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2013年参議院通常選挙〜〜今回も自民党に過剰代表という不当な特権を与えた「選挙区選挙」

(1)今月(2013年7月)4日に公示され、21日に投開票となった参議院議員通常選挙とその選挙結果について、遅ればせながら、簡単に振り返りながら、いつものように批判的な分析をしておこう。

(2)まず、参議院通常選挙の告示における報道を紹介しておこう。
立候補者は、選挙区(改選数73)に271人、比例代表(同48)に162人の計433人。
東京新聞2013年7月4日 夕刊
参院選公示、21日投開票 あすを選ぶ岐路

 第二十三回参院選が四日午前、公示された。第二次安倍政権発足後、初の大型国政選挙。日本が直面する改憲、原発、環太平洋連携協定(TPP)という三つの岐路を中心に、二十一日の投開票日まで与野党の論戦が展開される。各党の首脳は全国各地で第一声を行った。自民、公明両党は衆参両院で多数派が異なる「ねじれ」の解消を目指す。本紙の調べでは、選挙区(改選数七三)に二百七十一人、比例代表(同四八)に百六十二人の計四百三十三人が立候補を届け出た。
 今回は定数二四二のうち、半数の百二十一議席が改選される。任期は六年間。
 与党の非改選は五十九議席で、過半数(百二十二議席)には六十三議席が必要。
 安倍晋三首相は改憲の発議要件を緩和する九六条改憲に意欲を示している。九六条改憲に積極的な自民党とみんなの党、日本維新の会、新党改革が改憲の発議に必要な三分の二(百六十二議席)に達するためには、今回百議席の獲得が必要。
 消費税増税、社会保障制度改革、衆参両院の選挙制度改革、対中国や北朝鮮の外交政策なども争点になる。
 前回の投票率は57・92%で、過去七回連続で60%割れした。今回から、インターネットを使った選挙運動が解禁され、投票率アップにつながるか注目される。
 衆院選で惨敗した民主党は、選挙区で三十五人、比例代表で二十人の合計五十五人を擁立した。
 自民党は全選挙区で候補を擁立。選挙区四十九人、比例代表二十九人の計七十八人が立候補した。
 公明党は選挙区四人、比例代表十七人の計二十一人。みんなの党は三十四人、共産党は六十三人、社民党は九人をそれぞれ擁立した。
 参院選に初挑戦となる生活の党の立候補者は十一人、みどりの風は八人、日本維新の会は四十四人。


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同選挙の争点は多数あったが、上記の東京新聞報道における図表は、与野党過半数をめぐるものと、改憲をめぐるものである。

(3)選挙結果は、自由民主党が「圧勝」し、日本維新の会やみんなの党は伸び悩み、日本共産党は躍進した。
日経新聞2013/7/22付
与党圧勝 ねじれ解消 参院選、自民65大幅増
民主17、過去最低に 維・み伸び悩み アベノミクスに信任


 第23回参院選は21日投票、即日開票された。自民党は改選34議席を大きく上回って現行制度で過去最多の65議席を得る圧勝で、公明党とあわせた与党で非改選を含めて参院の過半数(122議席)を確保した。衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」は解消される。民主党は改選44の半数にも届かず、過去最低の17議席にとどまった。日本維新の会、みんなの党は伸び悩んだ。
 自民は6年ぶりに参院第1党に復帰した。与党は過半数確保に必要な63を超える76議席を獲得。非改選の59議席とあわせ135議席となり、安定した国会運営が可能になる「安定多数」(129議席)を得た。
 第2次安倍内閣の発足後、初の大型国政選挙となる今回の参院選は選挙区73、比例代表48の121議席を争った。改選議員の任期は2019年までの6年間。安倍晋三首相は経済政策「アベノミクス」に信任を得た形で、政権基盤を固めて成長戦略などを推し進める。
 選挙区では全体の勝敗を左右する31の1人区で自民が強さをみせた。岩手、沖縄でそれぞれ現職に競り負けたものの、29選挙区で勝利した。民主は候補を擁立した19の1人区で全敗した。
 改選定数2〜5の複数区でも自民は堅調だった。3人区の千葉、5人区の東京で2人が当選。最近は民主と議席を分け合ってきた2人区でもすべて1議席を確保した。民主は2人区の残り1議席を他の野党と競り合い、宮城、京都、兵庫で敗れた。3人区の埼玉、4人区の大阪、5人区の東京でも議席を失った。比例代表でも自民は18議席を得て、12年ぶりに比例第1党に返り咲いた。
 公明は選挙区に擁立した4人がすべて当選、比例代表とあわせて改選10議席を超えた。与党の議席は全常任委員会で委員長を占めたうえで野党と同数以上の委員を出せる「安定多数」に達した。安定多数は議席獲得上の目安の数字で、実際には野党も委員長を出す。
 民主は選挙区、比例をあわせて01年の26議席を下回り、1998年の結党以来最低となった。維新は大阪、兵庫、みんなは宮城、埼玉、神奈川、愛知で当選したが、ともに合計8議席で目標の10議席には届かなかった。共産党は東京、京都、大阪で当選。選挙区での議席獲得は12年ぶりで、比例とあわせて改選3議席を8議席に増やした。
 社民党は比例で1議席を得たが過去最少。生活の党、みどりの風は議席を得られなかった。
 投票は全国5万カ所弱の投票所で一部の地域を除いて午前7時から午後8時まで受け付けた。

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(3)上記日経新聞は「アベノミクスに信任」と見出しをつけているが、果たしてそうだろうか?

同選挙は、ネット選挙の解禁で注目にもかかわらず、投票率は戦後3番目の低さの52・61%だったようだ。
東京新聞 2013年7月22日
投票率3番目の低さ 52・61%

 総務省は二十二日午前、第二十三回参院選の選挙区の投票率が52・61%だったと発表した。前回二〇一〇年の57・92%を5・31ポイント下回った。参院選としては一九四七年の第一回以降で三番目の低投票率。今回の比例代表の投票率も52・61%だった。
 今回はインターネットを使った選挙運動が解禁され、投票率向上に期待がかかった。しかし消費税増税が争点となった前回参院選などと比べて明確な話題性を欠き、国民の関心が高まらなかったとみられる。
 地方区という名称だった時期を含め参院選選挙区の最低の投票率は九五年の44・52%。二番目が九二年の50・72%。
 今回の投票率のうち都道府県別で最も高いのは島根の60・89%で、山形の60・76%、鳥取の58・88%が続いた。最も低いのは青森で46・25%。次いで岡山の48・88%、千葉の49・22%だった。
 前回比で投票率が上昇したのは、0・99ポイント伸びた沖縄のみ。一方、14・63ポイント減の富山をはじめ、山口で11・56ポイント、福井で11・48ポイント、島根で10・81ポイント、佐賀で10・54ポイントとそれぞれ大幅減となった。
 選挙当日の有権者数は全国で一億四百十五万二千五百八十九人だった。


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(5)投票率が低いことには幾つか理由が考えられるが、その中の一つとして、多くの死票を生み出す選挙制度が挙げられる。

過去の参議院選挙の選挙結果の分析で、私は「選挙区選挙」が如何に民意を歪曲するのか指摘してきた。

共同通信社の来年参議院選の予測と参議院議員の選挙制度の問題点

やはり民意を歪曲する選挙区選挙は廃止するしかない!

(6)ここで少し注意しなければならないことは、参議院は半数改選なので、3年ごとの通常選挙における「事実上の議員定数」は、法定議員定数の半分である、ということである。

つまり、法律によると、衆議院の議員定数は242(以前は252)であり、そのうち、選挙区選挙の議員定数は146(同152)で、比例代表選挙の議員定数は96(同100)であるが、事実上の議員定数は、それぞれその半分の121、73、48である、ということである。

また、2012年11月、参議院の選挙区選挙につき法律改正により「4増4減」という議員定数「是正」が行われたことに、注意する必要がある。

法律改正前、選挙区選挙の議員定数146の内訳は、2人区が29、4人区12、6人区5、10人区1であった。
それゆえ、例えば2007年、2010年の参議院通常選挙における選挙区選挙の事実上の議員定数73の内訳は、事実上の1人区29、事実上の2人区12、事実上の3人区5、事実上の5人区1であった。
つまり、事実上の1人区で29名、事実上の2人区で24名、合計53名、
すなわち、選挙区選挙では事実上の1人区・2人区で72・6%の代表者を選出しているのである。

法律改正により、法律上の議員定数2人区が31、4人区が10、6人区が3、8人区が2、10人区が1になった。
ということは、この度の参議院議員通常選挙における選挙区選挙の事実上の1人区は31、事実上の2人区は10、事実上の3人区は3、事実上の6人区は2、事実上の5人区は1になったのである。

つまり、事実上の1人区で31名、事実上の2人区で20名、計51名。
すなわち、選挙区選挙では事実上の1人区・2人区で69・9%の代表者を選出しているのである。

事実上の1人区・2人区が大政党に有利であることはこれまで指摘してきたとおりである。

その割合は2012年法律改正により少し変わったものの、基本的には大きく変わってはいない(なお、割合が少し減った分だけ、その恩恵を大政党以外の政党も受ける可能性があったことになるが、基本的には選挙区選挙の重大な問題点が解消したわけではない)。

(7)この度の参議院議員通常選挙における「選挙区選挙」で、大政党の自民党は、事実上の議員定数73のうち、47人の当選者を輩出している(なお、ここで紹介する選挙結果の数字は朝日新聞の報道を使用した。以下同じ。)。
議席占有率は、なんと約64・4%である。

しかし、自民党の選挙区選挙の立候補者全員の得票数を集計しても、全国的な得票率は42・7%にとどまる。
大雑把に言えば、4割の得票で6割の議席を得ているのだ。
自民党は、明らかな過剰代表という不当な特権を受けているのだ。
(ちなみに、2010年の参議院通常選挙における選挙区選挙で自民党は3割の得票(33・38%)で5割(53・42%)の議席を得ていた。)

公明党も議席占有率が得票率よりも高いが、大きな乖離とまではいえない。

一方、自民党・公明党以外のすべての政党は「選挙区選挙」で過少代表を強いられている。

以上は、あまりにも不公平な結果である。

各政党の選挙区選挙での当選者数、議席占有率、全国集計得票率
政党名当選者数議席占有率得票率
自由民主党47名64.38%42.7%
民主党10名13.70%16.3%
公明党4名5.48%5.1%
みんなの党4名5.48%7.8%
日本共産党3名4.11%10.6%
日本維新の会2名2.74%7.3%
社民党0名0%0.5%
生活の党0名0%1.2%
みどりの風0名0%1、2%
新党大地0名0%0.8%
諸派1名1.37%2、5%
無所属2名2.74%ー%
73名100%100%

(8)では、比例代表選挙の各政党の得票率で事実上の議員定数121名を各政党に比例配分すると、各政党の議席数はそれぞれ幾らになると試算されるだろうか?
いつものように試算してみよう。

そうすると、自民党は、65議席から42議席になる。
つまり、大政党に有利な「選挙区選挙」によって23議席も過剰代表されていたのだ。
民主党も過剰代表されていた計算になるが、それは1議席にすぎない。

一方、その他の政党は、過少代表されている。

また、民主党と公明党の獲得議席数の順位は入れ替わってしまし、公明党が2位になり、民主党が3位になることもわかる。
各政党の選挙区・比例代表選挙での合計当選者数、議席占有率、比例代表選挙の得票率および比例配分試算議席数
政党名全当選者数議席占有率比例代表選挙得票率比例配分試算議席数
自民党65名53.7%34.68%42名
民主党17名14.05%13.40%16名
公明党11名9.09%14.22%17名
日本維新の会8名6.61%11.94%15名
日本共産党8名6.61%9.68%12名
みんなの党8名6.61%8.93%11名
社民党1名0.8%2.36%3名
生活の党0名0%1.77%2名
新党大地0名0%0.91%1名
みどりの風0名0%0.91%1名
諸派1名0.83%0.36%1名
121名100%100%121名

(9)2010年の参議院議員通常選挙の分析を加えて、分析してみよう。

この度の参議院通常選挙で、自民党の獲得議席65(選挙区47、比例代表18)、公明党のそれ11(4、7)、合計76議席。
また、2010年では、自民党の獲得議席51(選挙区39、比例代表12)、公明党のそれ9(3、6)、合計60議席
総計すると、現行制度による両党の獲得議席は136議席になり、総定数242の半分を超えている。

しかし、この度の比例代表選挙の得票率に基づき比例試算議席数を算出すると、自民党は42で、公明党は17、合計しても59議席にしかならない。
2010年では、比例代表選挙の得票率に基づき比例試算議席数を算出すると、自民党は29、公明党は16で、合計しても45議席になる。
両党の比例試算議席数の総計は104議席にとどまり、総定数242議席の半分に達してはおらず、約43%程度である。
つまり、参議院では、242議席を比例代表制だけで選挙していたら、自民党と公明党だけでは過半数を制していなかった計算になるのだ。

もちろん、この両党に他党の一部が加わって政権が形成される可能性もあるだろうし、両党以外の他党(の一部)によって政権が形成される可能性もあるだろう。
なお、衆参の「ねじれ」が生じるかどうかも、政党の組み合わせ次第ということになるだろう。

いずれにせよ、国会では、今とは異なる政治状況になっていただろうし、改憲(明文改憲、解釈改憲、立法改憲)の可能性も、今のように高くはなかったのではなかろうか。

(10)議会制民主主義を確立し、立憲主義の政治を可能にするために、民意を歪曲している「選挙区選挙」は、これまで繰り返し主張してきたように廃止し、少なくとも議員定数242を維持したままで(できれば当面議員定数を300にして)、完全比例代表制に改革すべきである!

このことは、基本的に衆議院にも妥当することは、すでに指摘したとおりである。

小選挙区選挙は廃止しかない(その1:民意切り捨て・・・56%の死票)

小選挙区選挙は廃止しかない(その2:民意の歪曲・・・比例代表制なら自民党294議席は133議席程度)

小選挙区選挙は廃止しかない(その3:小選挙区選挙は政権選択選挙にも適しているとは言い難く違憲だ!)

小選挙区選挙は廃止しかない(その4:完全比例代表制がベストだ)

「小選挙区選挙は廃止しかない(その2:民意の歪曲)」の補正

なお、衆参の選挙制度の問題点の紹介については、拙著ブックレット「なぜ4割の得票で8割の議席なのか」を参照していただきたい。

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