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「勝利」の実態

 猛暑の参院選は与党の勝利で幕を閉じました。

 前回のこの欄で触れた埼玉選挙区も、自・公各候補が1位と2位を占め、かつ古川候補は100万票を超える独走で圧勝しました。
 皆様の格段のご支援に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 ちなみにこうしたお礼のメッセージを記載することや、選挙中のインターネット活用は、これまで公職選挙法上禁じられていましたが、今回の選挙からこれらが認められることになりました。
 実際どのような効果、あるいは問題があったのかは、今後きちんと検証しなければいけませんが、例えば街頭演説会の告知によって、その場に多くの方々が集まり候補者や応援弁士の生の声に耳を傾けることができるようになるなど、一定の意義はあったと思います。

 しかし、選挙が終わってみると、いくつか注意しなければいけない点に気付きます。

 まず、事前報道の影響の大きさと、死に物狂いの選挙運動の大切さです。
 事前に自民党圧勝の報道があり、特に1人区で劣勢に立たされているとされた野党は必死の選挙戦を展開しました。私が入手していた世論調査のポイントからもっと大差をつけて勝つと予想された自民党候補者が、接戦を強いられた選挙区がいくつもあります。逆に、苦杯をなめた沖縄選挙区は、実はもう少し野党の候補者が大きくリードしていました。最終盤に応援弁士を含め、必死の追い上げをして、あと1歩のところまで迫ったのです。

 また、東京は自民党の2議席獲得が固いとの報道が流れ、1時は丸川候補をリードしていると伝えられた武見候補の票が減ってしまい、逆に丸川候補の得票数が突出する結果となりました。

 「投票箱のふたが閉まるまで選挙はわからない」・・・言い古されたこの標語は、風が大きく選挙を左右するようになっても厳然と生きているのです。

 第2に、参院選における組織票の意義と、それと矛盾するようですが無党派のパワーの強さです。
 民主党の比例代表で当選した7人のうち6人が、日教組を含め、労働組合の組織候補でした。自民党も比例代表の上位当選者には何らかの組織による支援があり、竹中平蔵さんや片山さつきさんのような全国的知名度を背景とした当選者は少なかったように思います。

 そして猛威を発揮したのが無党派層でした。維新・みんなの選挙協力はうまくいかなかったとはいえ、民主党と競合する選挙区では第三極として、どちらかが民主党を上回る結果を数多く残しました。維新の橋下代表は「野党が結集して自民党に対抗できれば力になる」とおっしゃいますが、そうした面はあると思います。

 しかし世界の流れを考えれば、日本の未来のためにも、「反自民」による野党の結集ではなく、政策・理念による政界の再編が求められるのであろうと思います。民主党が分裂し、第三極がきちんと「小さい政府」「大きな政府」で旗印を鮮明にし、日本でも2つのグループができてイギリスの保守党と労働党のように政策によって国民に信を問い、競い合うような体制にしなければいけない(無論少数政党には配慮した形で)というのが私の確固たる持論です。そうした意味ではみんなの渡辺代表が「あくまで理念・政策本位で党のスタンスを決める」とおっしゃることには共感を覚えます。

 東京選挙区の山本太郎さんの健闘も目を見張るものがありました。ご本人に政治の経験や組織はなくても、都市部の無党派やインターネットの力を背景に議席を獲得したということは既存の政党が有権者に魅力を感じてもらっていないことの現れであり、真摯に受け止めなければいけません。実は自民党の比例獲得議席数も本来もっと伸びてしかるべきでした。上述したような政策本位の政党政治の実現や、党改革をしっかり行わなければいけません。

 第3に、共産党の躍進です。特に都市部での躍進は目を見張るものがあります。
 もっとも、「理念本位の2大政党制」を掲げる私の立場からすれば、終始理論的一貫性を有し、弱者の味方という立場を貫く共産党が支持を集めるのはむしろ当然の流れかもしれません。いずれは社民党や民主党と共産党が合体する日が来るのかもしれません。

 しかし、革新県政(都政)と呼ばれる時代に多くの自治体が経済的な停滞を経験し、世界で共産主義が相次ぎ崩壊している現実を見れば、過激な左派勢力が政権を取るのは国民生活のために決して望ましいことではなく、いかに穏健かつ現実的なリベラル勢力に衣替えができるのかが課題となるように思います。

[今後の課題]

 参院選の勝利は決してゴールではなく、新たなスタートラインです。経済政策、今日から始まるTPP交渉、原発などエネルギー問題、消費税を含む税と社会保障の一体改革、外交・安全保障・憲法問題・・・難題が山積しています。特に沖縄で自民党候補が敗れ、普天間基地の危険除去と米軍再編問題はまた暗礁に乗り上げました。

 私は昨年の今頃、民主党政権で日本が内外とも壁に突き当たっていた時、「この難局を打開できるのは(谷垣総裁のもとで解散が実現できるのでなければ)安倍晋三総裁しかいない」と、それまでの国政での経験をもとに確信していました。

 当時は超党派議員グループ「創生日本」など、日本の伝統や教育・憲法改正などの面から安倍総裁を支持する動きがありましたが、私は経済再生、特に構造改革の面から、小泉内閣のもとで官房長官を務め、改革分野にも通じている安倍総裁に成長戦略をリードしてもらいたいと痛切に感じていました。安倍議員を代表とする金融緩和の勉強会は山本幸三議員・田村憲久議員などにより立ち上がっていましたが、いわゆるアベノミクス第3の矢に相当する成長戦略のエンジンは立ち上がっていませんでした。(ちなみに山本・田村両議員は総裁選では安倍陣営ではありませんでした。)

 下村博文議員、礒崎陽輔議員、義家弘介議員と水面下で構想を練り、世耕弘成議員たちにもお手伝いいただきキックオフした「新経済成長戦略勉強会」こそが、今回のアベノミクス誕生の原動力になったと自負しています。(このことは小川榮太郎氏の近著「国家の命運」にはきちんと書かれていない事実です。)

 しかし自民党内では、同じ理念を持つ議員が必ずしも多数とは言えない現状にあります。改革派の菅義偉官房長官が内閣の要でしっかり政府をまとめていただいていますが、ともすると逆のモーメントが働きがちである実態を私はあちこちで見聞きしています。

 もちろん、改革が全て善だと言うつもりはありません。地方や現場の実態にきちんと耳を傾け、目で確かめ、きちんとプロセスを踏んで物事を決めていかなければいけません。

 しかし一歩引いてみれば、今日本は国際競争の中で残るかどうかの崖っぷちにいるのです。ここであらゆることを加速しなければ、日本は本当に立ち遅れてしまいます。そしてその危機感こそが、今回の参院選でねじれ国会を解消した最大の原動力になったはずなのです。

 一部報道では、「現在の執行部・政府の体制は参院選向けの仮の姿だ」と公言している自民党重鎮がいるなどと報じられていますが、ここで時計の針を逆戻りさせるような体制の先祖返りは断固として阻止しなければいけません。私の立場でできることを、全力で行って参ります。

 最後に、参議院議員選挙の定数配分違憲訴訟が全国で一斉に起こったことも明記しなければいけません。

 衆議院議員選挙の1票の格差は曲がりなりにも1対2以下を目指す形になりましたが、参議院は都道府県単位の選挙のため選挙区間には2倍をはるかに超える格差があり、この欄でも触れたように、2人区よりも1人区の勝敗が全体の帰趨を決する、極めていびつでかつ過疎地オリエントな制度となっているのです。現に、衆院選では各党は都市部に受けのいい「改革」を訴え、参院選では過疎地に受けのいい「格差是正」を訴えるのが勝利につながるとも言われています。

 こうした実態をどうすればよいのか。参議院選挙制度改革は今、衆議院同様(というより衆議院よりも深刻な)暗礁に乗り上げたままです。道州制の検討を含め、参議院のこれからをしっかり議論する時期がやってきました。

 全力で頑張りますので、皆様のご支援を心からよろしくお願い致します!

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