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ガレージセールからヒントを得たECサイト「Bonanza」

Amazon.comやeBayがeコマース業界のみならず世界市場で強大な力を持つ今、業界への参入者はさまざまなアイデアを駆使して顧客を獲得しなければならない。以前ご紹介した「Material wrld」は、利用者同士がサイト内でコミュニケーションをとりながら洗練された出品物を取り引きするというアイデアで顧客を獲得した好例だった。

今回取り上げる「Bonanza」も、利用者客同士が直接コミュニケーションをはかれるシステムによって大きく支持を受けたマーケットプレイス型eコマースだ。同サイトはお互いの情報を参照しやすいことや、出品者と買い手が実際に会って取引しているような使い心地の良さで、大きな人気を呼んでいる。

2008年にインターネット・ビジネス向けのコンサルティングを行う企業からAmazon、eBayそれぞれのベスト・フォロワーとして選出された。

また、2013年にはEcommerceBytesが行った1万人以上のネットユーザーへの調査で、AmazonやeBayをおさえて「もっとも安心して使えるサイト」として絶賛され、今CNNをはじめとした各メディアからも注目を集めているのだ。



モノを大量に売ることの煩わしさ

Bonanzaの創設者であり、CEOを務めるハーディング氏

BonanzaのCo-Founder&CEOの名はWilliam Harding(以下ハーディング)氏。彼がサイトのコンセプトを思いついたのは、引っ越しの準備に追われていたときのことだった。

同氏は必要ない家具や、身の回りのものの全てをネットで処分しようと考えていた。ところが、ネットでは小出しで出品するしか選択肢がなく、全てを売り切るには相当な時間がかかってしまう。eBayやAmazonで売りたい家具を全てリストアップする作業はあまりにも面倒だった。

「一度にたくさんのアイテムを出品できれば、手間はもっと少なくて済む。他にもそんなシステムを必要としている人がいるはずだ」

ハーディング氏は、自分でそんな細かな要望にも応えられるECサイトを作ろうと決意する。その時彼の頭に浮かんだのが、ガレージセールの販売方法だった。

ガレージセールとは1970年代に米国で盛んとなったリサイクル運動のひとつで、いらなくなった家具などを自宅のガレージや庭先で自由に販売するものだ。現在の日本ではフリーマーケットとほぼ同義であるとされており、国内各地で開かれるフリーマーケットやガレージセールのイベントは、多くの人で賑わいをみせている。

このガレージセールの特徴は、店先に並べられた商品に目移りしてしまう点だ。買うつもりではなかった商品にまでついつい手を出してしまうようなこのシステムを、自分のサイトにも取り入れたいとハーディング氏は考えた。

同氏はサイトを作りあげるのに、たった1人でプログラミングやサイト構築を行った。後にBonanzaの会員第1号になる当時70代の祖母にも使えるようにと、シンプルなサイト作りを心掛けた。

サイトがロンチされてからしばらくして、3000人のユーザーが登録。熱心なファンの口コミにより、その数はまたたく間に増加していったのである。



フレンドリーなBonanzaのシステム

それでは、Bonanzaの使い方を見てみよう。

同サイトはユーザー同士が安心して取引出来るよう、IDや名前の認証、チャットなどを設けている。出品されているアイテムは幅広く、電化製品からアンティークな食器、インテリア、絵画などなかなかユニークな品揃えだ。

なお出品者は、出品物が売れた時に500ドル(約5万500円)未満のアイテムには各商品の3.5%、500ドル以上の時には各商品の1.5%プラス17.5ドル(約1768円)の使用料を支払う必要がある。

ユーザーは登録時、所在地やプロフィールを詳細に書かなければいけない。オンライン上でやりとりするユーザー間の信頼度を少しでも高めるために、取引相手に関する詳細な情報を公開しているのである。

また、Bonanzaを利用すると、買い手からの評価や「ユニークなアイテムを売るユーザーの称号」などを示す多種多様なバッジがその都度もらえる。バッジは人気のある売り手やユニークな売り手が一目で分かる、簡単な指標となっている。

サイト内で欲しいものを見つけて商品を選択すると、売り手ユーザーのページに飛ばされる。ユーザーページは「アイテムリスト」になっており、選択したもの以外の商品がカタログ形式で値段とともに表示される。ガレージセールをヒントに作られた、買い手の興味を惹き付ける仕組みだ。

気になる商品を見つけたら、リアルタイムチャットで出品者に商品の詳細を訊ねたり、値段の交渉などのやりとりを交わす。出品者の対応が良くない場合、買い手はネガティブな評価をつけることができるので、細心の注意が必要だ。

ガレージセールの場においても、訪れた顧客は出店者と何気ない会話をしたり、商品の値切りについて話す機会がある。Bonanzaはそうした顧客と出品者がリアルタイムでコミュニケーションを取る「商いの臨場感」をオンライン上にうまく演出している。

また、ユーザーがeBayや「Etsy」にアカウント登録していれば、それぞれのアカウント内で出品している商品をBonanzaにもそのまま追加できる「商品インポートシステム」も用意している。複数のサイトを利用している出品者には嬉しい配慮だ。

これにより出品物もスムーズに次々追加することができるようになり、多くのユーザーが煩わしいと感じていたアイテムリストアップの問題も解消することとなったのだ。

このように、Bonanzaのユーザーに対する配慮は随所に見られる。Mashableでも高く評価されたように、実にフレンドリーなサイト構造となっていることが分かる。



顧客としての「あったらいいな」を形にする

自分が必要なら誰か他にも必要だと感じる人がいるに違いない」と読んだハーディング氏。サイトがロンチされた後すぐに登録した3000人のユーザーは、ハーディング氏がアイデアを思いついた当時と同じく、「たくさんの商品を一度にまとめて売却できる」ことをECサイトに求めたという。

そんな熱心なユーザーの地道な口コミが実を結び、サイトはヒットしたのだ。彼らにとってBonanzaはかゆい所に手が届く、愛すべきサイトとなった。

顧客に使いたいと思わせる前に、自分が利用して満足できるのか冷静に自己分析する能力が、経営者には強く問われている。そして、自分の考えに賛同するユーザーが現れた時にはじめて、結果が伴ったと言えるだろう。

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