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廃炉に伴う損失処理の変更は、イカサマだ!

 突然ですが、原子力発電所を廃炉にする際、会計的にどのような処理が必要かご存じでしょうか?

 例えば、原子力発電所が爆発事故を起こし、止む無く廃炉にする場合。或いは、地下に活断層が走っていると分かり、止む無く廃炉にする場合。或いは、何らかの経営判断で、まだ設備を稼働することが可能であるにも拘わらず、予定より早く廃炉にする場合。

 廃炉にするということは、原発の施設としての価値がゼロになるということですから‥否、それだけではなく撤去費用が掛かる訳ですからマイナスの価値になることが予想される訳ですが‥いずれにしても、廃炉にすることを決定したならば、廃炉に伴う損失を計上することが必要になるのです。

 そうですよね?

 例えば、貴方が商売を営んでいたとして、偶々集中豪雨のせいで店を失ったとして、或いは、営業用の車を多数失ったとして‥そして、それらが保険に入っていなかったとすれば、そうした損失を即計上しなければならないのは当然でしょ?

 ということで、東日本大震災で被災した東京電力の福島第一原発1~4号機については、既に9469億円が損失として計上されているのだ、と。

 では、それ以外の全国各地の原発についてはどうなっているのかと言えば、廃炉に伴う会計処理を巡ってこれまで専門家が議論行ってきた訳ですが、やっとこの8月6日に、経済産業省が、電力会社が原発を廃炉しやすくするための新しい会計制度案を決めた、と報じられているのです。

 原発を廃炉にしやすくするための会計制度案? 一体何のことなのでしょう。

 廃炉にすることを決定したら、その施設の価値がゼロになるのは、当然。

 つまり、貴方が商売をしていて、そして集中豪雨で店や営業用の車を失ったら、それを損失として計上するのは理の当然。しかし、そうやって多額の損失を計上すると、債務超過になってしまうこともあり得るのです。

 電力会社だって同じなのです。というよりも、電力会社の損失は桁が違い過ぎる。それに電力会社が債務超過に陥れば、地域に与えるインパクトも大きい。

 但し、電力会社側としては、こうして原発の事故が起きなかったとしても、いずれ寿命を迎え廃炉になることを想定していた訳ですから、それなりの対策をしていたことも事実です。つまり、電力会社は、原子力発電所の廃炉の費用を40年かけて積み立てることによって、一度に巨額の費用を計上しなくても済むようにしてきたのです。

 しかし、そうは言っても、全国各地の原発のなかには、古いものもあれば、新しいものもある。つまり、まだ廃炉の費用が十分に積み立てられていないものもあるのです。従って、今回の事故によって予定より早く廃炉になる原発については、一挙に巨額の経費を計上する必要に迫られ、その結果、電力会社が債務超過に陥ってしまう可能性もあるのです。逆に言うと、そうして債務超過に陥る可能性があるならば、電力会社は廃炉にすることをためらい、廃炉が進まないことが懸念されるのです。

 ということで、この廃炉に伴う巨額の損失処理が頭痛の種であったのです。どうにかして良い解決策がないか、と。そこで、専門家がこれまで協議をしてきたというのですが‥では、専門家たちは、どのような結論を出したのでしょうか?

 ・原発の運転終了後も10年間は廃炉費用を積み立てることを認める。
 ・廃炉中も使い続ける原子炉格納容器などの設備は資産価値が残っていると認め、全額を損失処理しなくて済むようにする。

 ちょっと専門的になり過ぎて分かり難いかもしれませんが、要するに、本来、一括処理すべき損失を、分割して将来に繰り延べることを認めるというのです。つまり、損失処理の先送り。

 例えば、損失額が1000億円に上ったとします。その1000億円を即座に損失として計上すれば、債務超過に陥るかもしれません。しかし、その1000億円を毎年100億円ずつ分割して損失として処理するならば、その後の利益で毎年の100億円の損失をカバーすることができるかもしれず、債務超過に陥ることを回避できる可能性があるのです。

 どう思いますか?

 全く話が逆さまになっているのです。

 債務超過は避けなければならない → 損失を分割計上する

 確かに、それで債務超過は回避できるでしょう。しかし、会社の実態はと言えば‥明らかに債務超過に陥っているのです。つまり、価値もない施設を如何にも価値があるかの如く資産の部に計上することを認めるから、帳簿の上では債務超過に陥っていないように見えるだけ。

 集中豪雨で失われた店や営業用の車が、まだ存在するかの如く、帳簿に計上するようなことが認められる筈がない。でしょ?

 そんなことを国家ぐるみで認めることが、どれほど悪い影響を与えるのか、分からないのでしょうか? そんなことをしておきながら中国を非難することができるな、と。

 まあ、私がこんなことを言えば、それでは電力会社が潰れてもいいのか、とか、だったら、その分電力料金を値上げして消費者に請求することになるが、それでもいいのか、という批判が予想されるのですが‥

 しかし、それはそれ、これはこれ、なのです。

 電力会社が潰れてもいいとは言いませんが‥しかし、もう既に国によって支援されているから東電の経営が続いていることは国民が皆承知しているところです。それと同じようなことが他の電力会社について起きようとも何の不思議もない。

 しかし、そのように債務超過が現実化してしまうと、電力会社や経済産業省に対する批判の声が強まることが明らかなので、それで何とかしてそうした事態を回避したいというのが本音なのです。そして、一方で、電力料金の値上げが避けられなくなるが、それでいいのかと、脅かしているだけなのです。

 どう考えてもおかしい!

 それに電力料金の値上げを仮に消費者が飲まなくてはいけないにしても、それと電力会社の特別損失は分けて考えるべきなのです。どうしても、債務超過に陥らせたくなければ、それなら国が資本注入をするのが筋。それだけの話です。

 それをインチキで切り抜けようとするこの体質。

 繰り返しますが、電力会社を債務超過に陥らせたくなかったら、国が資本注入するしかないでしょう? しかし、国からの資本注入を受け入れるとなれば、経営陣の責任問題に発展するので、それは受け入れたくないということでしょ?

 この問題は、原発を再開するかどうかとは全く切り離して議論すべき問題です。そして、繰り返しになりますが、原子力村の人々が、こうしたインチキの会計処理を選択するという体質を持っているからこそ、彼らが、幾ら安全だと言っても信じることができないのです。

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