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候補者を見極める極意とは(選挙プランナー・三浦博史)<参院選・特別コラム>(gooニュース)

古今東西を問わず、候補者の「演説力」は選挙戦の行方を左右するものの一つであることは言うまでもありません。では、その演説の「良し悪し」とは何でしょうか?

(中略)

しかし、近年、演説の中身以上に、選挙戦術で重要視されているのが『外見・好感力』なのです。皆さんも街頭や駅頭で政治家や候補者が演説している場面に出くわしたことが何回かあるでしょう。では、その際、政治家や候補者が何を話していたか憶えている人はほとんどいないと思われます。

ここで『メラビアンの法則』を紹介しましょう。この法則は、人はどれだけ他人を見た目で判断しているのかを研究した、米国の心理学者アルバート・メラビアン教授が1971年に提唱した法則です。

この法則によると、人の言動は話の内容などの「言語情報」が7%、口調や話の早さなどの「聴覚情報」が38%、見た目などの「視覚情報」が55%という割合で他人に影響を及ぼすというもので、その比率から『7―38―55のルール』とか、「言語情報(Verbal)」、「聴覚情報(Vocal)」、「視覚情報(Visual)」の頭文字を取って『3Vの法則』とも呼ばれています。つまり、他人への影響力という点では「聴覚情報」と「視覚情報」という「ノンバーバルコミュニケーション(非言語的コミュニケーション)」が93%を占めているというものです。

 

 しかしまぁ、こういうコンサルの類はどうしてこうも「メラビアンの法則」が好きなのでしょうか。「水からの伝言」とか「EM菌」とか血液型性格診断の類と同等のカテゴリに止まる代物であるにも関わらず、今なお臆面もなく繰り返されているわけです。私もハローワーク主催の就職セミナーで何度となく講師役のコンサルタントから聴かされたものですけれど、そんな下らない話に税金からギャラが支払われているのは、まさしくムダと断言するほかないですし、この辺に切り込む政治家の一人もいたって良さそうに思われます。

 アルバート・マレービアンという心理学者は実在の人物ですが、「メラビアンの法則」は後代の創作であり、氏の研究とはあまり関係がありません。ここで自称・選挙プランナーの三浦博史氏が引き合いに出している類は全くの都市伝説に過ぎないわけです。それでも、こうやって(おそらくはギャラをもらって)メディア掲載の機会が得られるというのですから、まぁ羨ましいと言いますか妬ましいと言いますか、商業的な成功は本人の能力や著作の出来映えとは無関係なところにあるのでしょう。とりあえず「メラビアンの法則」は、「その人の言うことを傾聴すべきか無視すべきか」を判断する上で格好のリトマス試験紙としての役割は果たしているとは言えます。

 

たとえば無名のA候補が毎朝、駅頭で演説をしているとします。A候補が演説を始めて1ヶ月後、通勤する人たちに「A候補を見たことがありますか」と聞くと100人中30人ほどが「見たことがある」と答えます。2ヶ月後に同じ質問をすると今度は100人中50人くらいが「見たことがある」と答えるのです。3ヶ月後、「見たことがある」と答えた人に対し、今度は「それではA候補が街頭で何をしゃべっていたか、その内容を覚えていますか?」と聞いてみると、A候補の演説の内容を言える人はほとんどいないのです。

どれだけ政治家(候補者)が一生懸命訴えても、その内容は3日も経てばほとんどの人の記憶から消えてしまうのでしょう。しかし、あの政治家(候補者)の態度がいいとか、横柄だとか、笑顔がいいとか、しかめっ面ばかりという印象は記憶からなかなか消えないものなのです。

(中略)

これは裏を返せば、ほとんどの人は演説の内容を聞いてもおらず、憶えてもいないということですから、候補者はただ政策だけを訴えていてもダメなのです。ご自分の『外見・好感度』に心を配って演説をしなければ、有権者の意識の中に自身のイメージを植え付けることができず、当選を引き寄せることも難しくなるわけです。

 

 候補者が訴える内容がほとんどの人の記憶から消えてしまうというのは、確かにそうなのかも知れません。やいのやいのと政治に関心がある風なことを喧しく語る人でも、つい最近に起こったことをすっかり忘却しているケースが少なくないですから(政治家であっても民主党の枝野なんか、1日前の自分の言動を覚えていないフシすらありましたし)。世間の特別な関心を集めている人、橋下やワタミのような有名人に各党の党首クラスともなればまだしも、「ヒラ」の議員の政治的主張にまで関心を持っている人は少ないように思われます。しかし、「あの政治家(候補者)の態度がいいとか、横柄だとか、笑顔がいいとか、しかめっ面ばかりという印象」が有権者の記憶に残っているかと言えば、そんなこともないだろうと。

 「ほとんどの人は演説の内容を聞いてもおらず、憶えてもいない」というのは、否定しません(それを知ってか知らずか街頭では政策を語らない候補者も少なくないわけで)。でも「外見・好感度」だって同じようなものではないかと、そんな気がするのですがどうでしょう? あなたの選挙区の議員の顔を、投票用紙を見ながらどれだけ思い出せますか? この自称・選挙プランナーの根拠は「メラビアンの法則」という心理学上の実験とは無関係な代物でしかありません。「なんとなくそれっぽいこと」を言っておけばコンサルタント業は務まるのでしょうけれど、顧客にとっては何の役にも立たないだろうなと確信できます。

 むしろ「無党派層」を動かす上で幅を利かせているのは、「国政レベルでの党のイメージ(≠実態)」が大きいと私は考えるわけです。これは東京都議会議員選挙のような地方自治体の選挙でもそう、当該の自治体では連立与党の一員でも、国会では一応の野党に属していれば、現政権への批判票がそれなりに舞い込んでくると言えます(東京都議会選ではやや是正の傾向もありましたが)。無党派層は個々の候補者の訴えを聞いていないどころではない、地元の議員でどの党が与党でどの党が野党か、それすら気にしていないのではないでしょうか。そして地元の議員の顔ぐらいは覚えているような層ともなると、何がどうあろうと投票する先は初めから決まっているような人が大半を占めているようにも思います。

 結局、選挙運動で「こうすれば周りを出し抜ける」と言えるほどの妙策は誰にも見出されていないのかも知れません(それが簡単に実践できるものであるなら、国でも地方でも勢力図はたちどころに塗り変わってしまうでしょう)。選挙プランナーと称する業者に金を払ってコンサルティングを受けたところで、その費用対効果はどうなのやら。結局は、変に悪い方向で目立たないことに尽きますかね。自力で票を稼ぐより、対立候補の自滅の方が効果は大きいように見えます。そして後は国政における党のイメージと、支持団体(組織票)の取りまとめで決まってしまうわけです。街頭演説で事前の下馬評を大きく覆して世間を驚かすような事例が増えれば、それはそれでおもしろいですし探求の対象としてふさわしくすらありますけれど、たぶん近い将来には起こらないでしょう。国政には関心を持つ風でいて地元の議員には疎い人も多いですから。

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