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バーナンキ議長の本音と建て前が分からぬ黒田総裁

 バーナンキ議長の発言が注目を集めています。それにしても、今回のNHKの熱の入れようはただごとではありません。

 まあ、株や為替に関心のある方なら、バーナンキ議長の発言に注目するのは当たり前とは思うのですが‥一般の方々にとってはFOMCと言っても、或いはバーナンキ議長と言っても、恐らくチンプンカンプンではないのでしょうか?

 それに、NHKのアナウンサーの方たちは、本当に分かってニュースを報じているのでしょうか‥なんて少し失礼なことを言って、失敬。

 いずれにしても、市場関係者がバーナンキ議長の発言に注目していたのはそのとおり。何故かと言えば、FRBが今後、資産購入措置、つまりQE3の規模を縮小する時期が早まれば、株価や為替に大きな影響を与えると思われるからです。

 ところで、本日解説をしたいのは、バーナンキ議長が何を言ったかについてではないのですが‥でも、そのことについても一応触れておきましょう。

<バーナンキ議長の発言要旨>

・国債等の資産購入措置について、2013年末までに規模の縮小が始まり、そして2014年中に完全に撤廃される可能性がある。
・規模縮小の時期等については、具体的な計画がある訳ではなく、今後の経済状況次第。
・規模縮小は、ブレーキを踏むというより、アクセルを緩めると解釈すべき。
・ゼロ金利政策は、暫くは続く見通し。失業率が6.5%を下回っても自動的に金利を上げる訳ではない。

 ということで、今回初めて国債の購入措置の規模縮小が年内にも始まる可能性について、バーナンキ議長が発言したために、長期金利が上昇し、株価は下落した、と言うのです。

 いずれにしても、2012年9月に始まったQE3の出口戦略がそろそろ始まろうとしている訳ですが‥それについて、貴方はどのようにお感じになるでしょうか?

 連銀による資産購入措置が縮小ないし廃止されることになれば、長期金利が上昇するであろうから、景気回復に冷や水をかけることになる、なんて考えている人が大勢いるかもしれませんね。

 貴方もそう思いますか?

 では、質問をしたいと思いますが、それでは米国では、QE3によって長期金利が相当引き下げられていたのか?

 確かにバーナンキ議長は、QE3を採用するに当たり、そのような発言をしていました。長期金利を引き下げることにより住宅投資などを促進することができる、と。

 そして、その発言を真似したのが我が国の黒田総裁であったのです。短期金利は、ゼロ金利政策を採用しているので、それ以上下げることはできないが、長期金利はまだ下げることが可能であり、従って、日銀が大量に国債を購入することによって長期金利に影響を及ぼし、民間の投資活動を刺激することになろう、と。

 しかし、日本の場合にはむしろ金利が上がってしまった。だから、黒田総裁の顔色が最近冴えない。そうですよね?

 アメリカでは、余りそのような話を聞きません。だとすれば、思惑通りに長期金利を低く抑えることに連銀は成功していたのか?

 グラフをご覧ください。10年物国債の利回りの推移を示しています。

 画像を見る

 アメリカでは、QE3を採用した2012年9月13日の10年物国債の利回りは1.75%だったのです。それ以降、長期金利は着実に低下した、或いは、低い水準にとどまっていたと言えるのでしょうか?

 答えは、ノーです。むしろ、QE3を実施する以前の方が、長期金利は低かったと言えるのです。

 長期金利をそう簡単にコントロールすることができないことなど、バーナン議長は最初から分かっていたのです。そして、市場も、長期金利が下がることをそれほど切望していたとは思えません。

 だから、米国では、長期金利が上がっても失望の声が上がることはなかった、と。

 というよりも、QE3の前のQE2を実施たときに、むしろ金利が上がる現象が起きていたので、そのようなことが起きるのは十分予想できていたと思われるのです。

 では、長期金利を引き上げるかもしれない資産購入措置、つまりQE3を何故実施したのか?本音はどこにあったのか?

 それは、大きな声では言いにくいが、結局、株価を上げる効果があり、株価が上がれば景気回復に一役買ってくれるという願いがあったからだと思うのです。

 それに、失業率がなかなか低下しないなか財政の崖の問題が差し迫っていたので、何かをやらない訳にはいかなかったというのが実情なのではないでしょうか。

 そして、そのことは市場が一番よく承知していた。そして、株価は思惑通りに上がり続けた、と。

 しかし、実体経済の動きと乖離した形で株価だけが上がるのは、結局バブルを再燃させるだけの話で、後々、FRBの政策運営が批判される懸念があるのです。

 しかし、だからと言って、失業率の水準がまだ歴史的にみて高水準にあるなかで緩和策を転換することも考えにくい。

 バーナンキ議長の本音としては、ここらで物価が上がってくれれば、緩和策を転換する言い訳ができるのに、というところではないでしょうか。そろそろパンチボウルを下げないと、後々FRBのダメ議長として名を残すことにもなりかねない、と。

 そのような心情を黒田総裁は理解しているのでしょうか?

 それどころか黒田総裁は、バーナンキ議長が単に建前で言ったことを本気にしてしまいました。さらに、異次元緩和策の発表時には、長期金利を引き下げることを余りにも強調してしまったのです。

 そうですよね?

 そして、だからこそ思惑に反して長期金利が上がってしまったことに、少し狼狽えているのですよね。

 要するに、中央銀行は、長期金利をそう簡単にコントロールすることなどできないのです。

 そして、バーナンキ議長は、それについて十分理解していたにも拘わらず、長期金利に影響を及ぼすことができるような振りをした。しかし、本当の狙いは、長期金利を低下させることではなく、株価を支えることであった。

 一方の、黒田総裁は、米国の建前を本音と勘違いしてしまった。本当に長期金利に影響を及ぼすことができると思った。

 いずれにしても、米国はそろそろパンチボウルを下げますよと示唆し始めている訳ですから、株価上昇の勢いが緩やかにならざるを得ないと予想する市場関係者が増えると思われます。

 では、米国の株価がそのような動きを示すとき、我が国のマーケットはどのように反応するのか? 多分、我が国の株価も、それにつられた動きをする可能性が高いと思いますが‥でも、株価のことなど、誰にも分からないのです。

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