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非営利組織としての自治体の可能性――『自治体のエネルギー戦略』インタビュー

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ローテーション人事によって国際会議で蚊帳の外に

山下 わたしは就職するときに、自治体や国に行くか、それともNPOか悩んだ末に、自治体は業務のローテーションがあるのでエネルギーに関わり続けられないと思いNPOに行きました。

大野 東京都の場合は、管理職はあちこちまわりますが、他の職員は同じところにずっといようと思えばいられますよ。

昔からよくある議論ですが、一か所に留まるとややもすると視野が狭くなるという話がありますね。でもね、いろいろなところにまわしすぎて、まったく専門性が活かされないのもよくない。そのあたりは各自治体をマネジメントする人の考え方によるんだろうけど、独自の政策を作るならば、やっぱり専門性を活かせるような人事が必要だと思いますね。

山下 ローテーションにメリットはあると思いますか?

大野 もちろんあるんでしょうけど、デメリットのほうが大きいんじゃないですかねえ。

たとえば自動車の大気汚染対策に関する世界的なネットワークであるICCT(The International Council for Clean Transportation)というNGO組織があるのですが、彼らから「日本は官僚がころころ変わるからメンバーにできない」と言われてしまったんですよね。地方だけでなく中央政府でも当てはまることなんですよ。

古屋 確かに国際会議やネットワーキングの場にいくと、ヨーロッパの人たちは積み上げてきた共通の経験と知識があって相場観をシェアしているんですが、日本人はどうもそういったものから隔絶されているように感じますね。「充て職」でくる人が必ずいて、それじゃ向こうも信頼関係を作ってくれません。

大野 日本だけ蚊帳の外にいる感じがありますね。国際会議にでている自治体ってあまりないですよね?

古屋・山下 ないですねえ。

大野 そういう意味では東京都はキャップ&トレード制度をつくったときに、ICAP(International Carbon Action Partnership)という組織に入りましたし、東京が参加している「C40(Climate Leadership Group)」という大都市ネットワークもいま急速に強化されています。

さっきインターネットの話をしたけど、かつては自治体では考えられなかったような国際的なネットワークに繋がれる時代になっていますから、もっと多くの自治体にやって欲しいですね。

大野さんは二度死んでいる!?

山下 最後にお聞きしたいのですが、大野局長がこれまでに経験した大きな失敗ってなんですか? そしてそれをどうやってリカバリーしたのでしょうか?

大野 いや、失敗なんていくらでもありますけどね(笑)。

そうですねえ、ひとつは20年前に『都市開発を考える――アメリカと日本』(岩波新書)という本を書いたときに、同僚に「お前は能書きしか言っていない」と言われたときは弱点を突かれたと思いましたね。あそこで書いたことは間違っているとは思っていないけど、あのときはまだ実践していなかったから。

ぼくのキャリアのなかで、新宿区時代は大きな意味があって。先ほど話した都道74号線もそうだし、南口しかなかった西武新宿線の中井駅に北口をつくったのも、高島屋が新宿に出店するときに、甲州街道の下をふさいでいた施設を撤去してもらってトンネルを広げたのも、政策を実践するいい経験になりました。

山下 当時、自治体の一介の職員が実名で本を出すこと自体も、さらには東京都と違う視点で書いているのもほとんどなかったことですよね?

大野 あの最初の岩波新書を出した直後に課長に昇格して新宿区に赴任したのだけど、「大野を都庁に戻すのはリスクがある」って言われていたんですよね(笑)。

古屋 あはは(笑)。

大野 それでいえば、昔話になっちゃいますけど、昭和60年代に都市計画局の係長だったときに東京集中問題が取りざたされたので、「東京集中問題調査」という報告書をつくったんですよ。「東京にはこんな問題も、あんな問題もある」って。そしたら新聞がセンセーショナルに扱って、当時の鈴木知事が「誰がこんな報告書を出したんだ!」って激怒したんですよね。そのときも「大野はもう終わった」って言われた(笑)。

でもそのあとに「東京都市白書」という報告書を作ったんですね。ぼくは同じことを書いたつもりなんだけど、「問題もあるけど可能性もある」って書いたからなのか、鈴木知事がすごく気に入ってくれて愛読書になったんですよ。「三冊くれ」っていうから「なぜですか?」って聞いたら「自宅と都庁と車に置くから」って(笑)。

山下 大ファンですね(笑)。

大野 だから「大野は『東京集中問題白書』で死んだけれど、『東京都市白書』で生きかえった」って。でも、その後に岩波新書を出したらまた死んでしまった(笑)

一同 (笑)。

山下 いろいろな失敗や経験を積まれながら一歩ずつ進んでこられたんですね。

大野 うまくいく保証はなかったですからね。挫折も失敗もありました。

この本に書いたことは、環境以外の問題でも普遍的に応用できることだと思います。他の自治体の方にも参考にしてもらえたら嬉しいですね。

古屋 今日はお忙しいところありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

(2013年7月3日 都庁にて)

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自治体のエネルギー戦略――アメリカと東京 (岩波新書)

著者/訳者:大野 輝之
出版社:岩波書店( 2013-05-22 )
定価:¥ 840
Amazon価格:¥ 840
新書 ( 240 ページ )
ISBN-10 : 4004314240
ISBN-13 : 9784004314240
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古屋将太(ふるや・しょうた)

環境エネルギー社会論

1982年生。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所研究員/デンマーク・オールボー大学大学院博士課程計画・開発プログラム在籍中。専門は地域の自然エネルギーを軸とした環境エネルギー社会論。

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山下紀明(やました・のりあき)

地域エネルギー戦略

1980年生。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所主任研究員。ドイツ・ベルリン自由大学環境政策研究センター博士課程在籍中。立教大学経済学部非常勤講師なども務める。専門は自然エネルギーを軸とした地域のエネルギー戦略。

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大野輝之(おおの・てるゆき)

自然エネルギー財団事務局長

1953年生。自然エネルギー財団事務局長1978年東京大学経済学部卒。東京都に入り都市計画局等をへて、1998年より環境行政に携わる。ディーゼル車NO作戦、キャップ&トレード制度導入など、国に先駆ける東京都の環境政策を牽引。2013年7月退庁。

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