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人権人道大使という重い職務

上田秀明人権人道大使の国連拷問禁止委員会での発言問題が世間を騒がしている。発言が適切でなかったことは確かだが、これについて該当部分のやり取りだけを面白おかしく取り上げて、「国際的大問題だ!」「辞任すべきだ!」といった短絡的反応のみを繰り返すことは、あまり建設的でないように思う。そこで、話題となっている「人権人道大使」という職務について、少しだけ考えてみたい。

まず、このポジションの設置と大使任命の経緯については、こちらのまとめが参考になるので一部抜粋して紹介したい。

 人権人道大使という仕事は、世界に日本の人権外交のありようを示すためには必要な仕事である。国際刑事司法による「法の支配」を目指す国際社会の潮流に圧され、日本政府は2007年、これまで兼任されていた担当業務でしかなかった人権人道問題大使を全権大使の地位に格上げした。こうして初めて日本に「人権人道大使」という肩書きが正式に生まれた。初代の人権人道大使に任命されたのが故・齋賀富美子駐ノルウェー国兼アイスランド国大使だった。

 斎賀氏はその後、とくに拉致問題を含む北朝鮮に関する人権問題等を担当し、国際刑事司法に関する知見を高めた。その2年後、故・斎賀氏は国際刑事裁判所の初代日本人判事として指名され当選を果たす。(中略)しかし、この部署の仕事は激務だった。次から次に検討案件が舞い込んでくる。そして2009年3月、二度目の当選を果たした斎賀判事は急逝する。

 その故・斎賀初代国際刑事裁判所判事の後任となったのが、上田秀明人権人道大使である。

この人権人道大使の職務の事務を外務省内で主に担当するのが総合外交政策局の人権人道課だ。外務省の人権外交のページを見てみたら分かるように、人権問題に関連してかなり幅広いテーマを扱っており、担当する国際会議の場も多い。以下が定期的に行われる国連関係の会議だ。

・国連における人権フォーラム(Charter-based body)

  • 国連総会
  • 国連総会第3委員会
  • 国連人権理事会
  • 国連婦人の地位委員会

・国際人権条約体(Treaty-based body)

  • 自由権規約委員会
  • 社会権規約委員会
  • 人種差別撤廃委員会
  • 女子差別撤廃委員会
  • 拷問禁止委員会
  • 児童の権利委員会

今回、話題に上がった拷問禁止委員会は国際人権条約体のなかの一つであり、先日は社会権規約委員会で慰安婦問題が一つのイシューとして取り扱われたことを朝日新聞などが報道していた。私が以前に紹介した各国の人権問題を総合的に審査する「普遍的定期審査(UPR)」も、上記の国連人権理事会内で行われる。また、北朝鮮による拉致問題を国際舞台で提起するのもこの部署だ。

人権人道課とは、私も仕事上の協力関係にあり、日常的な付き合いがある。職員はとてもよく働いており、日本の人権問題に関する取り組みを各国に説明するために日々努力している。おそらく、その職務の難しさは、法務省や厚生労働省など国内の人権問題を直接扱う部署ではないため、各国連委員会でのやり取りを日本の担当部署に伝え、逆に、国内の他省の取り組みを各国に説明するという伝達役に徹するしかないという点にあると思う。

さらに人権外交という日本においてはマイナーなテーマであるため、メディアや国民の注目度も低く、二国間外交を伝統的に重要視してきた外務省内での位置づけも想像される。人権人道大使も2007年にようやく設置されたポストだ。おそらく、多くの国民は初めてその名前を聞いたのではないだろうか。

橋下市長の慰安婦発言の際にも、日本の政治家やメディアなどの人権外交に対する理解の低さが露呈したが、この分野はもっと重く扱われて然るべきであると思う。拉致問題は担当大臣を任命しているくらい重要視しているわけだが、正規のルートで国際世論を喚起するのは人権人道大使の仕事だ。慰安婦問題も日本が抱える外交課題という点において非常に重要なイシューである。「人権という普遍的価値」を眼鏡にして、日本という国が海外の専門家、オピニオンリーダーにどう見られるかは、上記の国際外交の舞台においてなのである。

他のポストと比較すると、ニューヨーク国連代表部の国連大使などはメディアの注目も高く、省内でも重きが置かれている。国連大使とまではいかなくとも、ジュネーブ国連代表部の全権大使に準ずるくらいの扱いはあってもよいのではないだろうか。人権人道大使は、人権問題に関する高い専門性をもって幅広いテーマを扱わなければならない。次の任命がいつになるかは知らないが、民間も含めて適任の人材が選ばれることを願う。

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