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ブラック早稲田大学を刑事告発-教員の6割占める非常勤講師4千人を捏造規則で雇い止め|松村比奈子氏

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 非常勤講師の5年雇い止めをめぐる問題で、早稲田大学を刑事告発した首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長 にインタビューしました。その要旨を紹介します。(※本文中のゴシック体はインタビューの設問です。byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

教員の6割占める非常勤講師4千人をねつ造した就業規則で5年雇い止め
――ブラック早稲田大学を刑事告発

 首都圏大学非常勤講師組合 松村比奈子委員長 インタビュー

労働契約法改正で非常勤講師が5年経過し
無期転換しても専任の教員になれるわけではない

 ――今回の早稲田大学における非常勤講師雇い止めの背景にあるのが労働契約法改正問題ですが、そもそも非常勤講師は5年経過して無期雇用に転換されたとしても専任の教員になれるわけではありませんよね?

 そうです。今年4月から施行された労働契約法改正は、すべての有期雇用労働者が5年を超えて更新していく場合は、6年目に労働者の申し入れにより無期雇用に転換できるという画期的なルールが導入されたと言われているので、私たちも無期雇用とはすばらしいなと最初は思いました。

 ところが、いろいろ考えていくとそうではない。たとえば大学の非常勤講師は細切れパート労働なんですね。極端な場合は週1回、大学で1コマ90分だけの授業をやることもあります。その場合に、それが無期雇用に転換されるというのがどういうことかというと、お互いに辞めたいと言い出さない限り、週1回1コマの授業がずっと続くというだけのことです。労働条件は直近のものでかまわないと法律の中にも書いてあるので、賃金が上がるわけでもありません。ただ単に、カリキュラムの変更などがない限り働き続けられるというだけです。それは今回の労働契約法改正以前からそうでした。授業が存在していればずっと雇用が継続されて、10年も20年も働き続けている非常勤講師は多かった。だから事実上、私たちは無期雇用されていたので、「無期雇用に転換されました」という言葉ですごく評価されたような気がするけれど実はまったく現状は変わらないわけです。

「任期付き教員の無期雇用」への波及を恐れた?

 ――それを早大当局は誤解して、5年雇い止めを強行してきたということでしょうか?

 早大は労働法学者の先生が2人も理事会に入っているので、この法律の趣旨を知らないはずはありません。一般企業や他の大学のような誤解や勘違いというレベルではないと思います。

 私たちが考えている理由は2つあります。1つは、有期雇用の研究員や任期付き教員が無期転換されると、立場的には専任教員になるので、その場合は財政負担が出て来ますので大学当局は非常に困るわけですね。そういう流れに非常勤講師の無期転換がつながる危険性があると早稲田大学は考えたのではないでしょうか。

 もう1つは、労働契約法改正で非常勤講師を無期転換した場合、将来的に雇い止めする事態になっても労働者側がおそらく反発してくるのではないかと考えたのだと思います。今は雇い止めしやすいが、将来的には雇い止めが困難になることを恐れたのではないでしょうか。

 ――5年雇い止めの就業規則をつくるために、大学側はいろいろ不当なことをやっていますね。

 早稲田の中で非常勤講師の就業規則がつくられているらしいということに私たちが気づいたのは、去年の12月です。それでいろいろと資料などを調べてみたら、どうやらかなり早い段階で早稲田はこの件について対策を考えていたということが分かりました。少なくとも私たちが把握している範囲では、遅くとも昨年11月には労働契約法改正に向けて早稲田内の任期付き教職員を何とかしなければいけないと話し合っていました。どこの大学でも、雇用管理は非常にルーズなところがあったので、労働者側はこの法律が出てきて期待をするのではないか。だからそれに対抗する必要があると考えたのだろうと思います。

 労働契約法の今回の問題では6年目に入る前に18条で規定された無期転換を阻止する必要があるから5年上限を就業規則でかけてしまえばいい。ただ単純に5年上限をかけると、労働契約法の趣旨に反するということで裁判などの問題が起きるかもしれない。そういうことを昨年11月の時点で予測しているんですね。

 その後、今年1月にもいろいろ議論されているようなんですが、非常勤講師の方にいきなり送りつけてきた就業規則には、「早稲田ビジョン150」という早稲田の将来計画を推進するために、このような対応を取らせていただきますという文書が来ています。要するに、昨年11月時点での早稲田の考え方によれば、単に5年上限にすれば労働契約法の趣旨に反することが明白になってしまうので、何か別の理由が必要だろうと考えて、「早稲田ビジョン150」に基づいて「教員を流動的に雇用する」というのがいい。これを使おうということになったのではないかと思われます。

 実際に私たちは、早稲田の職員が持っている「非常勤講師から就業規則に関する質問が来たらどう対応するか?」というマニュアルを入手しました。そのマニュアルには徹頭徹尾「早稲田ビジョン150」を根拠に、「5年上限や4コマ上限について説明してください」ということが書かれています。明らかに労働契約法改正18条に対する対策が、早くから検討されていたということが分かります。

 それから、20条の対策もあります。20条というのは、有期のみを理由とした差別の禁止です。少なくとも非常勤講師は、授業を行っている段階においては専任教員と全く責任は異なりません。ですが、専任教員と非常勤講師との間には説明の付かない賃金格差がありますので、何かそこに職務内容の格差を設けないと、説明がつかないということで法に引っかかる可能性がある。これは早稲田だけの問題ではありませんが、そういう理由で4コマ上限を設け、一方で専任教員にはもっとたくさんコマ数を持てと言って、専任教員と非常勤講師ではもともと職務内容が違うんだという形を取ろうとしている。そうした動きがあったことが今年1月までの大学側の資料等を調べると分かってくるんですね。

“幻の信任投票用紙”

 ――実際に新しい就業規則をつくる際には、労働基準法では労働者の過半数代表から意見を聞く義務がありますが、この点についての経緯はどうだったのでしょうか?

 そうしたことは、労働法の先生が理事ですから知らないわけはありません。ですから早大当局は実際に非常勤講師の教員ボックスに労働者代表を選ぶ信任投票用紙を配布したと言っています。しかし、大学当局が配ったと称する春休み期間に非常勤講師の中で見た人が誰もいないのです。ですから、私たちはこれを“幻の信任投票用紙”と呼んでいます。

 ――非常勤講師の皆さんが春休みで見る機会がない時に用紙が配られたということですか?

 そういうことですね。たとえば法学部では2月6日からはロックアウトされてしまう。閉室されて大学に入ることができなくなるので、その期間に非常勤講師が来ることはありません。大学のホームページによると、ロックアウトは2月6日から2月23日までと書かれています。大学に入ることもできない時期に、大学側は配布したと言っている。

 また、その幻の信任投票用紙には、すでに立候補者名が書かれていました。早稲田大学には7つの事業所があるようなのですが、それぞれの事業所の代表の氏名が書かれていて、それを信任してくれということなんです。そして不信任の場合のみ郵送で投票用紙を送れとあり、しかもその郵送先は選挙管理委員会ではなく、専任の教員組合内です。しかも不信任にする場合は、その事業所名と代表候補者名を書き、自分の所属と自分の氏名を書いて判子まで押さなければならない記名投票なんですね。非常勤講師にとって専任教員というのは、自分の授業の雇い止めに関係してくる人達です。決めるのは教授会ですが、専任教員に自分の名前が知られるということは自分のクビが危うくなる危険性がある。とてもそんなことはできるはずがありません。しかも投票期間は2月14日から28日までの2週間で、すでに候補者は決まっている。そうした状況からして、非常勤講師が投票できる可能性はほとんどありません。

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