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エコノミスト記事に対するコメント

先ほどエコノミストの記事の要約を紹介しましたが、それに対して送った私のコメントも書いておきます。
先にも書いた通り、こちらの方は京都の田舎の爺さんの独り言ですから、この暑さの中でよほど暇な人は読んで下さい。


全体的にアラブの春の経緯からアラブ社会の問題(経済、宗派主義、教育問題等)までよくまとめたもので、流石ecnomist だと思うが、同時に矢張り所詮は欧米のリベラル的ものの見方かな、という気がします。

3年ほどアラブの春をフォローしてきて感じたことを書くと

1、アラブの春があれだけ短い期間に多くの国に波及した背景は、殆どのアラブの国が独裁政権で、しかもそれがあまりに長続きし、そのために為政者が腐敗し、不正蓄財がはびこり、国富が一部のものにくすねられていることの不満が高まり、独裁政権を支える土台が腐っていたからで、正当性をとうの昔に失っていたからだと思う。

2、それらの国でも自由な選挙で政権が変わったのはチュニジアとエジプトだけで(おまけにエジプトだって大統領の辞任後1年は最高軍事評議会の「軍政」が続いた)、リビアは内戦があり、NATOの介入がなければ、今頃カッダーフィが未だ威張りくさっていた可能性が強く、シリアについては目下内戦中。イエメンの政権交代はGCCと米国等が背後でおぜん立てをした上での、「自由選挙」の色彩が濃い。

3、こうみてくると、これらの国で自由な選挙でイスラム勢力が選ばれたが、民意に配慮しなかったから失脚したと言うのは、まさしくエジプトだけの現象。チュニジアの連立政府は、目下世俗主義派からとサラフィ主義者から挟撃されて、苦戦中。その他の国では、シリア内戦が益々宗派戦争へ移行しつつあることはよく知られているが、リビアではそもそも世俗主義対イスラム主義の他に地域対立や部族主義等があって、何らかの構図を描くこともできないような混沌たる状況。イエメンもそれに近いが、あそここそ、如何にアラブの社会では部族の力が強いかを改めて確認してくれたところ。何しろサーレハ前大統領の勢力がもはや一つの部族のような勢力をなして、未だに政権奪取を狙っているような状況。エジプト政変をいち早く支持したサウディ等がどう出るつもりか、今のところ全く不明。こここそ、まさしくサウディとイランの直接の角逐の場になりつつある感じがする。

4、アラブの春の起きたチュニジアでのきっかけが、失業青年の自殺からということが端的に示すように、最大の背景が経済の悪化。

実はチュニジアではベンアリと国民との間に、一つの暗黙の了解があり、ベンアリが独裁者であっても、イスラム過激派を厳しく取り締まり、隣国のアルジェリアのような凄惨な殺し合いを防ぎ、一定の経済成長を通じて国民、特に貧しい地域の底上げを図っている間は国民も文句を言わないと言うことであったが、アルジェリアの殺し合いも一段落し、過激派の脅威は遠のき、一方世界経済の変動等のために一定の経済成長が保証できなくなり、他方大統領夫人一族の不正蓄財が度を越したために、この暗黙の了解が破られたことが最大の破綻原因と考えている。

5、そのことは総てのアラブの春諸国でも同様で、あの貧しいイエメンやエジプト(勿論イエメンに比べたらはるかにましだが、農村や貧民街の民衆は本当に貧しい)でさえ、大統領やその息子どもが莫大な蓄財をしていた。それが暴かれてしまった今では、これらの国がアラブの春以前に戻ることはない(不可逆)ということは正しいが、エジプトでおきたことは旧勢力と世俗主義派の連合体にイスラム勢力の中で同胞団に不満を有していた光の党などが参加したクーデターということで、まさしく軍主導の以前の体制に戻っただけ(革命青年たちも頑張っているが、権力を握っているのは所詮軍部)だと思う。その意味では、現在はむしろ革命前の方に潮流が流れている感じ。これに仮にサーレハが(勿論彼がと言うよりは彼の息子を通じて)come backを果たせば、不可逆どころか、まさしく歴史は逆転すると言うことになると思う。

6、一般民衆の同胞団やナハダに対する不満の最大は経済の悪化にあると思うが、誰が考えても、政治の大変革の後当分は社会も経済も安定するどころか、悪化するのは当たり前の話で、これを根拠としてクーデターをするというのは相当身勝手な話だと思う。

勿論同胞団等が行政能力に欠けていたところも大きいと思うが、そんなことは日本の民主党の体たらくを見れば、ない物ねだりをしているとしか思えない。勿論、ヒットラーが(シャハトだったか忘れたが)有能な経済通を抜擢したことを思えば、同胞団にそれだけの器量がなかったと言うことかとは思うが。

7、同胞団が国民一般の望んでいないイスラム化を押し付けたと言うが、同胞団と言うのはそもそも初めからそれを存在意義にしていた以上、この議論は今更アホなことをぬかしているという以外に言いようがない。よくムルシ―は50%程度の投票しかとっていないと言われるが、より重要なことは大統領の得票率ではなくて、議会の選挙の方だったと思う。要するに議会選挙では自由公正党と光の党と合わせて、7割の議席を獲得していること。

同胞団が不正をしたとか、今になって色々と主張しているが、当時米国等からの監視団も選挙は透明で公正だったとしており、大筋で民主的な選挙であったことは間違いないと思う。勿論、あれは組織の同胞団の所為で、民主化運動は準備ができていなかったなどと言われるが、選挙で勝ち負けが明確になった後でそんなことを言うのはほとんど意味がないと思う。

8、何故そんな判り切ったことを言うかと言うと、今後また自由で公正な選挙があった場合、現在のクーデター政権のお陰で経済が劇的に改善されていたりしない限り(1年以内の選挙でそれはないでしょう。あればまさしくエジプトの奇跡ということになろうが・・・まあサウディ等が巨額の援助をつぎ込んでいるので、もしかしたらそこそこの改善はあるかもしれない。但し、これも現在のような連日のデモ同士の衝突が続いているようでは、外人観光客も外資も逃げ出すだけだと思うが)、結果は同じようなもので、同胞団は大きく減らしても、光の党とかその辺の得票が増えて、公正な選挙であればイスラム主義政党が半数は少なくとも取るのではないかと思われる。

9、勿論、このような状況を防ぐために、選挙制度とか区割りとか、極力イスラム政党に不利な制度にしようとすると思うが、余りやり過ぎると誰が見ても不当な選挙ということになってしまう。

10、何しろ、アラブ諸国におけるイスラム主義(英語ではpolitical islam と言うらしいが)の台頭は、80年代からかなり顕著に見られていたところで、当時エジプトの殆んどの大学学生組合、労働組合、職能組合は同胞団に押さえられていた。

他の国ではエジプトほど顕著ではなかった(要するに透明性が低いということと思うが要するに情報がなかった)が、矢張り各方面でそのような兆候が見られていた。

11、従って選挙をすればイスラム主義政党に相当の支持が集まると言うのはなにも不思議でもなんでもない。

事情は若干違うが、イラクで選挙をすれば、自由な選挙であれば人口比率を反映してシーア派が勝つと言うことと共通の現象で、要するに民主主義が数の政治である以上、物理的に数の多いところ及びかたい組織を有しているところが政権を取ると言うだけのことだと思う。それが嫌なら民主的な選挙とか、民主主義とかは中東ではやめた方が良いと思う。極端なことを言えば、昔の委任統治か信託統治でもしてもらうか、従前の軍警察体制による独裁国家で行くしかないと思う。

12、と言うことで、エジプトでもクーデター当局は早期の民政復帰などと唱えているが、お題目に過ぎないと思う。軍政がかなり長く続かざるを得ないか、民生の仮面をかぶった軍主導の政治(要するにサダト、ムバラク時代のエジプトの政治だが)にならざるを得ないと思う(おそらく後者の道をたどると思うが)

まあ、楽観的な希望を言えば、イスラム主義政党もだんだん経験と失敗を積んで、将来的にはより柔軟で解明的になっていく可能性があると思うので、何度も失敗を繰り返していつうちにある程度の落ちどころが見えてくると思う。

それにしても、そこまで行くには相当時間がかかるのではないか?

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