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  • Lilac
  • 2010年05月28日 03:59

電子書籍でデバイス各社はどうすべきか

前回は、アプリレベルで私の欲しい電子書籍について書いた。(参照記事: My Life in MIT Sloan−わたしの欲しい夢の電子書籍アプリ)これは、今の電子書籍のボトルネックがアプリとフォーマットにあることを踏まえ、日本企業が巻き返し図るのに、どんなアプリを作ればいいかを提案する意味合いで書いた。

さて、この記事では、デバイス各社がアプリやフォーマットに頼らず、デバイスのイノベーションだけでの電子書籍マーケットでの巻き返しが可能か、を考えてみる。デバイスで圧倒的な機能のものが出せれば、iPadがKindleを追いやっているように、巻き返しは可能かもしれないからだ。

一度原点に立ち戻って、「紙の本」の価値を考えてみる。結局物理的に紙の本を越えるユーザビリティのものが無いってのも大きい。最初は検索とか、ソーシャルネットワークとか、「紙」では出来ないユーザビリティだけでも良いが、そのうち「紙」のユーザビリティを実現させないと、真の破壊的イノベーションにはならない。

紙の本って便利なんですよね。すぐ書き込めるし。本の厚さがあるってのも重要で、後で読み返すとき大体どの辺だったかとか、大体感覚的に分かる。付箋を沢山貼っておいても、どの付箋がどれだったかって分かってるんだよね。ぱらぱらめくって次のページにいけるのも、とっても便利。薄い冊子だと、思い通りに曲げられるってのも便利なんだよね。

どんなに電子デバイスに慣れた世界から来た人でも、「本の読み方が分かりません」なんて、このYoutubeの映像みたいなことは絶対に起こらないだろう。

これはノルウェー語のコメディで、未来から来て「本」を一度も読んだことが無い人が、本の開き方とか、ページのめくり方とか、保存の仕方(笑)が分からず教えてもらうって話。



そういう便利な紙の特質を考え、どこがアプリでどこがデバイスで実現できる機能かをつらつら考えると、アプリとデバイスのソフトウェアの機能で実現できることがまだまだ沢山ある。

例えば本の厚さがあって、位置がすぐ分かるとか、付箋見て分かるって機能。これは、iPadレベルのデバイスがあれば、実はアプリとフォーマットの機能として埋め込める、と思った。画面の両端を、本の厚さをあらわす機能として取っておいて、そこをめくると別のページにワープできるようにしておけばいいんだよね。良くめくるページがすぐ分かるようにしたければ「電子手垢」機能をOnにすればいいわけで。そりゃ紙の本とは違うけど、アプリレベルでも究極まで近づけることは可能だ。

そうすると、どうしてもデバイスじゃないと実現できないことは、薄さ、軽さ、折り曲げられる、とかに集約してしまう。

「圧倒的な性能のデバイス」を出して勝っていくためには、やはり圧倒的に薄くて軽くないとダメだよね。かつてソニーのトランジスタラジオがRCAのラジオを敗退に追いやったように。

じゃあ、圧倒的に薄くて軽いってナンだろう、と思うと、例えばこんなのがある。この映像は、2年前のCESに出展された、SonyのOLED(有機EL)厚さわずか0.3ミリで自由に折り曲げ可能。(CES:毎年1月にラスベガスでやる世界最大の家電の展示会。日本のCEATECに近い)



これ、2年前の話だけどその後Sonyでどのような開発が進められてるのか知らないけど、同様の研究は、恐らくデバイス各社で進んでいて、ネックは耐久性とか大画面化とか量産とかにうつってきてるだろう。またディスプレイがいくら薄型化しても、バッテリーとかメモリとかを薄型化できない限り、全体として薄くならない。そう考えると、デバイス全体を「紙」のようにするのはボトルネックが沢山ありすぎて、この5年の間で実現させるのは難しいように思える。もちろん両面化とか、軽く薄くとか、出来ることは沢山あるが、他の追従を許さない圧倒的なデバイスを発売するのって中々難しそう。

こうやってつらつら考えていくと、アプリケーションやデバイスに載ってるソフトの機能(めくるとか)で、紙の本のユーザビリティに近づけられるところがまだまだたくさんあるんだよね。全体の性能を上げるための「ボトルネック」はアプリとかソフトウェアなのだ。デバイスはこういうものと垂直統合することで、デバイス全体としての価値を上げないと、やはり電子書籍市場でも勝てないのだ。

こういうことを言うと、「デバイスとソフトの垂直統合なんて10年前から言われてるでしょ?」という声が聞こえてきそうだ。でも、日本企業から出てる電子ブックリーダー、全然出来てないじゃないの。薄いとか軽いとか、デバイスの機能だけを売りにして売ってるのは何故なの?まだデバイスの機能だけで勝てるとか思ってるからじゃないの?

こんな電子書籍一つとって、ユーザの視点で分析してみたって、欲しい機能の大部分はアプリとソフトウェアレイヤーで解決できる話なのは明らかなのだ。デバイスとソフトの垂直統合を進めないとならないのは、デバイスの機能だけでは絶対に巻き返せないから。デバイスの機能で巻き返したいなら、本当に紙みたいに薄くて軽い圧倒的なデバイスを出すしかないが、それはまだ出来ないでしょ。

今後、日本の電機メーカーが電子書籍マーケットに居続ける・参入するとしたら、上記や前記事で議論してきたようなiPadのiBookなど越える圧倒的なユーザビリティをもつアプリを開発し、それをサポートしてかつ著作権機能を持つフォーマットを日本だけでなく世界の出版社と合意して普及にこぎつける必要があるだろう。デバイスとしては、第三者アプリは無いけど、WiFiあるし、メール、ネット、Youtubeを見られるとかいうiPhone的機能は基本として身につける。

ちなみにフォーマットは最終的にはデバイスやアプリとのモジュール化が可能なように設計しておき、仮にデバイスで大負けした場合でも、Adobeみたいにフォーマット化のソフト+CDみたいに本販売時のライセンス料、で食べていけるようにしておかないとダメ。

iPadと対抗するには、AppleがiPhoneで育てた数々のThird partyアプリが無いのが痛いが、こういうのはそのうち他の電機メーカーとかマイクロソフトみたいなとこと協調しつつ、Appleに対抗するThird partyアプリプラットフォームを作っていくしかないように思う。出来ればそんなことを考えないで済むように、iPadがまだ電子ブックリーダ+携帯みたいな価値しかない今のうち、侵食を食い止められるように動くしかない。

ということを昨日つらつら考えてるうちに、自分がMITにいて技術者にリーチ出来る間に、そういうアプリとフォーマットを作る会社を立ち上げようかと何度も思うんだけど、やはり何度も書くけど、アプリだけでは事業の規模に限界があるし、大きなことは出来ないんだよね。やっぱりデバイスか、コンテンツを持つ大企業と一緒にこういうことやりたいな、と思うのであった。

電子書籍についての過去記事

My Life in MIT Sloan−わたしの欲しい夢の電子書籍アプリ 2010-05-25
My Life in MIT Sloan−電子書籍はアプリとフォーマットを制したものが勝つ 2010-05-24 ←オススメ
My Life in MIT Sloan −アップルが電子書籍で最初に教科書を狙う理由 2010-01-27
My Life in MIT Sloan −日本の出版社が直面するイノベーションのジレンマ 2010-01-26

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