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- 2013年07月05日 19:17
【赤木智弘の眼光紙背】家族のあり方は多様で当たり前

撮影:BLOGOS編集部 写真一覧
赤木智弘の眼光紙背:第279回
フィギュアスケートの世界で活躍していた安藤美姫さんが子供を産んだそうだ。
少子化の日本にあって、おめでたい話だと思っていたのだけれども、どうやら報道の様子がおかしい。
聞くに、父親の名前を明かせないのだという。
「なるほど、シングルマザーか。大変だろうけど頑張ってほしいね」と思って、納得していたのだけれども、どうも世間には納得しない人たちがたくさんいたようだ。
特にマスメディアは、これをスキャンダルと捉えたのか、父親さがしや、出産の是非など扇動的な報道を繰り返しているようだ。
週刊文春がWeb上で「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」というアンケートを行った。(*1)
安藤美姫の親でもあるまいに(個人的には、親であっても成人女性個人の出産に口を出すべきではないと思うが)、他人の出産に支持するもしないもないはずだ。このアンケートにはすぐさま批判の声が上がり、編集長の名義で謝罪文が掲載された。(*2)
また、cyzo womanのサイト「ハピネス」では、今回の出産を受けて安藤美姫はセックス依存症ではないかという扇動的な記事を掲載し、「未婚の母=淫乱女」という、いったいいつの時代の人間が記事を書いているのかという偏見ぶりを魅せつけた。(*3)
これらの記事が傷つけているのは決して安藤美姫だけではない。彼女を含む日本中のひとり親で子供を育てている親たちや、その子供たちをまとめて傷つけている。各メディアには自らの下衆さを謙虚に受け止るべきだし、猛省を促したい。
こうした偏見の根底にあるのは「正しい家族」という形式に対する執着である。彼らは父親がいて、母親がいて初めて子供をもうけていいと考えているフシがある。
しかし、父親と母親がいても、そこに偏見がはびこることもある。かつて陣内智則と藤原紀香が結婚していた時に言われた「格差婚」も、そうした偏見の1つであろう。格差婚に対する偏見は、今になって矢口真里に対して降り掛かっている。
彼女がバッシングを受けている理由は、決して浮気をしたということだけではあるまい。そこには「稼いでいる妻が、稼いでいない夫を裏切った」ということに対する憎しみが介在しているように思う。これもまた「夫が稼いで、妻が扶助をする」という、正しい家族観への執着の形であろう。
どうして、様々な形の家族を認められないのだろうか?
人が生活する以上、人には様々な感情があるのだから、それぞれの家庭に様々な事情があるのは当たり前である。その差異を認めながらいっしょに生活を行うのが社会である。
このような安直な非難が巻き起こることは、社会の多様さを貶め、価値観の単純化された貧弱な社会を生み出すことにもつながっていく。
僕もまた単身世帯という、家族の形態で暮らしている。
この家族形態も「妻を養ったり、子供を育てないのだから、無責任だ」と批判されることがある。
一方で僕も、正規労働者の夫と専業主婦という形態をもつ家族に対し、国民年金の第3号被保険者問題を挙げて「在宅特権だ!」と批判することがある。
結局、他人の家族の有り様を批判することは、自らの家族の有り様を揺るがすことでもある。まずはそのことに気づいてもらいたい。
*1:緊急アンケート!安藤美姫選手の出産を支持しますか?(週刊文春WEBに元々掲載されていた記事 Web魚拓によるアーカイブ)
*2:安藤美姫選手出産アンケートについて(週刊文春WEB)
*3:安藤美姫に「セックス依存症」疑惑が浮上! ホテル中に響くアノ声とは!?(ハピズム)
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