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【参院選2013争点解説・総論】真の争点は「一部の特権者の金と権力」か「基本的人権」か

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◇参院選、真の争点は、「一部の特権者の金と権力」か「基本的人権」か◇


 参院選が、7月4日に公示されました。

 各紙の世論調査を見ると、自民・公明の政権与党に多くの支持が集まっていることが分かります。大きく水を開けられつつも、それに続くのが民主、みんな、維新の各党です。生活、社民、みどりの風といった、「中道リベラル」政党への支持率は、1%にも満たないというのが現状です。自民・公明の政権与党が、圧倒的勝利をおさめるであろうことは、ほぼ動かしがたい趨勢であるようです。

※参院選序盤世論調査~自民支持率増35%、民主は激減6%(朝日新聞7月8日【URL】http://bit.ly/12v0ZL6

※自公、過半数超え確実…参院選序盤情勢世論調査(読売新聞7月6日【URL】http://bit.ly/16TIBez

※本社世論調査:自民45%、民主8%、維新5%(毎日新聞6月30日【URL】http://bit.ly/1arAASD

※NHK世論調査 自民42.5%、民主8.0%、維新2.7%(NHK 7月8日【URL】http://bit.ly/1d9rxTh

 大手メディアは、一様に「争点が見えにくい選挙」と報じています。

 しかし、選挙である以上、争点が存在することは言うまでもありません。否、今回の選挙ほど、深刻な争点が山盛りな選挙はかつてなかったかもしれません。原発の再稼動、TPP、若年層の雇用、外交・安全保障、歴史認識など、上げれば枚挙にいとまがありません。「争点が見えにくい」などという大手メディアのオトボケを真に受けている場合ではないのです。

 これらの争点に関する各党の公約は、本号の「特集・2013参議院総選挙 IWJ選挙報道プロジェクト」のコーナーで、徹底的に比較・分析を行っています。公約の具体的な文言については、まずはそちらをご覧いただければと思います。

 争点は山盛りで、雑然としているように見えますが、よくよく見ると、これらの争点を貫いているひとつの対立軸が浮かび上がってきます。

 それは、ひと握りの特権層だけが利益を得る社会を作るのか、それとも、それぞれの国民の基本的人権、ひいてはその基幹である「いのち」を大切にする社会を作るのか、という対立軸です。

 エマニュエル・カントという哲学者は、「他者を、単に手段として扱ってはならず、同時に目的として扱わねばならない」という言葉を残しています。

 個々の争点を一つひとつ丁寧に比較していくと、現在、参院選での圧勝が予想されている自民党の公約が、カントが言う「他者を、単に手段として扱う」方向を向いていることが分かります。

 国民一人ひとりが、自由に職業を選択し(自由権)、あらゆる種類の差別を受けず(平等権)、人間らしい最低限の生活を保障される(社会権)、という「基本的人権」の考え方の枠組みを無視し、大多数の国民を、一部の大企業や富裕層が利益を得るための、「手段」や「資源」に過ぎないと見なしている、ということです。

 そもそも、現代の日本に、「基本的人権」という考えは定着しているのでしょうか。

 6月18日、国連拷問禁止委員会の場で、こともあろうに「人道人権大使」の任にある上田秀明氏が、「シャラップ!」などという暴言を吐きました。「黙れ!」とは、他人を見下した「命令」であって、公の場で、同等の立場にある各国の代表や市民に対して、使われるべき言葉ではありません。他国の委員のひとりから、日本の刑事司法が容疑者の基本的人権をいかに踏みにじるものであるか批判され、その弁明の際に自ら場内の失笑を買ったあげく、「逆ギレ」して怒鳴ったのでした。日本の官僚がいかに傲慢で、他者を見下しているかが分かる事例です。

http://www.youtube.com/watch?v=hkoQjIBA_3U (You Tubeより)

 日本国憲法の基本原理は、「平和主義」「国民主権」、そして「基本的人権の尊重」です。しかし、日本ははたして、基本的人権を尊重してきた国なのでしょうか。実のところ、ともすれば、基本的人権がないがしろにされてきた国ではないでしょうか。

 「一部の特権者の金と権力」を選ぶのか、それとも「基本的人権」に立ち返るのか。今回の参院選で、私たち有権者に突きつけられているのは、このような選択肢ではないでしょうか。

◇原発の再稼動により踏みにじられる基本的人権◇

昨年末の衆院選では、すべての党が「脱原発」を掲げました。野田内閣のもとで、大飯原発3、4号機を再稼動させた民主党も、「2030年代には脱原発」とマニフェストに明記しました。自民党も政権公約に、「原子力に依存しなくても良い経済・社会構造の確立を目指す」と明記し、「脱原発依存」をはっきりと掲げました。

※2012年度衆議院選挙・自民党政権公約 【URL】http://bit.ly/17kA9pA

※2012年度衆議院選挙・民主党政権公約 【URL】http://bit.ly/18fBDoW

しかし、自民党は政権の座に返り咲くやいなや、原発政策に対する態度を一変させました。茂木敏充経産相は、昨年12月26日未明に行われた就任会見において、「原子力規制委員会により安全性が確認された原発については、政府の責任で再稼働を決めていきたい」と明言しました。「脱原発依存」という公約を掲げて政権を奪回したはずの自民党は、あっさりとその公約を覆してしまったのです。

※2012/12/27 茂木敏充経済産業大臣 就任会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/46723

今回の参院選で自民党は、「地元の理解を得つつ」という留保を付けつつも、原発の再稼動をうたっています。

「IWJウィークリー第8号」の「ニュースのトリセツ」でも解説しましたが、6月19日に原子力規制委員会が正式に決定した、原発の廃炉と再稼動を選別する「新規性基準」は、「電力会社の事情」に配慮した「甘い基準」になっています。「緊急時制御室」の設置に5年の猶予期間を認めた他、機器の検査を厳格化した「特別点検」を実施すれば、原発の廃炉に最大で20年間の延長を認めるといった例外が盛り込まれているのです。

※2013/06/26 【IWJウィークリー第8号】規制委が「世界一厳しい」と豪語 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/86966

その「新規性基準」は、7月8日に施行されました。これを受け、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の4事業者が、施行日初日、原発の一日も早い再稼動を目指し、原子力規制委員会に安全審査申請を行いました。

さらに、福島第一原発事故の収束の目処すら立っていない東京電力が、新潟県の柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査を申請すると発表しました。新潟県の泉田裕彦知事が、排気設備と原子炉建屋の土台部分が一体化されていないとして、「安全性について大丈夫なのか」と強い懸念を示しているため、再稼動の見通しは今のところたっていません。しかし、東電側は、引き続き、泉田知事に再稼動の理解を求めていく、としています。

2011年3月11日に発生した福島第一原発事故により、多くの被災者が避難を余儀なくされました。しかし、自主避難者に対する東電からの賠償が成立したのは、発災から2年以上が経過した、4月22日のこと。福島第一原発は、現在も大量の汚染水を地下に漏らし続け、高濃度の放射性物質が海洋へ拡散することも懸念されています。

福島第一原発から拡散した放射能による被曝を懸念し、他県へ移住した方々の「避難の権利」や、福島県内で漁業を営む方々の「地元で安全に生きる権利」が守られている状況にあるとは、現状ではとても言えません。

にも関わらず、安倍政権は、原発の再稼動に向けて邁進しています。

竹中平蔵氏、楽天の三木谷浩史会長、ローソンの新浪剛史CEO、武田薬品工業の長谷川閑史社長といった、日本における規制緩和と新自由主義の進展を主張する財界のトップが一堂に会する「産業競争力会議」(議長・安倍総理)は、6月12日、「成長戦略のためには原発の再稼動が不可欠」という最終報告案をまとめました。

※エネルギーは「原発の再稼動」鮮明
(msn産経6月12日 【URL】http://on-msn.com/119HJ50)

ここに見て取れるのは、政治家、官僚、電力事業者、財界人といった一部の権力者が求めるのは「経済成長率」という「数字」であって、国民はそのために貢献する「資源」に他ならず、個々の国民の健康や生命や安全な暮らしという価値をかえりみようとしていない、という現実です。彼らが利益を確保するために、「避難の権利」や「地元で安全に生きる権利」、「被曝しないで健康に生きる権利」といった、一般市民の基本的人権を蹂躙してでも、原発の再稼動を推し進めようという図式です。

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