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- 2013年08月05日 12:00
【赤木智弘の眼光紙背】「今の東京では、熱と未成年者を包摂できない」
赤木智弘の眼光紙背:第283回

豪雨に遭った花火大会の観覧客(共同通信社) 写真一覧
今の東京では、ゲリラ豪雨は当たり前の現象になった。
原因は多岐にわたるが、その1つに緑地や水面が減少し、アスファルトやコンクリートで地面が覆われ、更にエアコンの室外機から排出される、様々な熱の影響で人口密集地の温度が高くなる、ヒートアイランド現象があると言われている。機能化された都市が「熱」を十分にを包摂できずに、地表と上空の温度差が大きくなった結果、積乱雲が生み出され、それが豪雨となって私たちの都市を機能不全にしてしまう。
特に7月25日に発生した豪雨は、テレビ中継されていた隅田川花火大会を中止に追い込むなど、大きな影響を及ぼした。そして、その日の夜に、Twitterにある書き込みが増えていった。ある男性アイドルグループのファンの女の子たちが、泊まる場所もなく、街を徘徊しているという趣旨のツイートである。(*1)
要は、秩父宮ラグビー場でアイドルグループのライブが行われる予定だったが、豪雨のために翌日に順延。地方などから来ている、あまりお金を持っていない若い女性ファンが、ホテルなどにも泊まれずに、街を徘徊していたということらしい。これに対しての云々は、リンク先の通りで、色々と自分勝手な主張するファンがいたり、あと彼女たちに対して「帰れ」などの批判が投げかけられたり。いつものネットの上でのバッシングと同情だけをかうような空疎な言葉が飛び交っていた。
しかし、それは本当に「家に帰らずに、翌日を待つファン」だけの責任だったのだろうか?
僕はそうとは思えない。
東京は女性であっても、安く宿泊できる場所は少なくない。ホテルは当然としても、サウナなどでも女性専用のエリアがあるサウナも多い。本来的な宿泊施設でなくても、ネットカフェなら寝られるし、カラオケボックスでオールも悪くない。ただ、それは成人女性の場合である。本当にお金が無くて、往復の交通費しか持っていない未成年者の場合は、そうした場所に一切出入りができない。なぜなら東京都が定める青少年健全育成条例(東京都青少年の健全な育成に関する条例)にそのような場所に入ってはいけないと、定められているからである。(*2)
だからこそ、彼女たちはネットカフェやカラオケボックスなどで一時的な休息を取ることもできず、不安のまま夜の街を徘徊するしかなかったのである。もちろん「家に帰れよ」というのはそのとおりである。条例にも未成年者に帰宅を促せとある。しかし、同時にコンサートを楽しみにしていた子たちの執念を無視して、単純に家に帰ることのみが正しいとしてしまってもいいのだろうか?
条例に定められているから未成年者は深夜に出歩くべきではない?
人間は条例を守るために行動しているのでは無いはずだ。「家に帰れ」という道徳的な見下しは、実際に帰りたくない未成年者がいる現状に対して、一体何の意味があるのだろうか?
そもそも問題は「コンサートのために家に帰らない未成年者がいる」ということであり、それに対する対策は「いかに彼女たちに対して、安価で安心できる休息の場所を提供できるか」ではないのだろうか?ところが、この青少年健全育成条例は「夜中に出歩く未成年者が存在してはならない」ということを前提に、都市から未成年者を追い出すことしか考えられておらず、彼女たちをどう守るかについては、全くの無策である。
このように都市が本来持っていたはずの未成年者を包摂する機能を、条例で人為的に奪った結果、都市は機能不全に陥り、彼女たちは不安の中、街を徘徊することしかできなくなり、ナンパなどの危険が高まった。当事者はもちろん、周囲の人達にも不安が広がったこそ、Twitterなどで危険を知らせる流言飛語が蔓延したのだ。結局、今回のような事例に対して青少年健全育成条例は、未成年者や周囲の人達に不安や危機感を与えただけなのではないだろうか?
自然なことを人為的に無理やり捻じ曲げようとすれば、その無理はどこかに負担となって現れる。
全国各地の青少年健全育成条例は、本当に子供たちのためになっているのだろうか?
「健全育成」という錦の御旗ではなく、現実の子供たちの行動に沿った条例であってほしいと、僕は思う。
*1:NEWSのライブ延期で大混乱、歪んだ善意が暴走した“パーナさん騒動”(メンズサイゾー)
*2:東京都青少年の健全な育成に関する条例の概要(警視庁)



