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多くの人が無意識に「民主主義」を捨てたがっている~映画作家・想田和弘さんインタビュー

「悪い政治家は、選挙に行かない人によって選ばれている」。公開中のドキュメンタリー映画『選挙2』のなかで、主人公の山さんが口にする言葉だ。多くの人が選挙の投票に行かないことが、政治に悪影響を与えているというのだ。

この『選挙2』という映画は、世界的に評価の高いドキュメンタリーを発表しつづけている想田和弘監督の最新作だ。前作『選挙』に続き、日本型選挙の断面を鮮やかに切り取ってみせた想田監督に、選挙で「投票」に行く意味について聞いた。【取材・構成:亀松太郎】

―最近は選挙のたびに、投票率が低いことが問題となり、特に若い世代はもっと投票に行くべきだという意見をよく耳にします。一方で、投票に行くも行かないも本人の自由だという意見もありますが、想田さんは「投票」についてどう考えていますか?

想田:もちろん、行かないのも自由ですよ。投票は義務ではなくて、権利ですからね。だから、行かないのも自由ですけど、それはある意味、「民主主義の世の中が終わってもいい」という意志表示でもあると思うんですよ。

「選挙で世の中は変わらないよ、政治は変わらないよ」ということを言った瞬間に、それはもう、「民主主義はいらない」と言っているようなものだと思います。民主主義のシステムを支えているのは選挙なので、そこでニヒリズムに陥ったら、それは民主主義に対するニヒリズムですよね。

僕は、民主主義が最高のシステムだとは思っていないですけど、既存のシステムのなかでは一番マシなシステムだと思っているんですよね。これ以上のシステムはあまり思いつかない。たとえば、君主制に戻すのはリスクが高いですよね。君主が有能な人だったらいいけど、そうでなかったら大変なことになるじゃないですか。

ただ、僕はいま、かなり多くの人が、無意識に民主主義を捨てたがっているんじゃないかという気がしています。

―それは、どういうことですか?

想田:民主主義って、しんどいんですよ。すごく、しんどいんです。だって、民主主義というのは「主権は人民にある」「主権は一人一人の個人にある」というわけですよね。つまり、一人一人の投票によって代表が選ばれて、その代表が決めていくということじゃないですか。それは、一人一人が代表を選ぶために判断しなくてはいけないということです。そして、判断するためには、その材料を集めて、吟味しないといけないんですよ。

たとえば、TPPという問題がおきます。そうしたら、TPPについて情報を収集して、いいのか悪いのか判断をくださないといけない。その問題について判断をくださないと、政治家のことも選べないんです。だから、これはすごく面倒なんですよね。「そんな時間ねえよ」という人がほとんどだと思います。あるいは、「もう疲れている」「家に帰ったら休みたいよ」という人が、たぶん大半だと思うんですよ。

前提として、民主主義というのは、一人一人の個人に対する要求がすごい高いんだと思います。一人一人が、少なくとも政治家の良し悪しや政策の良し悪しを判断できる程度には勉強しないと、成り立たない制度なんです。勉強しないで、ただ単に一票ということになると、いわゆる「衆愚政治」ということになる。衆愚政治というのは、古代ギリシアで民主主義が誕生したときから懸念されたことなんですよね。

民主主義って、本質的に、しんどいことなんですよ。だから、それを捨てたがるというのは、よくわかる。特にこれだけみんな忙しくなってくると、民主主義を捨てたがる人が多いのは、ある意味、自然なこと。実際、無意識に民主主義を捨てたがっている人というのは、結構いるんじゃないですか。

―そういう人に対して、想田さんはどう声をかけるんですか?

想田:まず、そうなっているということを意識化してほしいということですね。たぶん「無意識」なので。「選挙に行きたくないよ」「めんどうだよ」というのは選挙だけのことだと、みんな考えていて、それが「民主主義をやめてもいい」ということとつながっているわけではないと思うんですよね。

でも、「投票に行かない」というのは、究極的にはそういう行為なんです。それを認識したうえで選択するというのなら、まだわかるんですが、たぶんほとんどの人はそう認識していない気がします。だから、「よく考えると、こういうことじゃないですか」ということは言い続けたい。

あと、民主主義というのは、僕が一人で「やろうよ」と言っても無理なんですよね。「民主主義を続けたいです」という人が多数じゃないと、民主主義じゃなくなっちゃう。だから、僕自身は「それをやめるのは、まずいんじゃないですか」ということを言い続けます。

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映画『選挙2』公式サイト

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