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続報・風営法深夜営業規制の緩和措置について

現在、構造改革特区法に基づいて、風営法の所管である警察庁とやり取りを続けておる風俗営業種の深夜営業禁止規定の緩和措置に関する続報です。以前からの経緯に関しては、下のリンク先をご参照下さい。


風営法改正論議の進捗
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/7928836.html



さて、前回のやり取りで私側からは上のリンク先のような主張を警察庁に向けて投げたわけですが、それに対して回答が帰ってきております。


警察庁による回答:

風俗営業の営業所周辺地域における静穏の確保は、個々の営業所の騒音規制のみによって達成されるものではなく、営業時間、営業地域等に係る規制も重要な役割を果たしている。仮に営業時間の制限を撤廃すれば、現在の時間規制に違反した営業者が営んでいるような「社会規範から外れがち」な営業が一層容易となり、深夜に営まれる風俗営業に関して既に生じている各種問題(騒音、酔客のい集やトラブル、店内外における客同士の傷害事件等)がより深刻になると考えられるところ、こうした問題は、営業者がコントロールできない部分もあり、また、厳しい治安情勢の中、限られた警察力で対処するのには自ずから限界があるため、地域の環境等を悪化させるおそれがある。なお、風営法においては、都道府県条例により年間を通じて午前1時以降に風俗営業を営むことを可能とすることは想定されていない。



以下は、私による各種コメント。

1. 条例による営業時間の上書きに関して

まずは確認事項として投げておいた、「本条(風営法第13条)に基づく条例制定で、要望される風俗営業の通年24 時間化が実現可能という認識か?」という質問に関してですが、当り前のように「都道府県条例により年間を通じて午前1時以降に風俗営業を営むことを可能とすることは想定されていない」という回答が帰ってきております。風営法第13条の条例による上書き規定はあくまで「特別な事情のある日」となっているワケで、それを素直に読めば通年は無理と回答が出てくるのは当然ですね。

この質問は、次に続く「では、一週間のうちの月曜日を除く全ての日なら許されるのか?」もしくは「金・土・日の週末ならば良いのか?」なんていう、もう少し突っ込んだ個別論に突っ込んでゆく導入のためのものです。ただ、私としてはここから先は全国の地方議会の方々の実務作業にお任せしたいと思うところ。具体的な条例を上程する権限のない私が、ここにこれ以上細かく突っ込んだところで、あまり意味はありませんからね。

渋谷区、町田市、福岡市など、地方議会ではすでに風営法改正を求める要望書の採択が広がっています。しかし、むしろ地方議会側で「出来ること」を着実にやるのならば、己の掌握分野ではない法の改正を求めるよりも、風営法第13条に基づいた条例の制定で営業時間規制を上書きをしてゆく方向で動いて頂いたほうがよほど実務的には意味のあるものと思われます。(但し、そのためには都道府県議会を動かす必要があるけど)その論議の中で「週末は少なくとも『特別な日』扱いで良いだろう」とか、「ウチの県では、一年のうち盆と正月以外は全て特別な日なんだ」とか、警察と喧々諤々やって頂ければ幸いです。

2. 警察庁による見解

…で、こっからが本題となるのですが、今回の警察庁の回答には色々新しい発見が含まれていまして、私としてはそれが今後、非常に波乱を巻き起こしそうだなぁとも思っておるところです。警察庁による「風俗営業者の深夜営業が禁止されるべき理由」に係る説明をポイントごとに纏めると、以下のようになります。

①騒音、酔客のい集やトラブル、店内外における客同士の傷害事件等の問題は、営業者がコントロールできない部分がある
②厳しい治安情勢の中、限られた警察力でこれらに対処するのには自ずから限界がある
③よって、風俗営業種の深夜営業を解禁すると地域の環境等を悪化させるおそれがある
④よって、風俗営業種の深夜営業は依然として禁止されるべきである。

論議の大前提として理解が必要なのは、風俗営業種の特に深夜営業に関して、警察庁は風俗営業者による営業行為そのものではなく「騒音、酔客のい集やトラブル、店内外における客同士の傷害事件」に代表されるような、風俗営業を巡る周辺問題を問題視しているということ。これは、ここ数ヶ月の間に報じられた様々な報道の中でも「警察幹部のコメント」のような形で小出しされてきたものであります。

現在、この種の周辺問題を何とか民間側の連携と努力の中で解決して行こうという事で、「クラブとクラブカルチャーを守る会」のように、業界の自浄を目的としたある意味非常に「全うな」動きが出てきています。しかし、非常に困ったことに、警察庁はこのような動きに対しても「こうした問題は営業者がコントロールできない」とバッサリと切捨てるという何ともご無体な主張を展開しています。すなわちこの種の問題は、民間側で何をやっても無駄ってことですかね、ナルホド。

3. 一方で「そういう理解で本当に良いの!?」という疑問も

お役所というのは多くの場合、自らの責任を最小化する為に「まずは民間側の努力で…」と「公助の前の自助・共助」の必要性を説くのが常なのであって、このケースにおいては通常ならば当局の介入の前に事業者自身、もしくはファンを含む業界の取り組みをせよと主張するのでしょう。しかし、今回の警察庁の回答は「こうした問題は営業者がコントロールできない」としているワケで、ある意味お役所理論のセオリーである「公助の前の自助・共助」の真逆を行っているといえます。それはそれで殊勝なスタンスだとは思いますが、一方で個人的には「それで本当に良いのかよ」と思うところもあります。

「騒音、酔客のい集やトラブル、店内外における客同士の傷害事件」に類する問題というのは、風俗営業法の規制対象業種のみに限定されるお話ではなくて、ライブハウスとかイベント会場とかスタジアムとかカラオケ店とか、酒とエンタメを一緒に提供する類似した業態の周辺には少なからず存在するものです。例えば、昨今問題となっているダンスクラブとライブハウスを比較した場合、同じ音楽を取り扱う業態とはいえ提供している機能が違いますから、営業の中身を規制する制度も異なりますという説明には一定の正当性はあります。一方で、現在警察庁が深夜営業に纏わる問題として上げている「酔客のい集やトラブル、店内外における客同士の傷害事件」に代表されるような「営業の外側」にある問題に関しては、ダンスクラブとライブハウスが抱えている問題の構造に殆ど違いはない。にもかかわらず、片方は深夜営業が禁止され、片方にはそれを許しているという不合理がそこには存在します。

しかも、その根拠が「ライブハウス業界は自主的に様々な取り組みをしている一方で、ダンスクラブ業界は未だそういった取り組みがないではないか」という主張ならばまだ納得感はあるのですが、警察庁はこの種の問題に関しては「営業者がコントロールできない」としているワケで、だとすると警察は何の根拠をもってこの二つの業態の取扱いに差別的な待遇を設けているのか? 警察庁としては、ライブハウス周辺に関しては積極的に問題への取り組みはするが、ダンスクラブ周辺に関しては取り組みを拒否するのだという主張なのだとすると、警察力という公的なサービスを提供する行政機関のスタンスとして非常に問題が出てきます。

長くなりそうなので次回投稿に続けます。

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