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バブルの死角:消費税増税とTPPとの驚くべき関連を語る、目から鱗の一冊

著者の岩本沙弓氏は、元外資金融機関の凄腕トレーダーで、現在、大阪経済大学の客員教授をつとめながら、金融コンサルタント・経済評論家として活躍しておられる美女である。

この岩本氏の近著『バブルの死角 日本人が損するカラクリ』(集英社新書)が面白い。
まさに、国際金融の仕組みを知り尽くしたプロとして、消費税の正体と、なぜ、消費税増税とTPPが、まるでセットになったように現れてきたのが、明瞭かつ、説得力に満ちて語られているからだ。

消費税の問題点などについては、私は既に、斎藤貴男氏の著作「消費税のカラクリ」などを読んでいた。
斉藤氏の指摘する消費税の問題は、大雑把に分けて二つある。
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ひとつは、消費税は、結果的に零細から中小の企業や商店は、商品値上げによる売り上げの悪化を防ぐために、消費税分を自己負担することが多く、その結果、零細や中小企業に負担がかかり、倒産を助長する。また、同じ理由から、実際には消費税は、もっとも徴収率が低くなっているので、財政再建のために消費税を上げるというのは、矛盾しているということ。

もう一つは、一般消費者が知らないことだが、輸出企業には消費税は「輸出戻し税」として還元される。これによって大企業が潤う仕組みになっている。さらに、正社員には消費税がかかるが、派遣社員には消費税がかからないため、正社員を減らし、派遣社員に切り替えることで、さらに大企業が潤うという構造がある。
派遣社員の分の消費税は、名目上、派遣会社が負担することになるが、2年間は免除されるので、下請けの派遣会社を2年ごとに作り直すということを行えば、消費税はまるまる、合法的に脱税できるという驚くべき仕組みだ。

さて、ここで、岩本氏の近著に戻る。
彼女の指摘は、さらに鋭い。

この消費税の戻し税は、つまり輸出還付金は、2012年度だけでも2兆5千億円にものぼり、この半分が、経団連の大企業に還付されている、いわば、打ち出の小槌となっているということだ。
つまり、消費税が上がれば上がるほど、経団連は潤う仕組みになっており、それこそが、財界が消費税増税を推しすすめようとする原動力であることを、彼女は看破しているのだ。
そして、中小企業は値上げ分を価格に転嫁できないから、やせ細る。まさに、大企業をさらに肥え太らせるための増税であるということだ。

それでは、なぜ、これとTPPが関係があるのか。
つまり、この付加価値税分が輸出企業に還付されるために、その分、輸出企業は国際競争力を持つことができる。それは、じつは、米国にとっては、不利益となる。
だからこそ、経団連が求める消費税増税には、米国は諸手を挙げて賛成できるはずがなく、この消費税増税とのバーターとして、米国の国益となるTPPが浮上してきたのではないか、というのが、彼女の読みである。

読みといっても、ただの陰謀論的推論ではなく、上記の驚くべき内容が、豊富な裏付け資料と冷静な分析によって、裏付けられている。

消費税とTPP。一見関係がなさそうだが、なぜ、この話がほぼ同時に出てきたのかが、よくわかる。財界と米国、両方の機嫌を同時に取るためには、それが不可欠であったということだ。

そして、現在、与党絶対多数のもとで、消費税増税・TPPが着々と決まっていく中、これはまさに必読の書である。

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