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若狭勝氏の思い出

 今週の月曜は、参院選の選挙結果を見ていて寝不足気味になった人は多かっただろう。
 検察問題に絡めていうなら、森ゆう子さんの落選は本当に残念だった。支持政党は別にして、彼女ぐらい精力的に働き、また、検察問題などでも大きな働きを見せ、情報公開をしてくれた政治家はいない。とりわけ、検察が隠しておきたかった、最高検報告書をその日のうちにネット公開するという、風穴の開け方は素晴らしいものだった。ぜひ、3年後の復活を願いたい。

 小選挙区制の性格上、自民党の圧勝は、ほぼ予想されていたものだったが、一方で、共産党の躍進が目立ったのは、私としては、良いことだと思っている。とりわけ東京選挙区では、当初、自民2議席が固いと言われたいたものを、早々と山本太郎氏と吉良よし子氏が当選を確定させ、最後の議席を自民と民主で争うことになったのは、意外なほどの反原発の想いが首都圏で大きかったことを感じさせてくれるものだった。
 共産党に関しては、「小沢憎し」の一念のあまりか、検察問題では、検察の暴走を支援する側に回ったという汚点はあるが、勢力を伸ばしたことで、これからは、共産党が検察のターゲットになる可能性が出てきたことは自覚された方がよいと思う。もちろん、当会では、そのときには「それみたことか、ざまあ」などとは言わずに、不当な迫害には不当だと声をあげるのは言うまでもない。

 その一方で、自民党から出馬して、あれだけの知名度がありながらワタミの渡邊美樹氏が想像以上に苦戦したことと、同じく、組織票で当確と言われながら落選した若狭勝氏の落選は、一服の清涼剤だった。

 若狭勝氏に個人的な恨みはないが、私は、彼が、かつて自由人権協会のシンポジウムで語った言葉が忘れられない。
 彼は、このシンポジウムで、平然と「検事をやめて1年9ヶ月なので、心は弁護士」と語ったものだった。20数年検事をやったことは、彼にとって何だったのなのだろう、とその時思ったものだ。

 このシンポジウムは色々な点で、若狭氏の人となりを知る上で、興味深いものだった。自分で、「検察の問題はあると思うので、可視化は必要」と言っておきながら、その舌の根も乾かないうちに、「特捜案件などは可視化すると、できなくなる案件はかなり増える。それを天秤にかける必要がある。暴力団案件などは難しくなる。オフレコだからしゃべることがある。今の5割ぐらいになる」と、事実上の可視化反対意見を言い出したものだった。
 いくら素人の聴衆でも、暴力団関連は、警視庁4課から地検刑事部に上がるもので、特捜で暴力団案件を扱ったことなど、過去に一度もないことぐらい知っている人は多い。よくもヌケヌケと、こんなことがいえるものだと思っていたが、さらに驚愕したのは、そのあと、ご本人が、得意顔で解説された、「特捜とは何か」だった。
 
 特捜の問題は昔からあったと思う。キーワードは「一人二役」「同じ船に乗っている中での人事評価」ということだ、と彼はその時語ったのだ。
 つまり、特捜の中で、「捜査と起訴を両方やり」「みんなと同じ方向を向いていれば、いい人事評価が取れる」ということである。
 はっきり言えば、個人の良心やなにが正当かということよりも、「特捜部全体と同じ方向を向いていれば出世する」と言ったわけで、まさしく、自分はそうやって(空気を読んで、上司に諂って)出世してきたのだと告白したようなものであった。
 
 そして、この会場で、私は、彼にこう質問した。
「検察のストーリー捜査が問題になっているが、特捜にストーリーはあるのか。『ストーリーに合わせた供述調書を無理な取り調べで作るということがあった』と言われているがそれについてご存知か?」
 その答えも、今でもはっきり覚えている。

「自分では無理に認めさせたつもりはないが、向こうからはそう見えたことはあったかもしれない。」

 言わせてもらえば、若狭氏が手がけたゼネコン事件などの案件では、多くの人からは「そう見えていた」のは確かで、十分な裏付け捜査もせずにストーリーを勝手に作り上げ、長時間にわたる取調べで調書化しようとする捜査手法に、東京地検特捜部の副部長、主任検事としてどっぷりと関わってきた若狭氏にとっても、それは否定できないことだったということだろう。
 しかし、特捜内で出世するために空気を読んでいた氏には、「同じ船に乗っている中での人事評価」が最重要なキーポイントだったということだ。

 特捜をやめてから、「元特捜副部長の弁護士」の肩書きでテレビで見かける若狭氏は、言うまでもなく、テレビで「番組の空気を読む」コメンテーターとして小沢バッシングに参加し、推認判決までも「供述なしの状況証拠だけで有罪は画期的」と絶賛までするという、露骨な「御用コメンテーター」の役割を忠実に果たし、重宝されてきていたことは言うまでもない。
 
 参院選期間のツイッターで、若狭氏は「法律やコンプライアンスに精通している私に、政治腐敗を根絶すべく、監視役になってもらいたいからだと思い、」と語っていたが、おそらく、この人は、自民党の中で代議士になれば、すぐに「同じ船の中で同じ方向を向く」処世術をもって、「弁護士をやめて○○ヶ月なので、心は代議士」と言いだすであろうことは目に見えていた。
 こういう、徹底的に大政翼賛的な生き方をする人が、今後、生き方を変えるとは思えないし、この人を立候補者に加えたこと自体が、ある意味、ワタミの渡邊美樹氏以上に、今の自民党を象徴していると、私には思われたものであった。
 彼の落選は、数少ない朗報であった。

おまけ https://twitter.com/hitomi_rome/status/172684961508372480

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