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参院選で全国48,777カ所の投票所のうち、過去最高の16,958カ所で終了時刻が繰り上げ 〜各自治体の選管にIWJが電話取材 繰り上げ理由に不可解な点も

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◇「冬だから」「夏だから」不可解な繰り上げ理由

 「街灯の復旧しきれていない被災地では、冬の夜間の出歩きは危険」といった、復旧の未整備を理由に挙げた自治体はなく、代わりに「夏で暑いので、健康管理の面」「選挙立会人や自治体住民からの要望」や「原発事故による電力不足が平成23年にあったこと」などが新たに加わった。

 暑いのは日中で夕方からは夏とはいえ、涼しくなるはずである。「暑いので、健康面への配慮から」というのは、こじつけにしか聞こえない。「冬だから」繰り上げ、の次は、「夏だから」繰り上げ。その次には、「春だから」「秋だから」という理由が加わるのだろうか。

 「電力不足」という理由も、理解しがたい。投開票所の電灯が、たかだか二、三時間長く灯ると、どれほどの量の電力が「よけいに」消費されてしまうというのだろう。また、同じ福島県内でも、会津若松市などは福島市や郡山市が挙げた「原発事故による電力事情」を、会津若松市は「今は関係ない」と否定している。時刻変更の理由にはならない、とする「電力事情」を他の自治体が理由に挙げるのは、不可解である。

 また今回全943カ所中934カ所と、ほぼすべての投票所で終了時刻の繰り上げや開始時刻の繰り下げを行う群馬県の選管にも、その理由について問い合わせた。

 

■群馬県 前橋市 選挙管理委員会

Q:今回の参院選の投票所の数と繰り上げる時間はどれくらいですか?

A:全101カ所中、19時までが98カ所、18時までが3カ所。

Q:どういった理由がありますか?

A:自治会連合会や立会人から「時間の繰り上げができないか」との要望がありました。期日前投票を行える場所を平成21年に、9カ所から16カ所に増やしました。昨年の衆院選のときは、全投票者数の約1割が期日前投票で投票した。期日前が浸透してきています。

 また、平成21年の選挙のときに実態調査を行い、19時〜20時までの投票者数が少ないという結果が出ました。初めて時間を繰り上げたときは、「知らなかった」という苦情が来たことがある。しかし現在では、100%苦情がないとは言わないが、以前に比べるとほとんどありません。

 周知の仕方としては、広報前橋に書いたり、チラシを配ったり、入場券やwebページにはもちろん記載しているし、七夕祭りでは選挙啓発用のうちわを配ったりしています。


 「100%苦情がないとは言わないが、以前に比べるとほとんどない」というのはつまり、「時刻の変更によって投票できなかった人が少ないながらも存在する」ということである。昨年の衆院選の時も、ネット上では「投票所に行ったら閉まっていて投票できなかった」という声があがっていた。投票意思のある人間を、投票時間を制約することで、結果として閉め出してしまったのならば、国民の投票の権利の制約につながったと批判されても仕方がない。投票率の低下に、拍車をかけるようなマネをなぜあえてするのか。

 前述したメルマガ第70号+71号でも論じたが、繰り上げは、「特別の事情のある場合」は公職選挙法違反にはならない。しかし、違反でないからといって、繰り上げの判断が「正しい」とは言い切れない。「午後6時以降の投票率が低い」「期日前投票が浸透している」からといって、投票時間を繰り上げなくてはならない、差し迫った必要性の説明にはならない。事情で当日の遅い時間にしか投票所に行けない人も、少なからずいるだろう。

 「選挙経費の削減」「開票時間を早めるため」という説明は、むろん言語道断である。議会制民主主義の日本において、我々有権者が選挙で投じる一票というのは、何よりも重みを持つ。それに対して、終了時間を1?4時間早めることで、一体どれほどの手間の解消・経費の削減(=特別の事情)になるというのだろうか。この選挙の経費というのは、我々国民の税金である。

 群馬県で唯一、終了時刻の繰り上げや開始時刻の繰り下げを行わない自治体であるみなかみ町の選挙管理委員会は、IWJの取材に対し時間を繰り上げない理由として、「選挙人の投票時間の確保。投票率を上げるため」と回答した。実にまっとうな回答ではないだろうか。コストが少々かさんでも、可能な限り多くの有権者に投票機会を与えるというのが、民主主義の基本のはずである。

 昨年の衆院選で59.32%という、戦後最低の投票率を記録したばかりであれば、なおさらこのみなかみ町のように「投票率を上げるため」に投票時間を維持すべきではないだろうか。税金を使って投票率の向上を呼びかける一方、経費削減などの財政事情を理由にするのは、大きな矛盾がある。

 この繰り上げの問題について、納得のいく回答は未だにどこからも発表されていない。この件については、引き続き取材を重ねていくつもりである。(取材:大西雅明、佐々木隼也・文責:岩上安身)

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