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  • Lilac

「グローバル化」は今、質的に大きく変容している

最近の私は、ずっと日本企業の「グローバル化」にこだわっている。仕事の合間を縫って、企業組織のグローバル化に関して長編の文章を書いているし、本業でも、企業を組織的にグローバル化する手助けになるものを主軸に仕事をしている。

どうも私は日本という国が好きで、自分がグローバルな経験をさせていただいても、この国を何とか再生したいと思っているらしい。そして、その際、長期スパンで日本の経済を立ち上げる方法は、二つしかない、と考えているのだ。

ひとつは、今までに何度も書いてきた。ベンチャーが立ち上がりやすく、成功しやすい世の中にすることで、次世代の経済成長の柱になる新しい産業を産み、育てていくこと。(参照:日本にシリコンバレーが必要な理由

もうひとつは、既存の産業において、既存企業をグローバルに拡大し、日本以外の市場、特に新興国をメインに収益を上げられるような組織に変えていくことだ。(突っ込まれる前に書いておくと、既存企業×新規産業は組織的事由で困難であり、ベンチャー×既存産業は余り成長の糧にはならない。)

MITに留学して、前者の必要性に確信を持ったけど、まだ力不足なので、評論家的なことしかできないな、と思っている。一方、後者は私がコンサルティングという仕事を通じて出来ることなので、こだわってるというわけ。(また、こうすることで、グローバル化の理想論と、現実の厳しさの違いが良くわかってくる)

1. グローバル化の質的な変化①−対象地域の変化



さて、読者の皆様には「いまさらグローバル化?」と思う方がいるかもしれない。「グローバル化」という言葉が良く使われるようになったのは、1990年代の後半。それ以来、企業はグローバル化を掲げて変化しようとしているからだ。しかし、今後企業に必要になる「グローバル化」は、かつてより使われてきた「グローバル化」とは、質的に大きく変わってきていると私は思う。

一つ目は対象地域の広がりの変化だ。「グローバル化」という言葉が流行り始めた1990年代後半は、どの先進国の企業にとっても、まだ米国やヨーロッパ、日本などの先進国だけが市場として捉えられており、先進国へ拡大することが「グローバル化」と呼ばれていた。当時のデータや資料を読むと、ROW(Rest of the World)という言葉が良く出てくる。市場は、米国、ヨーロッパ、日本、ROW(その他)というくくりでしか見られていなかったのだ。したがって、それこそ2006年頃まで、家電や自動車などの製造業でも、流通でも、金融でも、「米国やヨーロッパでのシェアを増やさなければ」という意識で、経営課題が設定されることが多かった。

当時は、中国は「世界の工場」と呼ばれ、安価な労働力を活用した生産拠点としか捉えられておらず、まだ市場として大きな存在感は持っていなかった。中国以外の新興国はほとんど注目されておらず、BRICという言葉すら存在していなかった。

ところが今後必要になる「グローバル化」は、もはや先進国への進出の拡大ではない。先進国市場とは質的に異なる未知の市場である、新興国への拡大である。新興国の経済規模は大きく増加し、安価な労働力の供給源としてだけでなく、市場としての魅力も高まってきている。2025年には新興国のトップ7カ国のGDPはG7、つまり先進国トップ7カ国のGDPを上回る。経済規模の伸びに比例して市場は拡大する。企業は新興国に進出して事業を構築するだけではなく、先進国とは質的に異なるこれらの地域のニーズを取り入れた製品やサービスの開発、設計をする必要が出てきている。

2.グローバル化の質的な変化②−組織のグローバル化



もうひとつの変化は、この地域の広がりの変化に伴って必要になる、組織そのもののグローバル化である。新興国の存在感が高まるにつれ、日本市場しか知らない日本人、または先進国の人間だけで企業活動を行うことが困難になっている。研究開発や経営も含む全ての機能で、グローバルな人材を活用する必要が出てきているのだ。これは、新興国の優秀な人材をどんどん採用して、活用できる組織にすることと、グローバルな視座を持った日本人を育てて、地域的に展開していくことの両方である。

かつての「グローバル化」は、海外の販売拠点を強化してシェアを上げるとか、生産拠点を海外に移し、現地の労働者に日本的な生産の真髄を教え込むなど、一部の企業活動のみをグローバル化することを指していた。ところが今や、販売や生産だけではなく、更に上流の活動である、製品やサービスの設計、研究開発、さらには経営における戦略の策定や組織の設計といった企業活動でも、グローバルな視野を持った人材を自国・他国問わずに活用する必要が出てきているのだ。

これには複数の理由がある。世界的にニーズの変化が急速になっているため、各国の市場を良く知っており、すばやい意思決定が出来ることが企業にとってより重要になってきていること。特に新興国という先進国とは質的に異なる市場が拡大し、製品・サービスの開発、設計から販売方法に至るまで異なるものが要求されていること。新興国が豊かになるにつれ、安く優秀な人材が輩出されるようになり、彼らを活用しないとコスト的に勝てなくなってきていること。こういった人材を活用し、コスト競争力のある新興国の新興企業が、徐々に製品やサービスの品質を上げ、新興国市場において大きく先進国企業のシェアを奪い始めていること。これらの動きを受けて世界の多国籍企業が企業活動や組織のグローバル化しており、この動きを更に加速させていること。このような理由で、もう日本人だけで日本企業をやっていく、というのが不可能になってきている、ということである。

製造業や流通など、国境なく世界市場を相手にしなくてはならない一部の産業で、グローバル採用とか、英語社内公用語化が行われるようになったのはこういう背景だ。しかし、単純に優秀な外国人を採用したり、社内で英語をしゃべったりするだけでは不十分なのは明らかだ。グローバルな視座を持ち、世界で活躍できる日本人の経営人材を育てる仕組み、「グローバル採用」した日本人以外の社員が、壁を感じずに活躍し、経営幹部として育っていく仕組み、そういったものをつくっていく必要がある。

じゃあそれをどうやってつくるのか、長期的には出来そうだが、すぐにでも組織をグローバル化させないと競合に負ける、どうすればよいか、既存の日本的な組織と両立するにはどうすればよいのか、などの疑問が出るだろう。それに答えるために、色々書いてます。(どこかで外に出そうと思うのでお待ちください。)

このブログ内の参考記事:
日本でも転職を前提とした就職が当たり前となる時代 (2011/01/29)
日本企業は社内公用語を英語にしないともう世界では生き残れない (2011/06/19)
日本にシリコンバレーが必要な理由 (2010/06/03)
飢えを忘れた日本企業 (2009/04/21)

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