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与野党の姿勢が生んだ"山本太郎の大勝" – 田原総一朗インタビュー

7月21日、参議院選挙の投票が行われ、6月の東京都議会議員選挙に続き、自公勢力が圧勝、民主・維新は敗北に終わった。この結果について、開票を終えた22日、田原総一朗氏に話を聞いた。【取材・構成:大谷広太(編集部)/亀松太郎】

与野党の姿勢が生んだ"山本太郎の大勝"

つまらない選挙でしたね。
自民党と公明党が合わせて76議席、非改選とあわせると174議席になりましたが、投票率は52%強と、戦後3番目の低さでした。これは、有権者の多くが参院選に関心を失っていた証拠です。その最も大きな原因は、あまりにも野党がふがいなかったからです。たとえば、自民党は経済を成長させる、デフレを克服させるというアベノミクスを打ち出しましたが、どの党も見当違いの批判ばかりでした。

アベノミクスにも問題はありました。6月14日に発表された"3本目の矢"、つまり、医療、中小企業、コーポレート・ガバナンスなど、「骨太の方針」の主要なものはいずれも先延ばしとなっています。官僚と、彼らに操られた政治家たちの反対が強かったためです。ところが、この先延ばしについても、野党からは批判が出ませんでした。新聞・テレビといったマスメディアからの批判もありませんでした。まるで自民党、安倍内閣が「骨太の方針」を先延ばしにしたのを歓迎しているかのよう、マスメディアまで官僚や経団連、農協などの手が伸びているんだろうかと思ってしまいました。

さらに、重要問題である原発に対して、野党はいずれも「原発反対」「原発ゼロ」を提唱しましたが、それをいかにして実現するのか、原発をゼロにしたときの代替エネルギーをどうやって補うのか、作らねばならないという発想も工程表もありませんでした。もちろん、自民党も、原発再稼働の推進をしながら、原発問題への明確な姿勢は示さなかった。つまり、どの政党も言わば原発から逃げていて、責任ある姿勢を示していない。私にとってこれは不満でした。

こうした全政党の姿勢があったからこそ、山本太郎氏が大勝したのではないかと思います。

TPPの交渉も始まりますが、自民党内からはもちろん、どの野党からも追及らしい追及はありませんでした。言ってみれば、ほとんどの野党は自民党の亜流と化している有様でした。その中で資本主義に反対し、全政党に対立している共産党が善戦したのが、際立っていましたね。

自民党に対抗する"社民政党"を

—旧民主党系の勢力は今後どうなるでしょうか。

民主党を中心に、敗退した野党はどういう再生を図るのか、道筋はよく見えませんが、解党的な再編が必要ではないかと思います。

率直に言うと、日本には二大政党らしい二大政党がありません。私は、安倍自民党は、アメリカ共和党的な、新自由主義路線で行けば良いと思います。もちろん、新自由主義にも欠陥は少なからずあります。自由競争をやれば当然格差が生じます。少ない勝者と多くの敗者を産み、仕事を失う人間たちも多くなります。この新自由主義に対応するには、思い切ってヨーロッパ型社民政党が必要だと思います。イギリス、フランス、ドイツなどでは、いずれも、社民政党が政権を取っている。これらの社民政党は、格差を拡大させない、福祉に力を入れ弱者に手厚い、何よりも平和外交の基盤とする路線です。こうした社民主義の政党が日本にも誕生して、自民党と対立する。こうした二大政党が生まれるのが望ましいと思います。

その意味で、今度の参院選における野党の大敗北はいいチャンスだと思います。民主党は敗北を根源的に反省し、社民政党を作る中核になるべきだと考えています。

タカ派的な政策を進めるゆとりはない

ーねじれ国会が解消したことで、自公政権は法案を通しやすい状況になりました。

新聞やテレビでは、参院選までは経済政策を中心に、非常に無難な政策でやってきたが、参院選に勝てば憲法改正も含め、右翼性丸出しの過激な政策をどんどん進めて行くのではないかという風に報じられています。しかし私はこれは間違いだと思っています。安倍内閣は骨太の方針などを先送りしちゃったから、これをやらなければならない。経済成長は生易しいものではないので、これに全力を投入するでしょうし、タカ派的な政策を進めるゆとりはないと思います。憲法改正については、次の衆議院総選挙の課題になると捉えています。

例えばこれから始まるTPP交渉、来年の消費税増税についても、本当にやるのかどうか。こういう問題がたくさんあります。それから、何よりも原発問題について、責任ある姿勢を示すべきだと思います。また外交問題も大切です。6月にはアメリカのオバマ大統領と中国の習近平主席が8時間に及ぶ長い会談を行いましたね。韓国の朴槿恵大統領もオバマ大統領と会談、米議会で演説まで行い、訪中して習近平とも会談しましたた。ロシアでプーチン大統領との会談を行うとも言われています。こうしてみると、日本はむしろ孤立しているとしか考えられないと思います。

どうやら安倍内閣は中国以外の各国を訪問して、中国包囲網を強めようと、私はこれは外交的に正しくないと思います。オバマ大統領が習近平主席と長い会談を行ったのは、中国と仲良くしたい、アジアで事を構えたくない"というメッセージであり、日本に対して早く中国・韓国と関係を改善してほしいというのが本音だと思います。

ーネット選挙が解禁になってはじめての選挙でしたが。

問題だと思ったのは、二十歳未満の若者がネット選挙に参加できないということです。つまり、ネットで意見や主張を表明したり、候補者に質問することができない。これはやっぱりおかしいから、公職選挙法を変えるべきだと思う。ネット選挙なのに、ネットで意見を言えないのは、どう考えてもおかしいから。(7月22日談)

過去のインタビュー

各党は参院選までにアベノミクスの対案を出せるように努力すべきだ
橋下さんは「誤報だ」というが、それは間違いだ
ほのぼのだけど、ようやく夜明けが見えてきた
僕は護憲論者ではないが、憲法96条の改正には反対だ

プロフィール

画像を見る田原総一朗(たはら そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、岩波映画を経て、東京12チャンネル(現テレビ東京入社)。フリー転進後は。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。現在早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。1998年ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。2010年4月よりBS朝日にて「激論!クロスファイア」開始。 近著に「40歳以上はもういらない (PHP新書)」がある。
また、雑誌『オフレコ!』(アスコム)の責任編集長も務める。無料メールマガジンも公式ページで展開中。

田原総一朗 公式サイトTwitter


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