

日本にGoogle級のメガスタートアップが生まれるためには、当たり前だがGoogleレベルの収益規模を持たない事にはどうしようもない。(ちなみに昨年のGoogleの利益は税引き後で1兆円ほどだ!)

仮に日本国内だけで検索でもECでもトップシェアを獲ったところで、その10倍以上の市場規模を持つ英語圏市場の会社と比べれば、10分の1以下の企業規模にしか、どうがんばってもならない。

同じく顕在市場規模で既に日本を抜き、更に成長率においては日本の何倍もある中国に存在する企業に比べても、もはや日本の企業は負けてしまう。

現に中国のネット総合企業Tencentの時価総額は約8兆円、検索エンジンのBauduは5兆円弱で、日本のネット総合ダントツ1位のヤフージャパンの約3兆円をはるかに抜き去っている。近々再上場をするアリババは10兆円の時価総額と目されており、9兆円強の米Facebookすら抜き去るかもしれない。

市場規模が小さい日本では、世界市場を獲りにいかない限り、絶対に米国・中国並のメガスタートアップが生まれることはありえない。 理屈上あり得ないのである。

これが本投稿タイトル「日本にGoogleやFacebookがどうしたら生まれるか?」の回答である。

「何だそんな簡単な答えか、そんなのわかってる」と言われればそれまでだが、どう考えてもそれしか回答が無い。

問題の本心、センターピンは、VCの資金量のせいでもない。起業家の資質のせいでもない。 市場が小さいのに海外市場を獲るのが苦手だから日本にメガスタートアップが生まれないのである

一方で、世界を見渡すと 「小さい国」から世界レベルの会社が出ている。

ネットスタートアップではないものの韓国のサムスン、台湾のスマホメーカー HTC、マレーシアのエアアジアや、ネット系でもSkypeはエストニア発、 音楽配信のSpotifyはスウェーデン、フィンランドのAngry Birdsなど。

これらの「小規模国家発、グローバルメジャー企業」のように世界市場を獲らない限り、日本からメガスタートアップが生まれることは無い。

日本の経済規模は中国だけでなく、これからインドやブラジル、インドネシアに追いつかれるだろうし、抜かれるというゴールドマンサクスの予測もある。

そのような「中規模国家」になれば尚更、世界市場のパイを獲れる企業だけが大企業化できる。

もちろん、容易ならざる所業である。上記の通り、非米国の、あるいは米国ですら非シリコンバレー発の大手ネットサービスはまだまだ少ない。それほどハードルが高いという査証なのだろう。

なお誤解なきよう、本稿では「日本にメガスタートアップがどうしたら生まれるか?」の方策を探る議論をしているのであって、けっして「日本の起業家は全員海を渡るべし」と煽っているものではない。

日本市場に絞ったほうが合理的という判断もあるだろうし、それで成功を収める可能性が無いと言ってるのでもない。(成功の定義は幅も種類もたくさんある)。

お上がなすべき唯一の事

最後に。

既述のM&Aにおけるのれん代償却ルールのように、日本だけで企業が重い足かせをはめられているような規制やルールは直ちに是正し、日本の企業が少なくとも世界市場でイコールフッティング(同条件)で戦えるようにするべきであるが、そのように「国が企業の邪魔をしない」事とは別に、日本に米国並みのスタートアップを生み出すために、行政がやらなければいけない重要な事が一つだけあると思う。

それは、資本市場の再構築である。

冒頭の惨憺たるIPO市場の現状は、ここにきて少々マシになってきたとは言え、私に言わせれば国家犯罪レベルで罪深い

昨年まで不透明で不条理な理由で、実質的に新規上場を凍結してきたに等しい対応をしてきたかと思えば、今度は日本の新規上場が復調、6年ぶり中国抜く などと言ってメディアもろ共、浮かれている。

日本という国は過去、これを数年おきに繰り返してきた。

メディアをはじめ国民こぞって、ドットコムバブルを祭り上げては、それが弾けたら文字通り手のひらを返すように、その時に一番目立っていた人物をスケープゴートにして叩いた。 それを忘れたころに再びブームがやってくると、またその時のトップランナーを祭り上げ、祭りが終わると こき下ろす、その繰り返しだ。

そのようなメディアもメディアだが、行政はそのような世間の気分とは無関係に 「いつでも、誰にでも分かりやすく納得できるルール」 を堅持すべきだろう。

にもかかわらず世間の空気に迎合してか、他に理由があるのかはともかく、ルールをコロコロ変えるから、「もはや上場は目標にあらず」などといった間違った議論がメディアで横行したり、既述の通り 若者の起業志向が減退したりといった、情緒的で非生産的な事を繰り返してきた。

極めて大きな、国家的損失だと思う。

このところ少し盛り返して新規上場の社数が増えたのは結構なことだが、問題は調達金額である

既述の通り、IPOの資金調達額は昨年までは米国に数十倍の差が付く状況であったし、今年に入って好転していると言っても、スタートアップではない大手飲料会社の「老舗IPO」により数千億円調達して平均値を上げているだけで、日本の資本市場はスタートアップの資金調達の場としては十分に機能を果たしているとは言い難い。

無論、資本市場を整えたからといって明日から日本にメガスタートアップが生まれるわけではない事は既述の通りだ。

しかし上記の通り、若者の起業や上場のモチベーションまで阻害してきたという意味で資本市場の体たらくが少なくとも間接的にスタートアップ育成を阻害してきたという誹りは免れないだろう。

その点において今、猛烈な勢いで米国にキャッチアップし次世代の覇者たらんとしているのが、またもや 中国だ。

昨年のIPO資金調達額は、米国の450億ドルに対して、深セン取引所だけで111億ドル、香港の98億ドル 上海の53億ドルを足して、中国合計で262億ドル(約2兆円強)と、米国に肉薄して2位に付けている。

日本は時価総額の合計、つまり主に歴史ある大企業により構成される価値の合計では未だかろうじて世界2位だが、新しく生まれる上場会社の成長の源であるところのIPO資金調達の規模では、中国の足元にも遠く及ばぬ二桁もの大差を付けられ、負けている

新しい会社が成長の糧たる潤沢な資金を得やすい国と、古い会社だけ(かろうじて)規模を保っているものの新しく生まれる会社には資金が回らない国、どちらの国の経済の先行きが明るいかは自明である。

日本経済は、ここを改善せずして明るい未来がありえるだろうか。

これはベンチャー支援がどうのという話ではもはやない、国家存亡の危機についての議論である。

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