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参院選後に待ち受ける消費税引き上げの判断

   7月21日の参議院選挙は自民党が圧勝。6年続いた衆参の「ねじれ」も解消した。参院選で自民党が評価されたのは、紛れもなくアベノミクスで景気回復の兆候が表れたことへの評価だった。

   この回復基調が持続的なものになるかどうか、ねじれを解消した政治が成長戦略をどれだけ実現できるかという第三の矢と共に、第二の矢でいかに経済成長と財政再建のバランスを取りながら財政運営を行えるかが重要だ。10月頃予定される消費税引き上げの判断はその試金石となる。

   消費税引き上げの最終判断は4-6月期の経済成長率、税収見通し、海外経済の動向などを材料とした総合判断になるようだが、4-6月期の実質GDP成長率(前期比年率)は3.03%iと非常に高い伸びが見込まれている。その他の経済指標も順調に改善してきており、指標だけを見れば消費税を引き上げる環境が整ってきたといえる。

   しかも、消費税の引き上げを実現しなければ、G20での国際公約は反故にされ、格付会社が日本国債を「BBB」のジャンク債の一歩手前まで格下げすることは十分に考えられる。今後、アメリカで量的緩和策の出口の議論が一層本格化することを踏まえれば、日本の長期金利の上昇を最低限に押さえ込むためにも、財政再建の象徴となっている「消費税の引き上げ」を先送りすることは危険だとの判断も働きそうだ。

   ただしである。消費税は少なからず経済にマイナスのインパクトを与える。このため消費税の引き上げはやむをえない判断だとしても、そのインパクトを小さくするために、何らかの経済対策が打ち出されるものとみている。一部報道では、昨年度の税収の上振れ分を含む剰余金で経済対策を行うとの議論が出ている。剰余金で済めば計画ベースでは財政収支が悪化することにはならないが、消費税+3%分の税収7.5兆円と比べれば剰余金は約1.3兆円と小さく、「もっと必要だ」との意見がこれから出てきそうだ。

   また、新たな経済対策の中身の議論も重要だ。もし家計への負担を軽減するとの名目で何らかの減税措置がとられた場合、本当に財政収支の改善に寄与するものとなるのか、前回の減税策の失敗を忘れてはならない。

   消費税率を3%から5%に引き上げた97年は、消費税の増税と所得税・住民税の減税がセットで実施された。政府は94年から先行して将来の消費増税分を財源とした特別減税(5.5兆円)を実施した。特別減税は一年間の時限的措置であるが、これを止めては実質増税となることから、政府は景気への影響を懸念して特別減税を延長し、最終的には恒久的な減税へと置き換えてしまった(図表)。結果として国・地方の税収は消費税の増収額を所得税・住民税の減収額が上回り、97年前後の税制改革は財政収支を改善させるものとはならなかった。

   仮に今回も時限的な減税措置を決めると、次年度以降の減税策の停止という実質増税を政府が決断できずに恒久減税に追い込まれ、消費増税が本末転倒になりかねないと筆者は懸念している。

   更に、今回の消費税の増税分は社会保障・税一体改革で既にその使い道が決められている点も改めておさえておかなければならないポイントだ。使途が決められている消費税を引き上げても財源に余裕はでてこない。

   10月の最終判断に向けて景気対策を検討する上では、政府支出や減税策の規模や期間、そして消費税の増収額、その税収を当て込むことになっている社会保障の機能強化策(約2.7兆円)などのバランスを十分に考慮し、財政再建という本来の目的を逸脱してはならない。

   近頃、消費税ばかりが財政再建のシンボルとして議論の大半を占めているように感じるが、財政再建の一丁目一番地は社会保障改革であることを忘れてはならない。社会保障をバランスさせるためには、税収を投入するだけではなく毎年1兆円増える社会保障費(国庫負担)への切り込みが不可欠だ。この参院選で長期の政治基盤を手にした安倍政権が、ここで社会保障制度にメスを入れない限り、社会保障制度は持続可能なものにはならない。

   この夏は消費税の引き上げの是非に議論が集中することになろうが、今一度消費税の引き上げが何のために議論し決定されたものだったのか、その目的のためには消費税以外にもたくさんやるべきことがあったはずだということを振り返り、もう一度社会保障給付の見直しを議論のテーブルに乗せて財政再建の道筋を描いてもらいたい。


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  i 日本経済研究センター ESPフォーキャスト(2013年7月調査)

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