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  • 2013年06月30日 19:07

日本のサラリーマンは会社に守ってもらっているから脆い?

 少し前の記事ですが、『J-castニュース』に小田切尚登氏がナシーム・タレブの“Antifragile”(アンチ・フラジャイル、未邦訳)を読んだ後の自由感想のような記事(日本のサラリーマンが「世界で一番もろくて壊れやすい」理由)を書かれており、いろいろ興味深かったので、今日はこれについて少し。


1 記事の紹介

 最初に言葉の説明がしてあり、「フラジャイルとは英語で『もろい』とか『壊れやすい』といった意味の単語であるが、ここでは『リスクに対応できない』といった意味」としております。

 一言で言ってしまえば、このリスク対応についての欧米比較で、この世はリスクが沢山あるわけですが、「常にリスクを避けるように生活して」いる「無菌室でずっとすごし」て「免疫力を失ってしま」っている日本。

 それに対して、「子どもは軽微な怪我をして・・リスクについて学ぶ」様に、「ある程度のリスクに普段から直面することで、アンチ・フラジャイルになるよう学習して」、「試行錯誤をし続ける」アメリカという比較になっております。

 そして、日本は「会社が社員を守ろうとしてリスク対応力を失わせている」として、日本の終身雇用、政府による業界援助、銀行破綻時の預金補償、平和主義、殆ど落第のない学校教育などを挙げております。

 結果、「若い人が(不平不満を口にしつつも)海外に行きたがらないのももっともだ」としつつも、こうした慣行があるが故に、日本のサラリーマンは「安穏とした日々を送っている」わけで、「会社が社員を守ろうとすることが、かえって社員のリスク対応力を失わせている」としています。

 つまり、「そういうサラリーマンが一番フラジャイル」で、反対に「手に職をつけている料理人や大工はアンチ・フラジャイル」だというわけです。

 最後に「今の時代は過去のどの時代よりも変動が激しい」のだから、「『目先を穏便に過ごす』ことを重視する日本の伝統にどっぷりつか」ることなく、「アンチ・フラジャイル(壊れやすくない人間)を目指して、貪欲にリスクを取りにいきたい」としております。


2 日本の慣行

 言わんとすることはもっともで、かなりの部分は同意できますが、どうも微妙に同意しかねるところがあります。

 日本の慣行とされている小中学校での留年の少なさは私もかなりの違和感を覚えており、日本の「横並び主義」(悪平等)の典型的な例かと思っております(小中学生の留年を認めるべきか(秋原氏への疑問点))。

 終身雇用については、難しいところで、既に崩壊したという話をする方もおりますが、実際問題として、日本では正社員を解雇するにあたっていろいろな制限があり、雇用の流動性の低さから言っても、まだまだかなりの影響力を持っていると思います。

 結果、一度「正社員」の椅子を獲得してしまえば、有る程度は将来の見通しが立つことになります。そのため、こうした椅子を獲得できなかった方と比べて「身分制度」のようになってしまっている面もあります(日本の大学と「身分制度」の呪縛)。

 こうしたことの悪影響として、「正社員」という椅子を獲得した「既得権益者」が自分の利益を守るためだけに、「終身雇用」「年功序列」といった制度を固守し、非正規雇用の方々が不利益を被るという批判もなされております(田中文科相による大学の不認可と大学教員の雇用について)。

 ある意味今回の主張もその延長にあるもので、こうした会社に守られているだけの日本人サラリーマンでいることについて疑問を呈してるのかと考えます。


3 自分を鍛えること

 それに、いわゆる「ブラック企業」などの問題もあり、会社をどこまで信用して良いのかという話もあります(ホリエモンのブラック企業「辞めれば」発言は理解できるか?)。

 そうなると、「起業」や「転職」といった話が現実味を帯びてくるわけで、それらに対してサラリーマンがどこまで覚悟や準備をしてきているのかという話にもなります。

 私自身、会社に対して過度の期待を持ちすぎることはどうかと思っています。また、何が嫌なことがあったら、簡単に辞めてしまうことについては反対ですが、「一生何があってもここで頑張る」という発想にもあまり賛成できません。

 ただ、日本の強さはチームワークであり、会社という「組織」で対応した場合の強みはかなり高いものがあると思っています。中国で中国人を見ていると本当に個々の能力の高いものの、チームワークとなると今一だなという感想を持ったことがあります。

 実際、中国人の会社に対する帰属意識もそれほど高くなく、自分の能力を高めることが最大の関心事で、結果一円でも高い給料を出してくれればすぐに転職してしまうという現実もあります(中国の拝金主義(『朝日新聞』記事より))。

 それも1つの価値観であり、こうした方法で中国がここまでの経済発展を成し遂げてきたのも事実で、こうした慣行を一概に否定するつもりもありません。同様に私は日本の慣行も全否定するつもりはなく、そういう点で元記事には少し違和感を覚えたというのが正直なところです。

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