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メディア全体で「つながる」ことの大切さが問われている 河北新報編集委員・寺島英弥氏インタビュー

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東日本大震災と原発事故後、日本社会の脆弱性(Vulnerability)が盛んに議論され、とくに情報の点においては、行政やメディア、市民の情報受発信の問題がクローズアップされた。そのなかでも、ジャーナリズムの問題や可能性については、まだまだ議論は途上だ。今年3月11日で震災から3年目に入り、メディアによる報道は激減している。こうしたなかで、取材者は何を伝え、どう発信していけばいいのか。河北新報編集委員で被災地に何度も足を運んで取材している寺島英弥さん(福島県相馬市出身)に、震災報道や東北各地の被災地の現状、今後のメディアの役割などについて聞いた。(インタビュー・構成/藍原寛子)

被災地の最大の課題は人口減少と住民の分断

―― 寺島さんとはときどきお会いしては、仕事のこと、メディアの将来など、いつも刺激になる内容で議論させていただいています。会社は違えど、メンター的に取材記者として仕事上のアドバイスをいただくこともたびたびでした。震災後、河北新報社が運営する市民参加型の地域SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「ふらっと」のなかで、「余震の中で新聞を作る」を執筆され、ウエブサイトも活用して、被災地の情報発信をつづけてこられました。3月、『東日本大震災 希望の種をまく人びと』(明石書店)を上梓、被災地の声を伝えています。東北各県を飛び回って継続的に取材されている寺島さんに、まずは直球の質問をしたいのですが、震災から丸2年、いまの被災地の最大の課題は何だとお考えですか。

岩手、宮城、福島と、それぞれに当事者は大変な現実を抱え、課題は多様です。そのなかでもじつは共通している大きな課題があります。それは震災3年目のいま、被災地の人々に「古里に留まるか、去るか」といった厳しい選択が迫られていることです。東北各地の自治体が行った住民意向調査の結果が昨年来報じられていますが、津波被害の自治体でも、原発被害の自治体でも、住みつづけたい人の割合は減りつづけ、東北の被災地一円で人口流出が止まりません。

―― 福島県内の浜通り、原発災害の自治体では「仮の町」というような構想もありますが、それまでの過疎化、高齢化に拍車がかかり、子どもや若者が激減した高齢自治体が急増する可能性ですね。

東北では被災三県で約11万人が減っています。「留まる」と答えた住民はわずか2割という自治体もあります。率直に言って、今後、この1年はとくに被災地再生の行方は正念場を迎えるでしょう。これは「アベノミクスで景気が良くなる」などという経済界の期待とはまったく別世界のように起きていて、逆に被災地では建設資材や人件費、工事コストの高騰、働き手の流出、復興関連事業の相次ぐ入札不調といった負の問題も広がっている。

さらに深刻なのは、多くの被災者がいまだ希望を見いだせない状況になっていること。「5年で除染を終了する」とか、「戻れるようになります」といっても、住民にとっては国が信頼できず、当事者の訴えを吸い上げ、反映してももらえない現状があります。さらには進まない公営住宅の建設。今年3月の時点で、着工はわずか5%。完成は大船渡市と相馬市の合計156戸だけで、2015年3月でも必要戸数に8千戸も満たないというのが実情でした。そのために仮設住宅の入居期限を何度にもわたって延長している経緯があります。

狭い仮設住宅であと丸3年は我慢しなくてはならない、と言われても、高齢になった人や自己資金の乏しい人はそこから離れることができず、さらに希望を持てないでしょう。そんな状況のなかで、「希望は自らをつくるしかない」と自助の活動を始めた人たちもいる。支援する放射線や土壌の専門家と協働し、自ら除染実験に取り組む福島県飯舘村の農家らを、わたしは取材してきました。

支援する側、される側、取材する側、される側の溝

―― 希望がつくり出せない現状。それは本当に厳しいですよね。しかし、一方で、東北地方にはたくさんの支援者が駆けつけてくれました。そうした支援により、希望は生まれたといってもいいのではないでしょうか。

震災の年は、本当にものすごい数の支援者が来てくれました。東北では過去にも、こういうことはなかったと思います。それは被災者の大きな力づけになったと思います。とくに若い人が、高齢化、過疎化の村や町に入って、聞き慣れない東北弁を聞き取ろうとし、つながって手助けしてくれる。そんな姿は、大きな励ましになってきたことでしょう。

ただその一方で最近は、「もう忘れられて行くのかな」という声を、震災3年目になって聞いてもいます。たとえば被災地各地につくられた仮設の商店街。ニュースで報じられ、外部のボランティアやバスツアーなどで立ち寄ってくれル人たちで賑わったものの、いまでは地元の仮設住宅の住民もくしの歯が掛けるように減り、維持するのが大変になっているところが多いと聞きます。

―― 希望が持てなくなった要因のなかには、情報が適切に伝えられなかった失望感などもあるのではないかと思いますが、寺島さんはどうお考えですか。

震災直後、情報を十分に把握して評価してというような準備は被災者にはなかったと思います。政府の発表や指示も二転三転した原発事故の被災地などでは、なおさらです。どれが確かなのか確かめるすべがない。もう政府などは信頼できない、という状況でしたね。

たとえばこんなことがありました。原発事故の影響を受けた飯舘村で、震災後にさまざまな人が入れ替わり立ち替わり訪れた。そのなかには、「飯舘村は危ないから、フランスに移住したら」と勧める人がいたり、チェルノブイリで調査をやっていた研究者がお母さんを集めて話しながら泣き出してしまい、「わたしたち、そんなにかわいそうなんだろうか」と、いたたまれないような思いにさせたこともありました。

支援で駆けつけてくれた人はそれぞれ善意でも、被災地を短時間訪問しただけだと、住民の気持ちが分からない。一方で、住民も相手の意図や被災の全体像が分からないといった状況にあって、さまざまな善意が村を混乱させることにもなった。「人殺し」「住民をモルモットにするのか」といったメールやファクスもたくさん届いた、と菅野典雄飯舘村長から聞きました。

外部からの善意の支援者が、さまざまな情報をもたらしてくれた一方で、短時間あるいは一部分だけ関わることによって、結果的に住民に分断を生んでしまったとも言えると思います。放射能に対する考えや行動に対して、これといった正解はないのにもかかわらず、何か選ばないといけない。結局、政治が決めるしかないのと、自分で許容範囲を決めるしかない。そのときに、誰も責任を負えない、誰にも信頼を託せないという渦中で、上書きされたり修正されることもなく情報が流通していった。そういう側面もあったと思います。

―― 支援者だけでなく、取材者もそうですね。震災直後はメディアが殺到しても、いまになれば継続的に取材をしている人は地元メディアを除いてはめっきり減ってしまった。寺島さんの『東日本大震災―』の取材姿勢に強く共感するのですが、とにかく自分の足で歩いて継続的な取材をする。それがいまこそ、これからこそ大事になると思います。

わたしも体験しましたが、震災直後、同業者から「こんな人はいないか」「こういう取材がしたい」と取材先の紹介を頼まれたり、問い合わせが殺到したと思いますが、その後、紹介した先の人との関係については追跡していますか。本来は取材記者であるなら、自力で取材対象を発掘し、連絡先を探し当てるべきですが。その方がよっぽど記者として力が付く。それに、自分の足で福島を歩いて、畑仕事している人に声をかけてみて、その人から取材を始めるというような試みも重要だと思います。

とくに最近は記者の生活体験やコミュニケーション能力、行動力が減退していると指摘されていますからね。しかし、いまの記者はみな忙しいから、デスクから言われたことをやるので精いっぱい……。デスクに言われたこと以外は、「無駄なこと」と切り捨ててしまうかもしれません。そうせざるを得ない状況もあるかもしれないですね。

震災後から、「こんな人を紹介してくれ」という話は本当にたくさんきましたね。同じ地方紙には紹介してきました。ただ、わたしは震災前から、人と人とをつないでいくということが重要な新聞の役割だと思っていますから、一度きりの取材に関しては、「その人の偶然の声を伝えることにはなるけれども、果たして、つながることになるのだろうか。切り取って持って行くということにしかならないのではないか」という疑問を持っています。テレビのワイドショーではとくに、そういうような事例があったと思います。非常に不本意なかたちで言葉を切り取られ、全国放送されて傷ついたとか、顔も名前も出さないでという約束だったのに翌朝、全部出されたとか、現場で被災者の訴えを聞かされました。

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