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「二次創作同人”小説”」が合法って本当?

この記事は、Jコミのメルマガ「はんぺん」からの転載です。

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 最近ネット上で出回っている、「二次創作作成禁止一覧」というリストをご存じでしょうか。
 リストというより、ブログ記事なんですが。

★ 「二次創作作成禁止一覧」
http://ameblo.jp/sakananosaba/entry-11238326575.html

 あれれ? おかしいですね。主に「二次創作を助ける活動」をしている赤松健の作品(「ラブひな」や「魔法先生ネギま!」)が、二次創作禁止になっていますよ。(笑)

 このリストは、「”小説家になろう”のHPにあった」と書かれてはいますが、正確にはその関連サイトで、現在は閉鎖されている『にじファン』に掲載されていたものです。
 だから現在は存在しません。出回っているのはコピペしたものだけです。

 『にじファン』は、二次創作専門の小説投稿(紹介)サイトで、2010年8月に開設。しかし2012年初旬から、「サイト内での適切な作品掲載を目指し、規制対応」を行っていたようですね。その頃に発表・更新されていた自主規制リストなわけです。結局『にじファン』は、2012年の7月に閉鎖されました。
http://nizisosaku.com/

 この「二次創作禁止リスト」リストの根拠(基準)となっていたのは、出版社からの苦情や通告などではなく、「出版社の公式サイト」に書いてある文言だったようです。出版社のサイトには、よく「出版物やホームページ上の画像・文章・漫画・キャラクター等をもとにした漫画・小説・文章等を作成し、掲載すること」を禁止するようなページが存在しますよね。 ↓

 どれも定期的にネットで話題になるページで、特に芳文社のは言い方が厳しく、「けいおん!の二次創作オワタww」と騒ぎになることがよくあります。

 そして、集英社のサイトには(私が見たところ)断り書きが見当たりません。この差が、リストにも表れています。集英社のタイトルは禁止リストに入っていないのです。

 恐らく『にじファン』の場合、

  1. 出版社やゲーム会社の公式サイトに「断り書きページ」が存在する
  2. 『にじファン』への投稿数が多い

という2点を満たしたタイトルを、単に書き出しただけ・・・というのが真相ではないでしょうか。だって同じ講談社でも、ラブひなの二次創作はNGで、GTOなら二次創作OKだなんて変でしょう?(笑)

 出版社の「禁止ページ」は、どれもよくある一般的な断り書きで、これを根拠に摘発された二次創作同人誌は殆どありません。(*1)
 「少年マガジン」のアプリ公式ツイッターからは、こんな発言さえ飛び出しています。
https://twitter.com/magazineComics/status/263887968211709952

・・・・話を戻しまして、「二次創作同人”小説”」の話です。

 実は以前、小倉秀夫弁護士から、「二次創作小説なら合法ですよ」というお話がありまして。そもそもキャラクターやアイデア自体は著作権の保護対象ではないし、特に問題無いとのこと。(もちろん絵や商標が入っていたらマズいでしょうけど)

 また、著作権界の若手ホープ・上野達弘先生も、文化庁の著作権分科会で

例えば,他人の小説の登場人物を用いて別のストーリーを有する続編パロディ 小説を作成するという場合,これは表現ではなくアイデアの利用にとどまることを理由に著作権侵害に当たらないと判断される場合が多いのではないかと思われます。さらに,あるパロディが著作権侵害に当たるとしても,これに対して差止請求をすることは権利濫用に当たるとされる可能性も否定はできないように思われます。

と述べています。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h24_shiho_01/gijiyoshi.html

 あれ・・・? もしかして、「二次創作”小説”」って合法なんですかね?
 『にじファン』は、自主規制が行き過ぎて(ありもしない恐怖から)閉鎖されたのでしょうか?

「二次創作小説」について、Jコミ法務部長のKに聞いてみました。

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赤松:実際、「二次創作小説」(※絵は一切入っていない)って合法なのかね?

K:う~ん、かなり難しいところではありますが、個人的見解でもいいですか?

赤松:いや、できる限り正確な回答を知りたい。(笑)

K:じゃあ、できるだけ(笑)。著作権法が保護する著作物は、「思想または感情を創作的に表現したもの」でなけれならないんですが、この「創作性」のある表現がなければ、そもそも著作物性がなくって、保護されないわけですよね。「創作性」の無いありふれた表現は除外されちゃいますし、「表現」と言えない単なるアイディアなんかも除外されます。

赤松:なるほど。たまに例に出る「100円玉の写真」なんかは、誰が撮影しても大体同じ写真になるから、そういう写真には創作性が無いって事なのかな。http://bit.ly/1ar6LiA

K:そうですね。創作性が少ないと、著作権は認められにくいですね。次に、創作的表現などが認められて「著作物」とされた場合、その表現には創作性の中核みたいなものがあるわけですよ。これを裁判所は、表現上の「本質的な特徴」と呼んでいます。これが重要な鍵になります。

赤松:「本質的な特徴」って、裁判所で実際に使ってる言葉なの?

K:はい。社会的に「盗作」と言われるものに対して翻案権侵害の成否を決めるのは、この「本質的な特徴」なんです。原著作物にある本質的特徴を、二次創作物から「直接 感得(かんとく)することできる」ならアウト、できないならセーフと判断します(最判H13.6.28ほか)。同一性保持権侵害の対象範囲についても同様です。あ、もちろん依拠性がない場合(偶然の類似)は別です。

赤松:依拠性というと、それを知っていてそれを参考にして作ったということだね。偶然に似た場合は、翻案権侵害にはならないわけか。

K:そうですね。それで、この「本質的な特徴」って具体的に何だということになるわけですが、これが面倒なところなんです。音楽、漫画、小説、アニメ、脚本、映画など著作物にはいろいろありますけど、それぞれ表現態様によって我々の捉え方は違いますよね。

赤松:そうだね。それぞれ、メロディー・構成・ストーリー・テーマ・図柄・表現方法とか、メディアによって特徴のもつ重さは様々だもんね。

K:ええ。たとえば小説と漫画に図柄の共通性はありませんが、小説内で詳細に表現されたものを図柄で再製したものには、本質的特徴の「直接 感得性」を認める場合があるかもしれません。漫画の図柄をアニメにした場合には容易になります。さらに漫画のストーリーや構成と同じアニメであればもっと容易になる、といった具合に。こうした判断は画一的にはできず、個別具体的にしなければいけません。また、一部だけを取り出して「似ている」とも判断できないと思います。あくまで著作物全体から判断されるべきでしょう。

赤松:確かアメリカと違って、日本の判例では、キャラクター単体を著作物として認めてないんだよね?

K:そうなんです。キャラクター単体は単なるアイディアとして扱われてます。とはいえ、じゃあキャラクターの利用はOKかと言えばそうではなく、あくまで創作的表現が絡めば侵害が成立します。この創作的表現との絡ませ方は、そもそもの表現方法が異なる漫画と小説とでは違うと考えられます。・・・なんだか自分で言っててスッキリしないんですが。(笑)

赤松:じゃあ、具体的な事例で考えてみよう。例えば「進撃の巨人」という漫画のキャラクターを使って、キャラ同士のボーイズ・ラブの二次創作小説を書いたとしようか。それをコミケで頒布した。これは合法化かどうか。

K:え、原則的には翻案権侵害でしょう(笑)。・・・とはいえ、ある漫画のキャラクターをオリジナル小説で使うことについては、「漫画→小説」というハードルも高いですし、オリジナル化によるハードルもありますし、これに舞台設定までもオリジナル(原作に登場しない場所だとか)だったりしますと、そこに「本質的な特徴」を見いだすのはかなり困難のように思います。

赤松:つまり、「大丈夫っぽい」ってことだね?

K: ・・・ううう。断言はちょっと。(^^;)

赤松:そもそも、「漫画→漫画」でさえ現状黙認されてる以上、二次創作小説で捕まるとは考えにくいよね。(笑)

K:でも、原作キャラクターのセリフが著作物とされることもあるわけで・・・そうなると、100%安全ではないですよ!

赤松:分かった分かった(笑)。じゃあ、100%安全ではないけど、二次創作小説の場合、まあほぼ訴えられることも無さそうな感じだし、万が一裁判になっても、かなり権利者側が不利な事例が多そうな感じだってことで。

K:あの、僕は一切責任持ちませんからね!(^^;)

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 というわけで、「二次創作小説」は(現実問題として)かなり安全な部類に入る、というのが私の結論です。まあ、これに関しては異論は少ないでしょう。

 もっとも、件の『にじファン』の場合、どうやらマナー(アンチ・ヘイト作品の増加や、コピペ作品、はたまた原作のセリフを長々と使うなど)の悪さが相当目立ってきていたようで、管理者がサイトを閉鎖したのを外部から非難することもまた、出来ないように感じます。

 しかし、閉鎖されたサイトに書かれていたような二次創作禁止リストの、しかも「転載」が出回るのは、あまり良いことではありませんよね。ブログの管理者などに依頼して、古い記事だから削除してもらうという方向性に動くべきかと思います。

                                   (この項おわり)

 (*1) 例外は「ドラえもんの最終回」ですが、あれも小学館は態度に相当な気を使っており、「謝罪文と、二度としないという誓約書を提出させ、売上金の一部を藤子プロに支払う」ことで済んでいます。逮捕だとか裁判というのはデマです。それに、描いたのはドラえもんの大ファンなわけだから、そんなことしたら作品の人気に影響しますよね(笑)。ていうか、そもそも小学館は権利者ではありませんし。

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