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【読書感想】ハプスブルク家

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紙の新書は、1990年8月発売。

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ハプスブルク家 (講談社現代新書)



こちらはKindle版。2013年5月に出たばかりです。

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ハプスブルク家 (講談社現代新書)


内容紹介

キリスト教が心なら、ハプスブルク家は背骨である。ヨーロッパの「宗家」ハプスブルク家の盛衰。王家の中の王家、超国家的な支配原理で陽の沈まない帝国を築いたハプスブルク家。カール5世、マリア・テレジア等の闘争と政略の700年を通しヨーロッパを考える。(講談社現代新書)



Kindleで読む本を物色していて発見。新書が出たのは、なんと今から20年以上前の1990年。僕がまだ10代の頃だったんですね。もしかしたら、どこかで一度読んでいたかもしれない……なんて思いつつ、Amazonのレビューの高評価もあって購入しました。

歴史に関する本でも、20年くらい前だと、まったく解釈が変わっていたりすることもあるので、ちょっと心配だったりもしたのですが、この本については、「東欧諸国の現在」が1990年までで止まっていることを除けば、「古さ」はほとんど感じませんでした。もっとも、僕はハプスブルク家に関する予備知識が乏しいので、歴史通にとっては「いまの解釈は違う」というところもあるかもしれませんが。

僕にとって、最近もっとも印象に残っている「ハプスブルク家」は、2012年9月に『カンブリア宮殿』で、司会の村上龍さんが村上隆さんがフィギュアの名門・海洋堂を「オタクのハプスブルク家」と評したことでした。

高校時代、世界史選択だった人ならば、「~家」として、「ハプルブルク家」と「メディチ家」くらいは、なんとか記憶に引っかかっているのではないかと思います。僕もせいぜいその程度で、もうひとつ!と問われたら、「吉野家」とか答えてしまいそう。

まあ、そんな与太話はさておき、この「ハプルブルク家」といえば、「政略結婚でヨーロッパを支配した名門貴族」として有名なのですが、著者は、その創成期から、「実質的な最後の皇帝」である、フランツ・ヨーゼフ帝までの歴史を、さまざまなエピソードを交じえながら語っていきます。

この新書、教科書としてだけでなく、歴史物語としてもかなり優れていて、これまで「名門」「謀略家」的なイメージしかなかったハプルブルク家の人々の「顔」がみえてくるんですよ、読んでいると。

 西洋史全体の動向において、ローマ教皇庁とならんでただ一つの王朝だけが、汎ヨーロッパ的な性格と重要性を常に失うことがなかった。ハプスブルク王朝である。

 この王朝はほぼ13世紀から今世紀初頭までの約700年間にわたって、ヨーロッパの政局にも文化の進展にも、絶えず関わり続けてきた。しかもその影響範囲は、中欧のオーストラリアばかりではなく、ポルトガルからポーランドまで、ドイツからイタリアそしてバルカン南部までと、ヨーロッパの全領域に及んだ。その国家には実にさまざまな民族が含まれていた。いわばゆるいヨーロッパ共同体あるいは国家連合として機能していた時代もあった。

 このような意味において、ハプスブルク家は汎ヨーロッパ的だった。このような性格をもった王朝は、ハプルブルク以外には存在しない。少なくともこの王朝は、700年余の永きにわたって子々孫々、脈々と君主の地位を継承し続けてきたのである。

 ハプスブルクの名が初めて歴史に刻まれるのは11世紀ころである。といってもそれは、起源をたどればということで、実質的には1273年に、この王朝の始祖とされるルードルフ一世が、神聖ローマ帝国の王位に即いて以後というのが妥当であろう。


 このルードルフ一世が、神聖ローマ皇帝に選ばれたときの状況を、著者はこんなふうに述べています。

 彼に白羽の矢が立ったのは、この男ならば他の君主たちよりも才能の恵まれ、懐具合も豊かで、皇帝にふさわしいと見なされたためでは決してなかった。事実はその逆だった。ハプルブルクのルードルフだったら、ボヘミア王やバイエルン公などと違って、所領はライン上流のわずかな地域にすぎず、財政潤沢というにはほど遠い。また君主の器でもない、と解釈されたにすぎなかった。

 このときハプスブルク家の惣領が選ばれたのは、その当事者自身でさえが寝耳に水といった感じで受け止めたほど、意外なことだった。その何よりの証左は、帝国の使者が、当時バーゼルの町を包囲していたルードルフのもとに選挙結果を告げにきたとき、彼が使者にいった次の言葉である。

「ひとを馬鹿にするにもほどがある。そのような戯れ言をおっしゃるものではない」


 著者は、「この言葉が事実かどうかは眉唾物」だと書いておられますが、「そういう伝説が生まれてもおかしくないくらいの(小さな)存在」だったということは言えそうです。

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