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ネット選挙解禁で見えてきた日本の政治の本当の問題

 「ネット選挙が実現すれば政治は変わる」といったバラ色幻想は捨てなければならなそうだ。  先の参議院選挙はインターネットを使った選挙運動、いわゆるネット選挙が解禁されてから初の国政選挙だった。選挙期間中、各政党・候補者らは解禁の利点を取り込むべく、ホームページやブログで日々の選挙活動を掲載し、フェイスブックやツイッター、ラインなどのソーシャルネットワークを使って情報を発信するなど、ネット上でも活発な選挙運動が展開されていた。ネット選挙は、総じて政治への関心が低いと言われる若年層の政治参加が進むとか、政党・候補者と有権者間の双方向の議論が進むことで政治の質が大きく変わることなどが期待されていた。

 確かにネット選挙にいち早く対応してきた自民党がネット選挙戦でも優位に立っていたことは間違いない。しかし、結論としては、今回の選挙を見る限り、ネット選挙が選挙や政治の質を変えるということはなかった。

 立命館大学大学院特別招聘准教授でネット選挙に詳しいゲストの西田亮介氏は、各政党や候補はネット選挙が解禁される以前に選挙で行われていたことと同じことをネット上でやるだけだったと指摘する。要するにネットという新しいツールを手にしたものの、結局はネット上で政党名や候補者名を連呼したり、旧態依然たる街頭演説の動画をアップロードしたり、演説が予定される場所をツイートしたりするなどが「ネット選挙運動」の大半を占め、ネット特有の双方向性やソーシャル機能を活かした選挙運動というものはほとんど見られなかったというのだ。

 そもそも「ネット選挙解禁で政治が変わる、というのは過剰な期待だ」と西田氏は釘を刺す。日本の選挙には依然として古色蒼然たる公職選挙法による理不尽かつ過剰な規制が多く、選挙期間中に候補者が有権者とまともな政策論争を交わすことはほとんど不可能に近い。また、いざ議員に選ばれても国会で党議拘束がかかるため、各政党の公認候補は政党の公式な選挙公約を代弁し続けるしかない。そのような制度のもとでは有権者側にも政策論争を交わす習慣が根付いていないし、候補者側にもあえてネットを通じた双方向の政策論議を活発化させる動機は働きにくい。これらをネット導入だけで改革できるというのは楽観的に過ぎるというわけだ。

 今回の選挙で大がかりなネット対策を実施した自民党も、ネット上では政党や候補者のPRに徹し、むしろ政策の中身は議論しないという旧来型の選挙活動を展開した。原発問題やTPPのような論争の対象になり兼ねない微妙な政策については、むしろ議論を沈静化させる目的でネットを利用していた。今回の選挙戦を見る限り、「ネット解禁で政策主導の選挙を」というのは夢物語に過ぎないと言わざるを得ない。

 しかし、今回ネット選挙が解禁されたことで、「政治の透明化が進んだことは評価すべき点だ」と西田氏は強調する。過去の選挙運動と異なり、今回の選挙で各政党や候補がどこでどのような発言をしていたかは、すべてネット上のログ(履歴)に残る。とかく不透明な部分が多かった政治の実態がネット選挙の解禁によって透明度を増した結果、選挙後も政治に関心を持ち続ける一般市民が増える効果は期待できるだろう。

 他の法律や制度を残したままネットだけを解禁したとしても、当然その効果は限られる。米大統領選に見られるようなネットを通じた双方向で多様な選挙戦は、日本ではそう簡単には実現しそうにない。しかし、ネット選挙の解禁によって、少なくとも日本の選挙制度や公職選挙法の異常さが浮き彫りになる効果はありそうだ。

 参院選でのネット選挙活動の分析を通じて、今回のネット選挙で明らかになった日本の政治文化や政治への市民参加の本質的な問題点を、ゲストの西田亮介氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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