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月刊楽天koboちゃん 2013年08月号 -kobo1周年の反省と今後-

月一連載の楽天koboちゃん、今月はなんとkobo生誕1周年ということで、koboは気合の入った1周年キャンペーンを展開した。満1歳となったkoboがどのように成長したのかみてみる事にしよう。

1年でコンテンツ数は15万を突破

2013年7月31日時点の日本語書籍数は153,192コボ。先月比で7,000コボほど増加している。先月の増加ペースからややペースダウンした格好だ。

例によって、内訳を見てみよう。

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  • 日本語コンテンツ総数153,192コボ(前月比105%)
  • 青空文庫を含む無料コンテンツが20,275コボ(前月比100%)
  • 楽譜が29,715コボ(前月比100%)
  • 復刻版古書が3,770コボ(前月比100%)
  • 画像1枚だけからなるバーチャルアートが2,081コボ(前月比95%)
  • パブーの有償コンテンツ(バーチャルアート除く)が4,305コボ(前月比100%)
  • 残りは93,046コボ(前月比108%)

当初3万弱からスタートしたkoboは1年間でコンテンツ数を10万以上伸ばし、15万コボを揃えるようになった。年内20万コボの達成が視野に入ってきた。海外の電子書籍ストアに比べればまだまだ微々たる数字だが、日本国内では最大級の品揃えと言って過言ではない。当初見られたような書籍と言い難いコンテンツによる取り扱い数の水増しも見られなくなってきており、1年経ってようやく電子書籍が順調に供給される環境が整ってきたとも言える。たとえば小学館は文庫の新刊の全点電子化に乗り出すと報じられており、出版社の電子書籍に対する態度にも変化が見られてきたようだ。

品揃えという観点で言えば、ベストセラーのカバー率に関しても改善が進められている。次の図は楽天kobo1周年記念ページで公開されたベストセラーカバー率推移だが、現時点で楽天ブックストップ1,000のカバー率が80%に達している事がわかる。話題の本が電子書籍で当たり前に手に入る環境が徐々に整いつつあるようだ。

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2012年度のkobo販売台数は15.5万台

MM総研は7月2日、2012年度国内電子書籍端末・コンテンツ市場概況を発表し、そこで、2012年度通期、電子書籍端末の出荷台数は47万台であり、シェアトップはAmazonで18万台(シェア38.3%)、続いて楽天が15.5万台(同33.0%)と報告した。楽天三木谷社長は昨年のkobo発売直後の7月27日に次のように語っていた。

販売台数は10万台弱程度で、年内目標は100万台。だいたいそこまでいけそうです。やはりユーザーインタフェースがいいんですよね。直感的にできるし、変なボタンもないし、分かりやすいし。評判が非常にいいんです。 細かいことで騒いでいるのは少数派ですよ:日経ビジネスDigital

発売後1週間で本当に10万台売れていたとしたら、残りの全期間で半分の5万台ほどしか売れなかった計算になる。年内予想が100万台なんて今から見ればギャグにしか聞こえない。

この件に関し、楽天koboの担当役員船木徹氏は先日東京国際ブックフェアで行われた記者インタビューにおいて、「計画値が間違っていたと思います」と率直に計画の甘さを認めている。

楽天kobo1周年にAmazonの無慈悲な鉄槌

7月19日、楽天koboはサービス開始1周年となり、大々的に1周年キャンペーンを展開した。まずは、エントリーモデルであるKobo Touchを6,980円から1,500円値下げし5,480円とした。楽天は、「サービス開始1周年を迎え、kobo Touchをさらにお求めやすい価格で提供することで、より多くの方々に電子ブックでの読書を気軽にお楽しみいただくことを可能にする」としている。ただし、海外では既に発売されており、東京国際ブックフェアでもひっそりと展示された高解像度モデルkobo aura HD及びAndroidタブレットであるkobo arcに関しては日本での具体的な発売予定は明らかにされていない。

さらに楽天koboは1周年を記念して全電子書籍30%引きセールを7月18日から7月21日にかけて行った。またあわせてkobo1周年マンガ祭りを開催し、対象コミック2,000タイトルの第1巻を半額にするキャンペーンを23日まで実施した。端末の値引きに加えて、コンテンツの大幅な割引を行うことで、電子書籍の潜在ユーザを取り込もうという戦略であったと見られる。

ところが、翌19日Amazonは何の前触れも予告もなく、同じくほぼ全ての電子書籍を30%割引くサービスを始めた。この割引サービスはkoboの割引セールが終了した21日に同様に終了しており、楽天kobo対抗の意図があったことは疑いない

楽天のセールは全く話題にならなかった一方で、Amazonの割引セールは大きな驚きと歓迎をもって迎えられた。それを報じた記事の一部を以下に示す。

反響を見る限り、楽天koboとAmazon Kindleの値引き合戦はAmazonの圧勝であったように見える。楽天koboとしてはアテが外れてしまったというのが正直なところだろう。Amazonがこうしたあからさまな対抗策に出るのは少し意外な感じがするが、Amazonへの対抗心を隠そうとしない三木谷社長の言動が何らかの影響を与えているのだろうか。

楽天自身によるこの1年の振り返り

楽天は7月19日にサービスローンチ1周年を迎えるにあたり、「今までのkobo。これからのkobo。」と題した記者会見を開催し、今年1年の楽天koboの総括や今後の戦略などを紹介した。興味のある方は、次の記事をご覧頂きたい。

船木氏は、「サービスを立ち上げて3カ月くらいは、さまざまな点で反省すべき点が出てきたが、その後、着実に改善していけた9カ月だった」 とまず反省すべき点があったことを率直に述べている。三木谷社長の姿が見えなかったようだが、あの人が出てきてもロクな事にならないので、排除したのであるなら英断かも知れない。

記者会見で述べられた要旨は次のとおりだ。

  • リリース直後の12年7月には月25,000件を超えた、操作のわかりづらさや不具合の問い合わせは、時間の経過とともに減少し、最近は月5,000件弱で推移(グラフ)。
  • 楽天koboのユーザ数はAndroid/iOSの無料閲覧アプリをリリース後に著しく増加し、直近の6ヶ月で2倍に増加(グラフ)。7月にはアプリユーザ数が、横ばいの続く端末ユーザ数を上回る見込み。
  • 電子書籍コンテンツの販売額実績は2013年1月以降は毎月20%増加ペースを続けている(グラフ)。特にコミックが好調で、2013年3月以前は4割前後だったコミックの販売比率は、直近3ヶ月に72.6%まで増加。
  • koboユーザの男女比はおおよそ7:3。ハローキティケースの投入等により女性ユーザの比率が増加中。年代は30代(約31%)と40代(約35%)が中心。
  • koboユーザの2大セグメントは専用端末で活字を読む30~50代のシニア層から成る「小説好きセグメント」とアプリでたくさんマンガを読む20~40代の若者から成る「漫画好きセグメント」。漫画好きの月間購買数は小説好きの2倍(セグメント説明図)。
  • 現時点でAmazonに劣っていることは事実であり、最大の原因は紙の書籍ストア(楽天ブックス)と、電子書籍ストア(楽天kobo)が分断されている点にあると分析。楽天でもAmazonと同様に両者の統合を進めていき、ユーザを共有していく(楽天ブックスの検索対応)。
  • 紙と電子書籍を同時に発売する戦略は、紙・電子共に売上が増加する相乗効果が見込める。紙の3ヶ月後に電子書籍版が発売された進撃の巨人9巻と、紙と同時に電子書籍版が発売された進撃の巨人10巻では、紙・電子書籍共に売上が増加した(売上比較図)。こうした事実の提示により、出版社に積極的な電子書籍展開を促す意図があると見られる。
  • kobo端末を売る小売店に対して、電子書籍コンテンツの売上の一部を還元するレベニューシェアモデルを投入。kobo端末の販売を促進していく(レベニューシェアモデル)。
  • 2013年下半期にはユーザのライフタイムに着目した育成プランを企画実行する。具体的には楽天グループ内からのkobo新規ユーザ獲得を進め、ユーザビリティ改善、CRM活動などにより、ユーザのリピート率を高めkoboヘビーユーザに育てていく。

当初描いていたような爆発的な普及には及ばないものの、概ね着実にユーザ数・売上を増やしてきた1年間であったと言えるだろう。さらなるユーザの獲得のために、楽天グループからの誘導、楽天ブックスとの連携、小売店・リアル店舗との連携を進め、ユーザを生涯にわたって囲い込もうというのが楽天の戦略のようだ。すべてを楽天で購入するような楽天マニアとも言えるようなユーザをどれだけ増やすかに知恵を絞ることになるのだろう。

そのためには、楽天はちょっとね……というユーザの忌避感を払拭していく必要があることは確かだ。もっともそうしたユーザは一部だけなのかも知れないが。

電子書籍の安売り合戦は激化の兆候

Amazonの無慈悲な30%オフキャンペーンに見られるように、現在電子書籍市場は激しいユーザ獲得競争が続いている。船木氏は、「こうした施策は新規ユーザーを獲得するためのイニシャルコストであり、自らがまず血を流さなければならない」として、競争を勝ち抜くために積極的な施策を取っていくことを匂わせている。

電子書籍には紙の書籍にある再販制が適用されないため、販売者が自由に値段をつけて売ることができる。複数の電子書籍ストアにおいてコミックスの1巻目の無料提供ないしは大幅割引が常套手段化しているが、これにより2巻目以降の売上が大幅に伸びるのである。例えば集英社は漫画「キングダム」1~10巻を2週間限定で無料公開したが、これにより11巻以降の売上が直前に比べ最大7倍も増加したという。

ネットの無料コンテンツに慣れたユーザの気を引くために今後とも各社は血で血を洗うような値引き競争を継続していくものとみられる。こうした値引きや無料化施策に対して、一部では出版界の将来を危ぶむ声もでているようだ。際限ない値引き販売が広がれば、出版社は売れ筋の本の出版にリソースを集中せざるを得なくなり、出版物の多様性が損なわれる恐れがあるという。

もっとも一ユーザとしては、出版界の将来のことを心配してもしかたがないので、過当競争の中でAmazonや楽天koboを始めとする電子書籍ストアが赤字覚悟で行うセールをうまく利用して、自分の欲しいコンテンツを賢く入手していくのが良いだろう。

楽天koboが今後どのようなユーザ獲得キャンペーンを展開していくか期待して待つことにしたい。

専用端末は必要とされているのか

先月ビッグサイトで開催された東京国際ブックフェアにおいて楽天koboもブースを展示しており、筆者も足を運んでみた。実はそこで初めてkoboの実機に触れたのだが、楽天koboストアは、kobo gloなど電子書籍端末を大きくアピールする構成となっており、コンテンツの品揃えを中心に訴求した他の電子書籍ストアと異なっていた点が印象的だった。

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確かに他とは異なり専用端末を持っていることはkoboの大きな特色だが、ユーザ数もアプリユーザの方が多くなり、コンテンツ購入額にいたっては、「端末はちょぼちょぼ」(船木氏)という現状において、専用端末に重きをおく姿勢には疑問が感じられた。

2012年度国内電子書籍端末・コンテンツ市場概況によれば、2012年度の国内電子書籍専用端末の出荷台数は47万台で、2013年度は52万台が予定されている。電子書籍ブームと言われているのに専用端末の出荷は1年で5万台しか伸びないのだ。スマートフォンの大画面化やタブレット端末の浸透により、電子書籍端末を必要としないユーザが多いということだ。

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こうした状況を考慮すると、楽天が大きな投資を行なってまで、専用端末を売り続ける意味がどれだけあるのか疑問が出てくる。kobo aura HD/kobo arcなどの投入も明言されていないこともあるし、楽天が専用端末の投入を止める日は結構近いかもしれない。

追記

初出時において、電子書籍ビジネス調査報告書2013を引用し、専用端末における電子書籍の売上が2017年度で僅か80億円と予想されているとしたが、この金額は専用端末ではなくケータイ向けの売上であった。今読み直すとなぜそのような誤読をしたのか自分でも分からないが、お詫びして訂正したい。また、丁寧にご指摘を頂いた@wkoichiさんには御礼申し上げる。

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同調査によれば、2012年の電子書籍の市場規模は729億円で、2017年度には2,390億円規模に増加すると見られている。729億円といえば一見大きな数字に見えるが、紙書籍市場(2012年で1兆7,398億円)のわずか4%に過ぎない。2017年度でもまだ13%だ。市場はまだ生まれたばかりで黎明期と言える。ちなみに、三木谷社長は「2020年までに国内の電子書籍市場売上を1兆円規模にし、その半分のシェアを獲得したい」とぶちあげている。是非楽天にはその目標に向かって邁進して貰いたい。

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