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引きこもり、認知症患者を強制入院させる法

株価や為替の動向が政権の支持率に連動するかのような見方が最近では支配的だが、本来、政治の優先順位の最上位にそういった経済指標を持ち込むのは筋違いだ。

なぜならば、株価や為替動向を短期と長期に分けた場合、短期間の動きは我々の生活に与える影響を軽微であり、長期間の動きは予測不可能だからである。

では、我々の生活に確実に影響を与え、なおかつ、予測の確度がきわめて高い指標はあるだろうか?

例えば、人口動態はその条件を満たすと言ってよい。

国立人口社会保障・人口問題研究所の人口動態予測によれば、2010年から30年後の日本の総人口は16%強減少する。生産年齢人口(15~64歳)は29%減少し、65歳以上の人口は31%増加する。

今後、経済成長の持続によって暮らしが良くなるかどうかはわからないが、超高齢社会はほぼ確実に到来する。

では、超高齢社会はどういった形で問題化するのか?

内閣府の予測がナマナマしくておもしろい。

ざっくばらんに翻訳して紹介する。

①世代間・世代内格差の存在
=社会保障負担の現役世代への先送りが持続不可能になる。

②高齢者の満たされない活躍意欲
=定年退職後にやることがなくなり、無気力になる人たちが増える。

③地域力・仲間力の弱さと高齢者等の孤立
=無気力になるうえに、身体機能が低下し、介護が必要になっても誰も助けてくれない「困ったこと」になる人が増える。

④不便や不安を感じる高齢者の生活環境
=資産もちの高齢者の心身機能が低下すると、砂糖に群がるアリのように、「悪い人」がやってきて、尻の毛までむしりとられる。


こういった問題に対して国はどういった対策を考えているのかは(介護保険拡充など)いろいろとあるだろうが、なかなかエグいソリューションを考えているようでもある。

現在、国会で審議中の精神保健福祉改正法案のキモは、本人に病気の自覚がなくて入院に同意のない場合、専門医の判断に加え、優先順位順に保護者の同意で強制入院できる、という従来の「医療保護入院」の要件を緩和し、保護者ではなくても家族等(3親等以内)の誰でもいいから同意があれば、入院させられるという点にある。

どういうことか?

自分が精神を病んでいるという自覚のない場合でも、医師が入院が必要だと判断すれば、たとえ、自分や自分の両親がそれを拒んだとしても、ほとんど連絡のない甥や姪が同意すれば、力づくで精神病院にブチこまれる。

しかも、退院時の請求者もこれまでは本人か保護者に限定されていたが、3親等以内の家族に拡大している。

いくつかの具体的なケースを想定してみよう。

ⅰ)資産のむしりとり
業界ではよくある話だが、資産もちの高齢入院患者にわけのわからない親類が群がってきて、他の親族をシャットアウト(電話もつながせない)し、土地も年金も遺産もすべてしゃぶりつくす例。

ⅱ)引きこもりの強制入院
世間体などから両親が反対していた「引きこもり」を親族の意向で入院措置にもってかれる例。(ひきこもりを破瓜型統合失調症を診断するのは難しくない。)

ⅲ)認知症患者の社会的入院の促進
認知症患者を入院させやすくすることで、「やっかいもの」を集中管理する。


公では、在宅医療の推進が叫ばれ、マスコミも礼賛記事やニュースを乱発しているが、実際はヒト、サービスの連携、カネの配分が難しく、遅々として進んでいないし、今後も(24h家政婦とか親族の協力が得られない一般人には)現状の介護保険でカバーできる見込みはない。

じゃあ、どうやって高齢者を管理するの?と考えれば、もう、集中管理しかない。

精神疾患の強制入院要件の緩和は、「病院」からもっと安価な「施設」に移るかもしれない。

いたるところに安価で低サービスの「姥捨て施設」を作り、お年寄りはそこで集中管理する。

そういった未来図はそれほど荒唐無稽とも言えないのではないか。

所詮予測不能な経済成長云々の議論を毎日のように採り上げるスペースがあるのなら、確実に到来する老人地獄絵図のソリューションを少しでも考えていくべきだと思う。


蛇足
この改正法案、昨年6月に厚労省検討チームが公表した「入院制度に関する議論の整理」の内容を大きく裏切っている。
なぜこんなことになったのかは謎。

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