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日本の将来は明るい

少子高齢化対応、財政再建、競争力の復活・強化等々、我々の前には高い壁がそびえているが、私は、先行きは明るいと考えている。その根拠を述べてみよう。本格的な構造改革は、まだ、全く着手されていない 

まず、1票の格差をなくして一人一票を実現し、インターネット投票を導入する等、若い世代の政治参画を促せば、これまでのスタート台が低い分だけ、これからの政治には、大いに期待が持てる。政治家のダイバーシティを実現するためには、例えば、女性と若者の候補者数が50%を超えなければ、政党交付金を削減する等、工夫の余地もまだいくらでもある。加えて、企業等を休職して立候補が出来る(落選すれば戻れる)など、政界への参入障壁を低くする知恵も、いくらでも出せるだろう。要するに、この国は、まだ対策を打つ余地が十分にある。どうして早々と諦めることなどできようか。 

経済も同じである。大雑把にいえば、GDP≒人口×生産性 であるから、中長期的には、人口を必死で増やす政策を総動員することが望ましい。例えば、出生率を上げるためには、シラク3原則に象徴されるフランスの政策を、そのまま借りてくればいい。しかし、この点についても、わが国では、まだほとんど着手されていない。 

また、即戦力としての良質な労働力を求めるのであれば、アメリカのように、世界中から優秀な学生を集めることが、一番手っ取り早いと思われるが、その決め手となる大学改革(秋入学の実施、大学の競争力の向上等)も、まだ緒に就いたばかりである。加えて、わが国には、まだ十分活用されているとは言い難い優秀で豊富な労働力が残されている。それは、世界で最も厚いと言われている専業主婦層の存在である。あるレポートによると、わが国の女性がOECD諸国の平均並みに社会で活動すれば、それだけでGDPが15%アップするという。この事の真偽はさておき、広義にとらえれば、わが国の人口(≒労働力)を増やす方策は、たくさんあるのだ。 

さらに、人口は何も定住人口である必要はない。観光客を世界中から集めれば、GDPは潤うのだ。まず、国の玄関となる空港の改革から手を着けなければならない。方法は簡単である。成田空港と羽田空港を1人の経営者が管理すればいいのだ。そうすれば、英国を真似て、羽田をヒースローにして、成田をガトウィックにすれば、効率が良くなるくらいのことは、誰でも気がつくはずだ。関西でも、1人の経営者が、関西空港、伊丹空港、神戸空港をマネージすれば、もっと効率的な運用が可能になるかもしれない。このように見てくれば、この国は人口を増やす本格的な政策についても、まだまだ手付かずの状態にあることがよく分かる。 

生産性についてはどうか。成熟した先進国においては、国全体の生産性を高める方法は、極論すれば、1つしかない。生産性の低い産業から生産性の高い産業に、労働力を自由に移動できるような環境整備を行うことが、それである。翻って、わが国の労働慣行はどうか。恐らく、先進国の中では、最も労働の流動性が乏しい国であることに、誰しも異論はあるまい。この点でも、わが国は、まだいくらでも改善の余地があるのだ。 

要するに、政治にせよ経済にせよ、わが国は20世紀後半の幸せな「高度成長&人口増加時代」から、21世紀の「低成長&人口減少時代」に見合った抜本的な構造改革が十分でないと思えてならない。逆に言えば、十分に行っていないということは、これから、いくらでもやるべきことがあるということだ。現在も様々な分野で改革の検討がなされているが、「低成長&人口減少時代」に見合った抜本的な構造改革が実行されれば、わが国の未来は明るいと考える所以である。 

高齢者がリスクマネーを投じるはずがない 

次に、およそ、経済を活性化させるためには、潤沢なリスクマネーの供給が必要不可欠である。わが国家計の金融資産は、約1,500兆円(GDPの3倍!)もあるが、大半が預貯金として眠っており、リスクマネー(≒株式)に投下されている割合は、驚くほど少ない(家計資産の中で株式の占める割合は6.0%、米国は32.6%。2012年、日銀調査による)。 

リスクマネーが供給されないより根源的な原因は、金融資産の3分の2が高齢者によって保有されているという現実にある。いかなる経済書を紐解いても、高齢者は元本の確実な債券投資や現預金を選好する、とはっきり書いてある。そもそも、高齢者がリスクマネーを投じるはずがないのだ。では、どうするか。高齢者の保有している金融資産を、若い世代に移せば、それで事足りると考える。 

例えば、市場メカニズムを利用して、相続税率を順次嵩上げして、数年後には100%にすると宣言し、その一方で若年世代(20代、30代)に対する贈与税率を順次低くし、数年後には0%にすると宣言すれば、高齢者の保有資産はスムーズに若年世代(子や孫)に移すことが出来るはずだ。このような政策は、消費拡大にもリスクマネーの供給にも役立つので、一石二鳥ではないだろうか。 

この他にも、わが国の将来について、実は明るい材料には事欠かない。わが国は、海洋面積で見れば、世界第6位の広大な領海をもつ国であって、決して小さい国ではない。石油や鉄鉱石こそ乏しいものの、水を始めとして豊かな資源にも恵まれている。また、人間が生きていく上では欠かせない食事についても、世界最高レベルを維持している。ミシュラン・レッドの1位が東京、2位がパリ、3位が大阪である。コンビニ弁当のコストパフォーマンス(あの値段であの内容の食事は、世界のどこにも見当たらないだろう)や、デパ地下の食材の豊富さや楽しさは、世界に冠たるものと言って差し支えあるまい。 

人間は、ホモ・モビリタスという別名を持つが、主要な移動手段である鉄道についてみれば、わが国の新幹線以上に、大量輸送性・高速性・安全性を兼ね備えた運行技術を持っている国が、一体、世界のどこにあるだろうか。地政学的に考えても、わが国は世界で一番豊かな北米と、これからの大きな発展が予想される中国・インド等の東南アジアとの中間に位置している(飛行機は北極圏を飛ぶので、わが国は、中継地点としては最適である)。 

以上、述べてきたように、わが国には、いわば手付かずの政策(余地)と豊かな資源が、まだ潤沢に残されているのだ。後は、私たちの未来である若者を育てることである。しかし、2012年の厚生労働白書が20代と30代の二人の若者の手によって書き上げられたという事実や、下記のような若者が育ってきていることを考え合わせると、中長期的にはわが国の将来には、何の心配も要らないとついつい考えてしまうのだ。 

「世界の中は、誰か一人の英雄によって変わるものではないけれど、みんなが少しずつ変わることによって、ゆっくりと、でも確実に変化する」 

「人生では生きられる時間も経験できることも限られている。その場その場で『これだ』と思ったことに賭ける以外に、やるべきことを見つける方法はあるだろうか?」

(『働きながら、社会を変える。』 慎 泰俊 (英治出版))

(文中、意見に係る部分は、すべて筆者の個人的見解である)

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