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美白が行き過ぎると害になる、という話。

カネボウ化粧品が美白製品(肌のくすみやシミをケアするための化粧品)のうち、「ロドデノール」とよばれる成分を含む製品について、自主回収を実施することを発表しました。

お詫びと自主回収についてのお知らせ | カネボウ化粧品

さてこのたび、株式会社カネボウ化粧品並びに株式会社リサージ、株式会社エキップの製造販売する美白製品のうち、「医薬部外品有効成分“ロドデノール” 4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール」の配合された製品をご使用された方に、「肌がまだらに白くなった」ケースが確認されました。

 “ロドデノール”は、様々な安全性試験を実施して厚生労働省より薬事法に基づく承認を得た、医薬部外品有効成分です。しかしながら、“ロドデノール”と上記症状との関連性が懸念されるため、自主回収が適切であると判断をいたしました。

これらの化粧品の使用者数や見つかった経緯については、こんな感じ。

カネボウ、化粧品回収に50億円 ブランドにも打撃 - ニュース - アピタル(医療・健康)

カネボウ化粧品と同社子会社のリサージ、エキップの計3社は4日、美白成分が入っている化粧品約45万個を自主回収すると発表した。主力製品も含まれ、国内で約25万人が使っているという。

今年5月、皮膚科医からカネボウ化粧品に「肌がまだらに白くなった人が3人いる」と連絡が入り、被害が発覚した。同社がさかのぼって調べたところ、11年以降で、同様の症状が出たと思われる例が39件あったという。

リンク先の記事に「まだらに白くなった肌」の写真が出ていますが、たしかに皮膚の一部が「色が抜けた」感じになっています。カネボウ化粧品が発表しているロドデノールの作用メカニズムによれば、この状態は、皮膚のメラニン色素が極端に抜けた状態、ではないかと思われます。

回収された美白製品の有効成分「ロドデノール」は、皮膚においてメラニン色素(黒色・赤褐色)産生に関わる酵素「チロシナーゼ」の働きを抑制し、美白作用を示すとされています(カネボウ化粧品資料)。メラニンは、生体内でチロシンというアミノ酸から産生されます。チロシンは、チロシナーゼによりドーパという化合物になり、さらにドーパキノンという化合物になります。このドーパキノンは化学反応性が非常に高く、ドーパキノンから変化した様々な物質同志がそれぞれ結合しあうことで(これを重合反応といいます)メラニンの分子を作ります。ロドレノールは、チロシンによく似た構造をしているので、チロシナーゼにチロシンが結合するのを邪魔します。すると、チロシナーゼがメラニンの材料であるドーパやドーパキノンを作れなくなるので、メラニンの産生は抑制されるというわけです。

[画像をブログで見る]

考えてみれば「美白化粧品」と銘打って発売されている商品なので、「肌が白くなる」こと自体は「商品の効果がある」ことでもあります。ただし、今回は、人によって美白効果が非常に強く現れかつその効果がまだらに出てしまったわけです。本来の目的とは異なり、消費者にとって害にしかならなかったということですね。個人的には、世の中の「美白化粧品」の効果は「白くなったように思える」「白くなったように見せる」程度のものだと思っていました。今回の結果は、(望まれた形ではないにしろ)「美白効果」が得られたということで、それはそれで驚いています。

カネボウ化粧品の社長の記者会見では「正直なところメカニズムがわからない」と主張しているようです。しかし、美白効果が確かなものとわかっていたのであれば、このコメントは奇妙です。美白効果があることを前提とすれば、このような現象が起こった原因について、可能性くらいは考えられるのではないでしょうか。

「メカニズムがわからない」 カネボウ化粧品・夏坂社長、まだら美白問題で困惑隠せず - MSN産経ニュース

 「正直なところメカニズムがわからない。日焼け止めにも使われており、日光との関係性を研究テーマに考えているが、あくまで仮説。」

美白効果がまだらに強く出るということは、美白効果の有効成分である「ロドレノール」が、その部位で強く作用したということです。私は、皮膚科学については素人なので、推測でしか物をかけません。しかし、例えば、「皮膚に直接塗って使用する」という化粧品の性質から、「今回の現象では、皮膚の一部がロドレノールを非常に吸収しやすい状態になっていた」可能性は容易に想像できます。

皮膚には、体外の物質を体内に入れないための「バリア機能」が備わっています(花王の皮膚バリア機能についての解説ページ)。皮膚のバリア機能は、アトピー性皮膚炎やドライスキンなどの状況では弱まります。すると、体外からの物質が容易に体内に侵入できるようになります。ロドレノールは、このバリア機能をくぐり抜け、皮膚に塗った一部がメラニンを産生する細胞までに到達していると思われます(細胞に直接作用する濃度の何倍くらいのロドレノールを塗布しているのかは知りたいところです)。もし皮膚のバリア機能が部分的に低下している人がロドレノールを皮膚に塗れば、バリア機能が低下している場所では、当初想定していたよりも多くのロドレノールが皮膚から吸収される可能性はあります。

皮膚の細胞に何らかの生理学的作用を及ぼすことで美白をうたうのであらば、このようなことは当然想定されていると思います。しかし、それを加味した安全性確認試験が行われていたのかどうか(例えば、ドライスキンのようなバリア機能が低下した人への安全性確認試験)は、現時点ではわかりません。もし、そのような試験が行われていなかったのであれば、今後の製品開発では考慮に入れたほうが良いのではないかと考えます。 

追記

ロドレノールには、この作用の他にも、メラニン産生を抑制させるメカニズムが存在することが、カネボウ化粧品から報告されています。詳しい作用メカニズムについては、カネボウ化粧品からプレスリリースが発表されています(プレスリリースによると、2011年の日本薬学会で発表予定でした。余談ですが、この学会は東日本大震災の影響で開催中止となっています。なお、発表内容のアブストラクト(要旨)は読めます)。

“ユウメラニン(黒色メラニン)”を顕著に減少させる新効果を発見

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