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「シャラップ!」より問題なのは

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最近はネットのおかげか暴言ネタに事欠かない(ちっともありがたくないが)。暴言に対して本当に怒ったり悲しんだりしている人もたくさんいるのだろうが、どうも見ていると、ネタとして消費されている場合の方が多いような風情が感じられなくもない。「他人の不幸は蜜の味」などというが、他人の暴言も、何の味かはともかく、人々がおいしく召し上がるもののようだ。特に有名人やら政治家やら官僚やらの暴言は、ひときわ美味らしい。昨今の「大漁」ぶりにマスメディアの方々も笑いが止まらないのではないかと想像する。

都知事の件、大阪市長の件がネタとして消費され尽くした後の暴言界で今、話題の中心となっているのはおそらく、復興担当だった官僚のツイッター発言炎上事件だろう(この件)。しかし、それにやや隠れたかたちになってはいるものの、私としてはむしろ、こちらに注目したい。

「日本の人権大使が国連で暴言 「シャラップ」」(共同通信2013年6月14日)
【ジュネーブ共同】国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会の対日審査が行われた5月22日、日本の上田秀明・人権人道担当大使が英語で「黙れ」を意味する「シャラップ」と大声で発言していたことが13日までに分かった。「シャラップ」は、公の場では非礼に当たる表現。

人もすなる暴言吊し上げ合戦を我もしてみんとて、というわけではないが、この件ではどうしても気になることがある。

この件について報道では、総じて「シャラップ!」(Shut up!)ということばに関心が集まっているようだ。もちろん、これはああいう場では言語道断の暴言であって、これを大使自身が逆ギレして口にしたなんていうのは頭を抱えたくなる事態だ。ダメダメであることは一目瞭然だし、インパクトも強いから見出しにもうってつけだしというわけで、これを中心に取り上げたくなるのはビジネスとしてやってるメディアならむしろ当然かもしれない。

「「人権人道担当大使」国連で大失態!日本批判に「何がおかしい。シャラップ!」」(J-Cast news2013年6月12日)
「国連で「シャラップ」日本の人権大使、場内の嘲笑に叫ぶ」(産経新聞2013年6月13日)
「日本の大使が「シャラップ!」=国連拷問禁止委で暴言」(時事通信2013年6月14日)
「日本の人権大使、国連委員会で苦笑に「黙れ」」(読売新聞2013年6月14日)
「外相 日本の立場 丁寧に説明を」(NHK2013年6月14日)
「日本人権大使ブチ切れ!国連で暴言「シャラップ」」(サンケイスポーツ2013年6月15日)

実際、YouTubeに上がっている動画を見ると、これはひどいといわざるを得ない。この会合の性格やこの人物の職責を考えれば、同じ国の人間であることが恥ずかしくなる。「ロンパールーム」ならCM明けにクマのぬいぐるみに差し替えられるレベル(古いね)、などと冗談かましたいところだが、この暴言自体よりもっと懸念すべきことがあるように思うのでそうも言っていられない。

それは、この大使が「我々は、この分野(人権問題)において最も進んだ国家である」と発言したことだ。動画では確かにこう言っている。

"Certainly, Japan is not in the middle age. We are one of the most advanced country in this field."

報道では、「日本の刑事司法制度は自白に頼りすぎており、中世のようだ」との指摘に対しての発言、とされている。「中世」(Middle Ages)を「中年」(middle age)と言い間違えているところはまあご愛嬌。動画は1分程度しかない(元動画をざっくり探してみたが該当部分は見つからなかった)ので、ここでいう「this field」が何を指すかについては報道に従うこととする。この会合を傍聴していた弁護士の方のブログ記事もあるのでご参照。

「日本の刑事司法は『中世』か」(小池振一郎の弁護士日誌)

「中世」かどうかはともかく、少しでも事情を知っている人なら、この発言は「えええええ」となるのではないだろうか。

この委員会は、日本だけではなく、各国の状況について定期的に勧告を出しており、それに対して各国政府が回答している。今回の会合に基づく日本への指摘事項はここに出ているが、かなり多岐にわたっているのがわかる。項目だけ以下に挙げるが、この中で太字のものについては、委員会は「deeply concerned」ないし「seriously converned」と言っている。

Definition of torture
Statute of limitations
Non-refoulement and detention pending deportation
◎Daiyo Kangoku(代用監獄)
◎Interrogation and confessions(尋問と自白)
Complaint mechanism
Conditions of detention
◎Solitary confinement(独房への監禁)
◎Death penalty(死刑)
Training
Redress, including compensation and rehabilitation
◎Victims of military sexual slavery(戦時性奴隷被害者)
Violence against women and gender-based violence
Trafficking
Psychiatric health care
Corporal punishment
Other issues

これらの問題の多く、特に委員会が特に深い懸念を示した太字の項目は、国内でも日本の制度の問題点として挙げられ、以前から議論がなされてきた。もちろん、日本が世界有数の「安全な国」であることは誰しも認めるところだし、人権全般についていうなら、少なくとも「one of the most advanced」という大使の発言(後でそう言い直した)は、大筋でまちがっていないだろうが、少なくとも上記の領域で「most advanced」であると考える人はあまりいないだろう。

たとえば最近でも、いわゆるパソコン遠隔操作ウィルス事件における誤認逮捕があった。この件で最大の問題点は、警察が誤認逮捕をしたことではない。無実の人間が複数、警察の取り調べに対して、やってもいないことをあたかも自分でやったかのように、詳細に渡る「手口」まで含めて「自白」させられてしまった、ということだ。これは誰がどうみても、警察が自白内容を誘導しているとしか考えられない。

「PC遠隔操作:「謝罪じゃ足りない」誤認逮捕大学生の父」(毎日新聞2013年6月4日)
神奈川県警などの説明によると、男性は当初は否認したが、逮捕の3日後には容疑を認める上申書を提出。その後また否認に転じたものの、再び容疑を認めたという。

その後、遠隔操作事件の「真犯人」として逮捕した被告に対しては、可視化すれば取り調べに応じるとした申し出を拒否し、2月の逮捕以来ここまで勾留を長引かせてきた。苦し紛れではあるだろうが、見方によってはやりたい放題だともいえる。彼が真犯人であるかどうかに関わらず、これは大きな問題だと思う。

「AKB襲撃予告容疑など追送検 PC遠隔操作事件」(朝日新聞2013年6月10日)
パソコン(PC)遠隔操作事件で、警視庁などの合同捜査本部は10日、アイドルグループ「AKB48」の襲撃予告を書き込んだとする威力業務妨害容疑と、6人のPCに遠隔操作ウイルスを感染させたとする不正指令電磁的記録供用容疑で、元IT会社員片山祐輔容疑者(31)=ハイジャック防止法違反罪などで起訴=を追送検し、発表した。捜査本部として最後の立件となる。

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