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- 2010年12月24日 12:28
小泉のイラク戦争支持とメディアの責任
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2003年3月18日、小泉首相は、米国のイラク戦争を支持する意思を表明した。
この戦争に正当性などなかったことは、今や世界の常識である。
ブッシュに追従したオランダや英国ではその反省の機運が高まって、政府の独立調査委員会が検証を進め、オランダでは「イラク戦争は国際法違反」と結論づける報告書が公表された。
残念ながら、日本では政権交代したにもかかわらず、英国やオランダのような政府の取り組みは見られない。
今日の朝日新聞朝刊で、松本一弥記者は、どういう経緯で、日本がイラク戦争に加担する羽目になったのか、日本版「イラク戦争検証委員会」を立ち上げるよう求める記事を書いている。
委員会立ち上げには大いに賛成する。ただ、小泉首相がそういう判断をした背景に、朝日も含む日米欧のメディアがイラクの大量破壊兵器保有というニセ情報に踊らされていた側面があることを見落としてはならない。
メディアの問題は後述するとして、まず松本記者の記事を概観しておこう。松本記者は、閣内の議論を欠落させたまま、小泉首相が唐突にブッシュの戦争を支持したことを、当時の防衛庁長官、石破茂氏や、官房長官だった福田康夫氏の証言から指摘する。
「閣僚懇談会のような場で、イラク戦争支持の是非を議論したことはなかった」(石破)
「小泉氏からイラク戦争を支持するという言葉は明確には聞いていない」(福田)
つまり、小泉首相の独断に、国家の命運を委ねていたのが実態だった。
米軍イラク侵攻前の小泉官邸の状況を、元首席総理秘書官の飯島勲が著書「小泉官邸秘録」のなかで、こう書いている。
「米国のイラク攻撃は時間の問題という情勢になってきた。一方、米国にいかなる形で協力していくかについては、なかなか検討が進まない。防衛庁担当の小野秘書官や防衛庁から来ている黒江参事官に聞いてみるが、要領を得ない」
「前のめりになっている外務省、安全第一で腰が引けている防衛庁、取りまとめに当たるべき内閣官房も力量に欠けているという状態。これではさすがの古川官房副長官もはっきりした方針を固めることができなかった」
外務省も防衛省も内閣官房も、小泉首相にメディア報道以上の判断材料を提供できなかった。そして、小泉首相はブッシュにおもねるように、戦争支持の決断を下したということなのだろう。
松本記者の記事には、開戦当時の内閣官房副長官補、谷内正太郎(元外務事務次官)の長い談話が添えられている。その一部を抜粋する。
「日本にとって最も重要な同盟国の米国が、国際社会の反対を顧みず武力行使に踏み切ろうとしている時、『やめておけ』という態度は取り得ないのではないか。・・・小泉元首相は、開戦直後に米国を支持する考えを表明したが、それで日米同盟の役割は半分以上果たしたと思う」
これが、外務省の典型的な外交防衛認識なのだろう。たとえ間違っていても、米国には従うほうが得策だという卑屈な精神が、かえって日本の信用を貶めている。
さて、松本記者の記事に欠けている視点は、イラク戦争に関するメディアの責任だ。
筆者は、今年3月18日に発行したメルマガ「暗躍する情報工作員に踊らされる日米メディア」のなかで、イラク戦争における情報詐欺師の存在を取り上げた。下記はその一部だ。
◇◇◇
イラク開戦から1年4ヶ月ほどさかのぼる2001年12月20日のこと。ニューヨークタイムズは一面にでかでかと辣腕記者のスクープを掲載した。
イラク人亡命者アル・ハイダリーなる人物がこう証言したという記事だ。「1年前までイラクで、生物・化学兵器や核兵器の貯蔵施設建設にたずさわっていた」
さすが、NYタイムズの権威と影響力は半端じゃない。「やはりサダム・フセインは大量破壊兵器を隠し持っている」。さまざまなメディアを通じ、あっという間にそのニュースが世界を駆け巡った。
この戦争に正当性などなかったことは、今や世界の常識である。
ブッシュに追従したオランダや英国ではその反省の機運が高まって、政府の独立調査委員会が検証を進め、オランダでは「イラク戦争は国際法違反」と結論づける報告書が公表された。
残念ながら、日本では政権交代したにもかかわらず、英国やオランダのような政府の取り組みは見られない。
今日の朝日新聞朝刊で、松本一弥記者は、どういう経緯で、日本がイラク戦争に加担する羽目になったのか、日本版「イラク戦争検証委員会」を立ち上げるよう求める記事を書いている。
委員会立ち上げには大いに賛成する。ただ、小泉首相がそういう判断をした背景に、朝日も含む日米欧のメディアがイラクの大量破壊兵器保有というニセ情報に踊らされていた側面があることを見落としてはならない。
メディアの問題は後述するとして、まず松本記者の記事を概観しておこう。松本記者は、閣内の議論を欠落させたまま、小泉首相が唐突にブッシュの戦争を支持したことを、当時の防衛庁長官、石破茂氏や、官房長官だった福田康夫氏の証言から指摘する。
「閣僚懇談会のような場で、イラク戦争支持の是非を議論したことはなかった」(石破)
「小泉氏からイラク戦争を支持するという言葉は明確には聞いていない」(福田)
つまり、小泉首相の独断に、国家の命運を委ねていたのが実態だった。
米軍イラク侵攻前の小泉官邸の状況を、元首席総理秘書官の飯島勲が著書「小泉官邸秘録」のなかで、こう書いている。
「米国のイラク攻撃は時間の問題という情勢になってきた。一方、米国にいかなる形で協力していくかについては、なかなか検討が進まない。防衛庁担当の小野秘書官や防衛庁から来ている黒江参事官に聞いてみるが、要領を得ない」
「前のめりになっている外務省、安全第一で腰が引けている防衛庁、取りまとめに当たるべき内閣官房も力量に欠けているという状態。これではさすがの古川官房副長官もはっきりした方針を固めることができなかった」
外務省も防衛省も内閣官房も、小泉首相にメディア報道以上の判断材料を提供できなかった。そして、小泉首相はブッシュにおもねるように、戦争支持の決断を下したということなのだろう。
松本記者の記事には、開戦当時の内閣官房副長官補、谷内正太郎(元外務事務次官)の長い談話が添えられている。その一部を抜粋する。
「日本にとって最も重要な同盟国の米国が、国際社会の反対を顧みず武力行使に踏み切ろうとしている時、『やめておけ』という態度は取り得ないのではないか。・・・小泉元首相は、開戦直後に米国を支持する考えを表明したが、それで日米同盟の役割は半分以上果たしたと思う」
これが、外務省の典型的な外交防衛認識なのだろう。たとえ間違っていても、米国には従うほうが得策だという卑屈な精神が、かえって日本の信用を貶めている。
さて、松本記者の記事に欠けている視点は、イラク戦争に関するメディアの責任だ。
筆者は、今年3月18日に発行したメルマガ「暗躍する情報工作員に踊らされる日米メディア」のなかで、イラク戦争における情報詐欺師の存在を取り上げた。下記はその一部だ。
◇◇◇
イラク開戦から1年4ヶ月ほどさかのぼる2001年12月20日のこと。ニューヨークタイムズは一面にでかでかと辣腕記者のスクープを掲載した。
イラク人亡命者アル・ハイダリーなる人物がこう証言したという記事だ。「1年前までイラクで、生物・化学兵器や核兵器の貯蔵施設建設にたずさわっていた」
さすが、NYタイムズの権威と影響力は半端じゃない。「やはりサダム・フセインは大量破壊兵器を隠し持っている」。さまざまなメディアを通じ、あっという間にそのニュースが世界を駆け巡った。



