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都議選から考察する自民党の思わぬ死角

都議選の結果をアベノミクスのとりあえずの承認と解釈するのは妥当である。

都議選は都政の評価であり、国政ではない、という反論が可能だが、信ぴょう性は低い。

理由は三つ。

①都政では政党間に対立軸がない。(共産党以外、政策に違いはない。)
②議員提案の政策条例は都議会では発生しない。(実績では4年に1本。)
③地域に密着した課題の多くは地元の区市町議会議員の専管事項である。

そもそも各党候補の折込ちらしに政策の違いはほとんど見られなかったし、各党党首の応援演説もほぼ、直近の景気対策=アベノミクスについての言及に終始したことも考え合わせると、都議選の審判≒直近の経済政策の可否、と判断してもいいだろう。

もちろん、100点満点で安倍政権の経済政策が支持されているわけではない。

6/24のFNNニュースによれば、「アベノミクスを評価する」が51.8%、「評価しない」が37.2%だが、一方で、「景気回復を実感している」が14.9%、「実感していない」が82.3%と「評価」と「実感」の間にかなりの落差がある。

この辺りの感覚は安倍首相も把握していて、26日の記者会見では、こう言っている。

「私たちの政策は間違っていない。しかし、まだ実感が出来ていない。これが国民の正直な気持ちだ。景気回復を全国津々浦々に至るまで実感していただきたい。」

直近の目玉政策の支持と現状への政権の正しい認識。

安倍自民党には死角がないように見える。

ただ、よく見ると、これは非常に微妙なバランスの上に立った「安定」だということがわかる。

順を追って説明する。

1.景気回復の浸透は可能か

今まで実施されたアベノミクスの2本の矢、金融緩和と財政出動では、全国津々浦々=地方経済は景気の果実を実感できなかった。

残る3本目の矢、民間投資の喚起による成長戦略、つまり「産業競争力会議」が指導するような企業競争力の強化が地方経済の安定発展に貢献する可能性は低い。
企業競争力の強化とは効率性、生産性の追求であり、現状の地方経済はそういった価値観になじまないからだ。

地方経済は「医療」と「一次産業」という規制された業界によって成立している。

そうじゃない、規制を緩和し、生産性・効率性を競い合わせることで地方経済を活性化できる、という新自由主義的ロジックが成立するなら、アベノミクスは整合する。

現時点でその可否は判断できないが、この考えが支持を集めることができるのか、を検証することは参院選を占う上での判断材料になりえる。

2. 競争力強化政策は支持されるか

みんなの党という政党は(新自由主義的な)政策が一貫しており、失言・スキャンダルといったノイズによる支持の「揺れ」が少ないので、政策支持のベンチマークとして使える。

都議選ではみんなの党は1議席から7議席に躍進したと報道されるが、詳細を見てみるとそれほどの勢いはない。

ジャーナリストの団藤保晴氏によれば、昨年の総選挙比例区東京ブロックでの得票数と今回の都議選の得票数を比較したところ、民主100万→60万よりもみんな76万→30万の落ち込みの方が激しい。

都議選の低い投票率=浮動票よりも組織票の占有率が高くなり、みんなの党としては環境が悪化したことを勘案しても、この得票数は寂しい。

都市部で支持されるべき競争力強化政策がこの程度の支持しか集められないのは、政策としての魅力がアピールできていないことを示唆する。

まして、地方では一層得票率には結びつかないだろう。

都議選の前、青森、名古屋、さいたま市長選、静岡知事選など地方選で自民党が敗れたのは、「産業競争力会議」的なロジックが地方には通用しないこと、地方では別のロジックが優先されることを示している。

しかし、自民党の本来の強みは、この「別のロジック」をも包含しているところにある。

「産業競争力会議」が言うところの「抵抗勢力」たちは、この「別のロジック」を取り込むことができる。

ともすれば、安倍政権の使命は「産業競争力会議」の指導による「抵抗勢力」の一掃であるかのように報道されるが、実は現政権の強みは「抵抗勢力」を包含し、「産業競争力会議」と拮抗しているバランスの上に成り立っている。

なので、今後、第3の矢関係の報道が増え、「産業競争力会議」が「抵抗勢力」を一掃していくような勢力図が描かれていくと(自民党のみんなの党化)、自民党は力を失っていくことが予想される。

(NHKニュースでさえ、三木谷氏や新浪氏のインタビューを報道するが、「抵抗勢力」の発言は採り上げない。)

単純な力学だが、古い自民党を駆逐せよ、と声高に叫べば叫ぶほど、古い自民党に依存していた地方票は離れていく。

十勝毎日新聞によれば、当地では内閣支持率は24%程度(4月)であるらしい。(6/18朝日デジタル)

小泉政権時のように新自由主義的なトリクルダウン説に幻想を抱ける時代は終わっている。

自民党がバランスを失えば、参院選で思わぬ結果を招くことも十分可能性がある。


蛇足
「産業競争力会議」的なロジックと古い自民党的ロジックの違いを検証するためには、彼らが何を守りたいのか、に着目するのが良いと思う。

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