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輸入物価上昇は日本の流通を変えるかもしれない

世間の人々がインフレが起こると考え、同じ投資金額でも値上がり前に投資するほうが有利と考えるために、企業の投資が活発となり、GDPを押し上げる、その投資効果がでてくればやがて企業の収益も改善され給与もあがるというお話はいやというほど聞かされました。

鍵は、世の中の人たちがこの先にインフレがやってくると考えるかどうか、つまり「インフレ期待」という空気がデフレ脱却の鍵だというのです。経済学と宗教の境目がわからなくなる理屈ですが、現実は小説よりも奇であり、もっと複雑ではないでしょうか。確かに大胆な金融緩和をきっかけに円安が進み、それで輸出は増えなくとも、グローバル企業や輸出産業の海外での売上や海外からの収入は嵩上げされ業績が向上したところが多く、株高となり雰囲気がよくなりました。しかし、物価はどうでしょうか。

輸入物価は上昇しました。しかし、池田信夫さんが書かれているように5月の消費者物価指数で、「コアCPI(生鮮食品を除く総合)は7ヶ月ぶりに0%になったが、エネルギーを除くと-0.4%。つまり電気代が8.8%上がったおかげでデフレが止まった」に過ぎません。デフレが止まり、消費税があがると、その分は物価を押し上げます。

池田信夫 blog : 輸入インフレがやってくる - ライブドアブログ : 

海外に原材料を頼っているものは、コストが上がったために、すでに値上げを発表するメーカーもでてきています。それで値上げラッシュが起こり、インフレ時代がやってくると考える人が多いようですが、どっこいそうそう単純に市場が動くかは疑問です。

なぜなら、価格は市場での需給関係、競争関係で決まってきます。しかも日本の場合は、よほどのブランドでもない限り、激しい市場での鍔迫り合いが繰り広げられています。しかもカテゴリーを超えた競争が起こっているのです。値上げを断行すると、値上げされていない他の品目が買われ需要量が落ちるか、競争に破れかねません。

さらに物価を押し下げる働きをする伏兵がいます。

流通業です。日本の大手スーパーのPB比率は10%程度でしょうか。欧米と比べて非常に低い比率です。

PBは、生産から仕入れのプロセスを効率化するので、価格を下げ、しかも大手ブランドを売るよりも利益率を高くすることができます。

たとえば有名メーカーの商品が100円から110円に値上げして、PB商品が70円で据え置かれたとします。大手スーパーのPB比率が10%とすると、机上の計算ではこうなります。

現在のその商品の平均購入価格は100円×0.9+70円×0.1で、97円となります。

有名メーカーが10円上げ、PB比率がそのままだと110円×0.9+70円×0.1で、106円です。つまり現在よりも平均購入価格は9.2%上昇します。

しかし、消費者の人たちが価格の安い方に流れ、もしもPB比率が欧米並みに30%になったとしたらどうでしょう。

110円×0.7+70円×0.3で、98円です。そうなると、平均購入価格が上昇するのは1%だけです。大手メーカーは10%価格をあげて、店頭での売上が10%増えるのではなく、逆に15%程度落ちることになります。

PBで先行している神戸物産の「業務スーパー」や北海道のコンビニ「セイコマート」はおそらく30%を超えていると思われるのでありえる水準です。

つまり何が予測されるかですが、輸入物価上昇によるコスト増を価格に転嫁すれば、欧米に比べると遅れていた日本の流通業のPBがさらに伸びてくる可能性がでてきます。それは流通業にとっては千載一遇のチャンスになってきます。粗利率の高いPB商品の比率が上がれば上がるほど、営業利益が増加するのですから。

欧米での物価上昇が、欧米の流通業のPBを伸ばしてきたことを考えると大いにありえることです。

さらに言えば、消費税が8%になったとしても、PBは粗利が高いので、利益率を少し落とせば、消費税の増額分を吸収してしまうこともありえるのです。

そもそも人口が増えるわけでもなく、また所得が増えないなかでは、そうそう需要が伸びるということにはならず、市場競争による価格の押し下げ圧力に歯止めをかけることは結構難しいことだと感じます。もし所得があがらないままに、実際にインフレが起こったときは、国民の不満となって、安倍内閣はぶっ飛びかねません。デフレは脱却させたい、しかしうまくいくとは限らず、なかなか辛いところですね。くれぐれも安全運転をお願いしたいところです。

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