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社会保障制度改革国民会議報告書について

本日、社会保障制度改革国民会議による報告書が提出され、公表されました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/houkokusyo.pdf

社会保障制度改革国民会議とは、社会保障と税の一体改革の中で、社会保障制度の主要な内容については国民会議で審議することが三党合意でなされ、民主党政権下で成立した社会保障制度改革推進法によってその設置が根拠づけられた首相官邸直属の会議体です。

委員は最大20人とされ、国会議員も兼務できるとなっています。委員は昨年11月の段階で15人が選任され、政権交代後も委員の異動はありません。清家篤慶應義塾長が会長を務めています。なお、結果的に国会議員は委員として参加していません。委員は、各利害関係団体の代表などが直接参加しているのではなく、ほぼ学識経験者を中心に構成されています。

(社会保障と税の一体改革)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/index.html

(委員名簿)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/meibo.pdf

会議の流れをざっと見る限り、利害関係団体からのヒアリング、委員からのプレゼンテーション、議論の取りまとめ、方向性の打ち出し、報告書案の作成という普通の流れに沿って議論がなされていますが、会議の開催頻度は約8ヶ月で20回となっており、比較的開催頻度は多いとと言えます。また、議事録からは各委員が侃々諤々の議論を行っていることが伺われ、少なくとも官僚がお膳立てを行ったシャンシャンの会合ではないと思います。

さて、この報告案の内容については当然今後考察して行きますが、本日は入口論と今後の見通しのみ述べたいと思います。

報告書案を通読してまず感じたことは、ほぼ昨年取りまとめた社会保障と税の一体改革の大綱の内容とそれほど大きくは変わらないという点です。現状認識についてもほぼ同じですし、総論全体で説いていることも異口同音と言ったところです。この点は、国民会議の委員の構成が学識経験者が中心だからかもしれません。

しかし、はっきりと方向性が示されているものがあります。一つ目は、民主党が主張してきた「最低保障年金」というものが事実上検討の対象外とされていること。二つ目は、後期高齢者医療制度についてはっきりと存続の方向性が示されていることです。

淡々と社会保障を論ずる報告書にして、最低保障年金(税方式による年金制度)については、下記の通り経緯までが詳細に記載されています。

(報告書より引用)

「その後行われた閣議決定(「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』」)では、社会保障国民会議で別途行われた医療・介護費用のシミュレーション結果も踏まえ、社会保険方式による制度運営を前提とした基礎年金の最低保障機能の強化、医療・介護の体制の充実、子育て支援の給付・サービスの強化など機能強化と効率化を図る諸改革に取り組むこととされた。 その後、政権交代を経て、社会保障・税一体改革の検討が進められたが、これらの社会保障国民会議において行われた議論は、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大や、最低保障機能の強化(最終的には、三党協議により、低所得・低年金高齢者等への福祉的な給付金として実現)等の改革メニューの下地となった。また、改革推進法の立法過程では、「社会保険方式を基本とする」ことが三党で合意された。」

最低保障年金とは一言も書いていませんが、社会保険方式による制度運営が前提であると強調されているのが分かります。しかし、よく読むと「あれ?いつの間に三党合意で『社会保険方式を基本とする』となったんだ?」と首を傾げてしまうのです。三党合意の中で社会保障分野については、実質的に社会保障改革推進法の骨子となっているのですが、合意文書では「今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること」としか書いていませんので、これはもし事実と異なるのなら、民主党は反論しなければならないでしょう。

二つ目、後期高齢者医療制度については、非常にあっさりと存続の方向性が書かれています。

「なお、後期高齢者医療制度については、創設から既に 5 年が経過し、現在では十分定着していると考えられる。今後は、現行制度を基本としながら、実施状況等を踏まえ、後期高齢者支援金に対する全面総報酬割の導入を始め、必要な改善を行っていくことが適当である。」

民主党はこれをもってして三党合意実務者会合からの離脱を決めたわけですが、私はこの点については、最低保障年金にしても、後期高齢者医療制度の廃止にしても、その主張が国民から支持を得られるように根拠や試算も含めて丁寧に示さなければならないと思っています。意見が取り入れなければ離脱、だけでは国民からは支持されない。自分たちの案がより良い案であることをもっとアピールする必要があると思います。

最後にこの報告書全体を通じて感ずることは、民主党政権下の大綱よりも、社会保障の効率化の視点がより強調されているということです。これは、効率化を主張したいという部分もありつつも、論点が消費増税の是非と、その財源の使い道という論点の段階から次の段階に移行してきているということの現れでしょう。従って、効率化が強調されているからすべてダメだというような短絡的な議論は致しません。詳細は今後分析してお伝えしていきたいと思います。また、その効率化の切り口も、一律カットというような切り口ではなくて、例えば新しく国民健康保険の保険者の都道府県への移行案など、「地方分権」ならぬ「地方分担」の方向が色濃く出ています。この点は非常に大きな論点です。

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