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対談:エディ・タカタvs藤沢数希『LIBOR不正操作事件の真相と邦銀の金利カルテルの疑い』

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 2012年夏に発覚したLIBOR(ライボー)不正操作事件は、欧米の金融業界を震撼させた大スキャンダルに発展した。現在までに、UBSは約1400億円(9億4000万ポンド)、RBSは約600億円(3億9000万ポンド)、Barclaysは約400億円(2億9000万ポンド)の罰金を金融監督当局に支払っている。モルガン・スタンレーの調査レポートによると、世界の金融機関がLIBOR不正操作事件で、罰金や訴訟などで支払う金額の総額は1兆4000億円に上ると言われている。そして、2012年12月には、この事件でついに元トレーダーの逮捕者まで出した。

LIBOR事件、UBSに課徴金1300億円 2000件超の虚偽申告依頼』日経新聞、2012年12月19日
LIBOR操作に絡む11行のコストは140億ドル=モルガン』ロイター、2012年7月13日

 じつは、このLIBOR不正操作事件の舞台は円建てLIBOR(円LIBOR)であった。こうした不正操作が頻繁に行われはじめた2006年~2007年頃、東京の円短期金融デリバティブ市場でトップのマーケット・シェアを誇っていた元トレーダーが、これらの事件に関して一冊の本を出版した。

不正操作と偽りのマーケット、円短期金融市場に隠された闇を暴く画像を見る』エディ・タカタ

 僕は、都内のレストランで、彼に話を伺ってきた。そして、その内容をブログに残しておくことにした。

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藤沢数希(以下、藤沢): どうも、はじめまして。藤沢です。

エディ・タカタ(以下、エディ):はじめまして。エディです。

藤沢:僕はこの本を読んで、事実関係や内容はとても面白いと思ったし、TIBORに関する疑惑についても、とても興味深かったんですが、すごく惜しいと思ったんですよ。というのも、正直いって、エディさんに文才がないというか、本の構成などがイマイチなんですよ(笑)。
 僕は、金融の分野では世界的なノンフィクション作家になったマイケル・ルイスさんの本の日本語版の解説なんか、たまに書かしてもらったりしているんですけど、彼の処女作で世界的なベストセラーになった「ライアーズ・ポーカー」は、彼がソロモン・ブラザーズに在籍していた3年間の経験を元にしているのですが、エディさんの金利トレーダーとしての経験も負けず劣らず面白いし、TIBOR(タイボー)の価格カルテル疑惑など、日本の金融行政に対する問題提起も非常にインパクトがあると思うんです。

エディ:これまで、私が本を出版することになるなんて夢にも思っていませんでした。おっしゃる通りで、自分には文才がないことは小さい頃から知っていましたから(笑)。じつは、ある知人に、経済小説を扱う作家さんに情報を提供して、今回の問題を小説化してもらったほうがはるかに売れたのでは?と言われました(苦笑)。
 それでも、どうしてもLIBOR不正操作事件の真相を書き残しておきたかったんです。また、TIBORのカルテル疑惑についても、広く日本国民に知ってもらいたいと思いました。

藤沢:僕としてもせっかくの素材ですし、日本の金融業界を震撼させうる告発なんで、それを僕のブログでみんなに広めたいな、と思いまして、今日は、こうやって機会を設けさせて頂いたわけです。

エディ:ありがとうございます。

藤沢:まずは、エディさんの簡単な自己紹介をお願いします。

エディ:私は、大学卒業後の18年間、合計で5社の外資系投資銀行をトレーダーとして渡り歩いてきましたが、1990年代後半以降2008年に引退するまでの約10年間は、主に円短期金利を専門とする金利スワップ・トレーダーをやっていました。私は円短期金融デリバティブ市場というニッチな市場において、自他共に認めるトップ・トレーダーだったと思います。

藤沢:お給料も毎年一本(=1億円)超えていたわけですね。

エディ:確かに、私のいたニッチな世界では、トレーダーとしては成功したひとりだと思いますし、会社から与えられていた裁量、リスク量という点においても、最もハッピーなトレーダーのひとりでしたね。
でも、私のD証券時代の元同僚に、クリスっていう有名なトレーダーがいて、彼はロンドン勤務のユーロ通貨の短期金利デリバティブ・トレーダーで、残念ながら、EURIBOR(ユーリボー)不正操作疑惑で数年前に退社したらしいんですけど、彼の退職時の退職金プールが、確か日本円で45億円だったらしいです(笑)。その全額が、不正操作事件の影響で支払われなかったというのがニュースになっていました…。
 じつは、私は、D証券には、円LIBORのクリスを目指すべく採用されたんですよ。

藤沢:この業界、貰ってる人は貰ってるんですよね。羨ましい。

エディ:私は、サブプライム問題が発端で金融市場が混乱した煽りを受けて、2008年にD証券を退社したのですが、当時、私とライバル関係にあったトレーダーや元同僚達が、LIBOR不正操作疑惑で、連日のようにロイターやブルームバーグなどのニュースを賑わせていました。私は、彼らの名前を見て、LIBOR不正操作問題が何なのか、直ぐにわかりました。

藤沢:まず、多くの読者がLIBORやTIBOR、それにこれらが元になって天文学的なサイズになっている金利スワップなどのデリバティブ市場についてよく知らないと思います。簡単にこれらについての説明からはじめましょう。そもそもLIBORというのは何なのか、説明してもらえますか?

エディ:LIBOR (London Inter-Bank Offered Rate) というのは、ロンドン市場において大手金融機関が取引する時の金利のうちの貸し手側(Offer)が提示する金利のことです。具体的には、複数の金融機関(リファレンスバンク)から報告されたロンドン時間の午前11時時点のレートを英国銀行協会(BBA)が集計し、毎営業日発表しています。
 たとえば、期間が3ヶ月の円金利は「3ヶ月物円LIBOR」といいます。現在の円LIBORのレファレンスバンクは以下の13行で、上の3つと下の3つを外した真ん中の7行のレートを平均して、LIBORが決まるわけです。

Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ Ltd
Barclays Bank plc
Credit Agricole CIB
Deutsche Bank AG
HSBC
JP Morgan Chase
Lloyds Banking Group
Mizuho Corporate Bank
Societe Generale
Sumitomo Mitsui Banking Corporation
The Norinchukin Bank
The Royal Bank of Scotland Group
UBS AG

出所:http://www.bbalibor.com/panels/jpy

藤沢:TIBORというのは、これの日本版ですね。

エディ:そうですね。TIBORは東京時間の午前11時時点のレートを全国銀行協会(JBA)が集計して毎営業日公表しています。現時点でのTIBORのレファレンスバンクは以下の15行で、上下2行ずつを外した真ん中の11行のレートを平均して、TIBORが決まるわけです。

みずほ銀行
三菱東京UFJ銀行
三井住友銀行
りそな銀行
みずほコーポレート銀行
横浜銀行
三菱UFJ信託銀行
みずほ信託銀行
三井住友信託銀行
JPモルガン・チェース・バンク・ナショナル・アソシエーション
ドイツ銀行
ビー・エヌ・ピー・パリバ銀行
信金中央金庫
商工組合中央金庫
農林中央金庫

出所:http://www.zenginkyo.or.jp/tibor/reference/

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