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朝三暮四の経済学(国民はサル?)

 本日も、朝三暮四の経済学について考えてみたいと思います。

 先ず、朝三暮四は、「ちょうさんぼし」と読みます。外反母趾(がいはんぼし)とは違いますし、朝令暮改とも違います。

 因みに、国会で「朝三暮四」の意味を知っているかと聞かれて、「決めたことを直ぐ撤回すること」と勘違いして答えた総理がいたそうな。


 朝三暮四の意味は次のとおりです。

 中国の春秋時代に、宋の狙公(そこう)という老人が、猿たちに対し、トチの実を朝に3つ、暮れに4つやると言うと猿が怒ったために、では、朝に4つ、暮れに3つやると言うと、喜んで納得したことから、「目先の利益に惑わされてはいけない、結局は同じであるのだから」という教えを意味するのが、朝三暮四だというのです。

 しかし、何とかして景気を良くしたいと考える政治家たちは、むしろ朝三暮四の教えに反するようなことをしたがる。つまり、国民に朝三暮四の教えを説くのではなく、国民を猿みたいなものだと思い、国民の錯覚を利用しようとする、と。

 政治家が朝三暮四の教えに反するような行動に出るとすれば、逆に朝三暮四の教えに気が付くべきだいう経済学者がデイビッド・リカードということになるでしょうか?

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 リカードの等価命題というのをご存じかと思うのです。

 幾ら減税によって政府が景気を刺激しようとしても、国民が、今減税されても、その分将来必ず増税されるであろうと予想するならば、減税による景気刺激効果はないという考え方なのですが‥

 ご存知ですか?

 話は横道に逸れますが‥実は、リカード自身がそのような考え方を主張したのではないのです。

 本当ですよ。しかし、多くの人々は、リカードがそういう説を主張していたと信じている。何故信じるのか? それは、そのような問題が各種の試験に出題されるからであり、そして、リカードの「経済学および課税の原理」を実際に自分自身で読んだことがないから、そう信じるだけの話です。

 では、何故リカードの等価命題などと言われるようになったかと言えば、リカードの後の世代のブキャナンという学者が、国債の発行は税金を課すことと本質的には同じであるというリカードの考え方を発展させて、そのように呼んだだけのことなのです。

 本題に戻ります。

 リカードが実際にリカードの等価命題を主張したかどうかは別として‥そのリカードの等価命題と呼ばれるものは、果たして正しいのか?

 さあ、如何でしょうか?

 もし、それが正しいのであれば、日本だけでなく世界各国で行われている景気対策としての財政出動は、殆ど意味がないことになってしまいます。

 だから、恐らく政治家の多くは、リカードの等価命題なんて正しい筈がない、と考えるのでしょう。

 上げ潮派なんて呼ばれる政治家だったら、なおさらですよね?

 だって、そうやって政府が財政出動をすることによって、先ず経済を成長軌道に乗せ‥そして、それが成功すれば税収が増えるから、将来の増税につながるとは限らない‥むしろ増税の必要性は薄れる筈だ、と考えるからなのです。

 国民としては、減税をしてもらったのにその対価を将来支払う必要もなく‥むしろ、その減税が将来の減税につながる可能性があるというので、本当に感謝感激雨あられ!

 でしょ?

 まあ、国民がそこまでの出来過ぎた話を信じなくても、しかし、例えば減税をすると言えば、それに反応する向きがあるのも事実。

 自動車を購入する際に減税をすると言われれば、少なくても、そろそろ自動車を買い替えようと思っていた人々は、減税に合わせて自動車を買い替えるでしょう。だとすれば、それなりの効果があるようにも見える。

 しかし、そうやって一時的に自動車の売り上げが伸びても、減税の期間が終了すれば‥否、減税の期間が終了しなくても、つまり減税を半永久的に続けても、買い替え需要のブームが過ぎれば、今度は反動で売れ行きが落ちてしまうでしょう。

 そんなこと、自動車メーカーは十分に承知している。

 つまり、自動車購入に対する減税措置や補助金制度も、本当に需要を喚起するというよりも、需要の先食いをするだけで、結局売り上げの変動の波を大きくするだけだ、と。

 で、そのことに気が付くならば、朝三暮四の教えやリカードの等価命題が、まっとうなものだと思えてくるでしょう。

 しかし、理屈はともかく今の政権は、何が何でも民間企業の設備投資を増大させなければならない!

 何故か?

 というのも、成長戦略のなかで、民間企業の設備投資の額を増やすと宣言してしまったからなのです。しかも、数値目標を示して。

 だから、どうしても設備投資を増やしたい。そして、もし設備投資が増えれば、その分確実にGDPが増え、成長率が高まる。

 そうなれば、国民はハッピーになるだろ? 気分はワイルドになるだろ? という考え方でいるのでしょう。

 確かに、投資減税を実施することにより設備投資が動き出せば、経済成長率は上がる。それはそのとおり。

 しかし、それでハッピーエンドになるとは必ずしも言えないのです。というのも、そうして民間設備投資が増えるのはいいのですが、もし、海外の輸入がこれから先も回復しないのであれば、生産能力ばかりが拡大して、却って需給ギャップが大きくなってしまうからなのです。

 需給ギャップがこんなにあるのだから財政出動すべきだと散々主張していたのはどこのどなたでしたっけ?

 でしょ?

 投資を増やすために減税をするのならば、実は住宅投資減税でもいいのです。しかし、いい加減に学習して欲しいと思います。住宅投資減税を行っても、住宅投資の波を大きくしただけではなかったのか、と。

 最後に、強調したいと思うのですが、私は、政府が、設備投資が幾らであるべきだなんて数字を示すこと自体が大変におかしな話だと思うのです。

 だって、日本は、市場経済の国ではないですか? アメリカほど市場経済の原理を信奉する訳ではないにしても、どちらかと言えば市場経済の国であるのは確かなことなのです。

 それなのに政治家がいちいち設備投資の額はこれ位が良い、だなんてどうして口を出すのでしょう?

 設備投資をしたはいいが、結局設備が過剰になってしまったら誰が責任を取るというのか?

 設備投資をしたら税金を負けてもらえるのだから、設備投資をするべきだ、なんて誰かから勧誘されて‥

 バブルの時にも、銀行のローンを借りマンションに投資すれば、税金が安くなりますから、なんて銀行に言われて大損した中小零細企業、或いは個人がどれだけ出現したことか?

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