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キャロル・グラハム『幸福の経済学』

著者は世銀やIMFで働いてきた国際経済・開発問題の研究者。職業柄、社会の「幸せの尺度を測る」ということを熱心に研究してきた。この本では考えられるほとんどすべての尺度が紹介される。同時にこの人はとても正直な人物でもある。「そんなものはない」というのが結論であるからだ。自分たちの仕事のメシの食い上げにつながる事実を勇気を持って公表したのは、エライ。





人間の幸福とは、最低生存レベル所得水準さえクリアすれば、後は所詮、比較の問題にしか過ぎない。一番先に来るのが隣人との比較〔嫉妬〕。それに加えて過去将来との比較〔懐古と希望〕。経済文化のグローバル化で隣人の範囲が飛躍的に広がり、且つゼロサム的な伝統的低成長時代に復帰すると〔そうならなければ逆に地球は人間の重さだけで破裂してしまう〕、ヒトは常に不機嫌とならざるを得なくなるのだ。人間とは罪深い生き物である。

そんなことを考えたら昔の人の知恵はすごかったことがわかる。釣り人が好む格言に次のようなものがある:
  一日幸せになりたければ酒を飲みなさい 
  三日幸せになりたければ結婚しなさい
  七日幸せになりたければ豚を殺して食べなさい
  一生幸せになりたければ釣りをおぼえなさい

中国の古裡だというがみごとに幸せの本質を述べているではないか。酒も結婚も豚肉飽食も、すべての物質的なものは永続する幸福には繋がらないのである。斯くして人間は釣りみたいな「暇つぶし」に幸せを発見する。

釣りと言えばアイザック・ウォルトンの『釣魚大全』。「穏やかなることを学べ ("study to be quiet")」という名言で知られるが、最近この言葉もウォルトンの言葉ではないことを知った。原典は聖書「テサロニケ人への手紙1」:
4:11 また、私たちが命じたように、落ち着いた生活をすることを志し、自分の仕事に身を入れ、自分の手で働きなさい。

繰り返して言う。昔の人は偉かったのである。

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