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現代社会で生き残るためのリーダーシップ~「カイジ」に学ぶ”積極的戦略”の極意

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今回の題材は「カイジ」。映画にもなり現在も続いている大人気マンガです!

近年「働き方」は多種多様になってきました。かつては、終身雇用型の企業に入り、定年まで居続けることが一般的でしたが、現在は実力をつけるために自ら進んでベンチャー企業に入り、数年で転職を繰り返す人が増えています。
また国内市場の縮小化により、グローバルでの活躍も求められる時代にもなってきました。流動的な競争社会の中で、グローバルに通用する人材になるためには、自らチームを率いるリーダーシップを身につけなければいけません。

リーダーシップを発揮し、チームを成功に導くためにはどうしたらいいのでしょうか?人気マンガ「カイジ」(作:福本伸行)を取り上げ、これからのリーダーの在り方について考えてみたいと思います。解説いただくのは、今回も法政大学の梅崎先生です。

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「カイジ」は映画化されているので、ご存知の方も多いでしょう。
この作品は、定職に就かずふらふら生きてきた主人公が、生きるか死ぬかの瀬戸際の経験をしたことで、「生き方」に対する価値観がガラリと変わったという内容です。
「ヤングマガジン」
(講談社)に連載が開始された1996年は「ニート」や「フリーター」が出始めた時期でした。つまり世の中が安定志向からサバイバルモードへと変わり始め、世の中は弱肉強食なんだと感じるようになった頃に生まれたマンガなんです。この数年後には六本木ヒルズが誕生し「勝ち組」「負け組」というフレーズが広まります。
このマンガには、社会の風潮が一変し「自分で戦略的にものを選ばなければ、このサバイバルな世界を切り開くことはできないですよ」というメッセージが込められているように思います。

「カイジ」は、「賭博黙示録カイジ」に始まり、「賭博破戒録カイジ」「賭博堕天録カイジ」「賭博堕天録カイジ 和也編」と続くギャンブルを題材にしたマンガです。主人公は、長い間自堕落な日々を過ごしてきた青年「伊藤開司」(カイジ)。

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ある日金融業者が出現し、過去に自分が保証人になった友人の借金を押し付けられ、多額の負債を抱えるところから物語は始まります。
突如多額の借金を背負うことになったカイジに、金融業者が提案したのは、ギャンブル船「エスポワール」に乗り込み勝負すること。勝てば借金は帳消し、負ければ命の保証はないという過酷な状況のなか、カイジは勝つためにギャンブルに挑みます。

弱肉強食な世界の中で、チームワークは可能なのか?

ギャンブル船「エスポワール」に乗り込んだカイジを待ち受けていたのは、カード12枚を使った「限定ジャンケン」でした。
参加者にはまず、グー、チョキ、パーのカードがそれぞれ4枚ずつ、計12枚配られます。他の参加者と1対1で対戦し、出したカードに応じて勝敗が決定。勝てば予め配られた3つの「星」シールのうち、1つを相手から奪うことができます。
勝者の条件は、4時間以内に手持ちのカードを全て消費し、自分の星が3つ以上残っていること。これをクリアすれば借金は帳消しされます。負けが許されない状況の中でカイジが選んだ策は「仲間をつくり、チームで勝ちにいく」ことでした。

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このゲームの中でカイジは、個人ではなく、チームを作り勝つことを考えます。これは、一つの逆説でしょう。自分一人が競争を勝ち抜くため、誰かと協力しなければならない。つまり、一人ひとりは競争状態にあるのに、協力関係を生み出さねばならないのです。これは難しいと思いませんか。
ゲーム開始からまもなくして、カイジはすでに窮地に陥っていたので、同じく手持ちのカードや、星の数がなくなりかけていた負けている人同士でチームを組んで、勝つ可能性を広げようとしたわけです。

ここで「やっぱり仲間との友情が大切だったのですね」と思う人は、失礼な言い方ですが、とことん「負け組予備軍」です!(笑)。チームは、友情ではなくて、利害の絡んだ契約と考えるべきなのです。漫画の中では、友情のような目に見えないものに信頼を置いた人、それを信じたいだけの人は「落ちて」いきます。
「なんとなく仲間だよね」という言い方が通用するのは、極めて同質性が高い旧来型の安定的な日本企業だけです。海外多国籍企業でそんな言い方は通用しませんよ。「仲間じゃないかもしれないけど協力してくれ。協力すれば、こうなると約束する」と言わなければなりません。
ではカイジは、どのように仲間との関係を作り、自らがリーダーとなれたのでしょうか。私は、カイジがとったリーダーシップ法を「積極的戦略」と呼んでいます。

「積極的戦略」。一体、どんなものなのでしょうか。

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この戦略の特徴は、チームとしての全体利益を最大化する(=チームおよび個人の勝利)ために、まず先にメンバーに利益を分配し、リーダーの利益を後回しにするところにあります。
カイジは、勝って得た星は先にメンバーに渡しました。逆ならばどうでしょう。まずはリーダーが利益を取ってしまう。メンバーは、一目散に逃げ出しますね。特にこのような過酷な状況下では、人は利己的になりがちです。カイジの作戦のように、2番手、3番手に回ると、リーダーがはじめに得られる利益は減りますが、回数を重ね星の数が増えてくれば、最終的には自身も利益を得ることができ、最大利益(=個人の勝ち)を手にすることができます。これがカイジのとった「積極的戦略」なのです。

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ジャンケンで得た「星」をまずメンバーに渡す理由を説明するカイジ

しかし、そんなドライな契約だけの世界でも、チームワークは成り立つものなのでしょうか。みんな好き勝手に行動するのではないでしょうか。

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そこに「積極的戦略」を成功させるポイントがあります。利益を曖昧にしないということです。「みんなで頑張れば、みんな何とかなるよ」と言ういい方は最悪ですね。要するに、リーダーと、メンバーひとり一人の契約と考えてください。「あなたに得をさせるから、協力してほしい」という約束を、一人ひとりとしっかり交わします。他でもない「あなた」というところが大事です。そうじゃないと「結局、自分に利益は回ってこないんじゃないか…」と納得してもらえないでしょうし、下手をしたら裏切りが生じるかもしれません。
リーダーと個人が合意をして、はじめてこの戦略が成り立つのです。

カイジの立てた作戦は、それこそ賭けと言えそうですね。不安定な状況下で、この道を選択するのは相当な勇気がいるはず…

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そうですね、誰もがカイジのように勇気ある戦略をとれるわけではないでしょう。私は「積極的戦略」をとらないことを、「消極的戦略」と呼んでいます。自分の安全が保証されると分かってから行動を起こすことです。
自らはリスクを冒さないので安全は担保されますが、その分「積極的戦略」をとったときのような、膨大な利益を得ることはできません。共倒れの可能性が高い。
実際、今の日本には、こちらを取る人が多いですね。大もうけしなくても良いから、誰かが作った安全な戦略に乗りたいという「フォロワー病」です。こういう人たちは大抵がリーダー任せで自ら考えようとしない。そもそもリーダも含めたチーム全員が「消極的戦略」をとれば、なにも起こりません。チームとしてとても危険な状態に陥ります。

「積極的戦略」には、思わぬ落とし穴も…

カイジの戦略は功を奏し、最終的にチームとしては勝ちますが、カイジは後手に回った事で星の数が足りず、個人としては敗者となってしまいます。そして残酷な仕打ちが待っている別室に、追い込まれるのです。
「儲けたお金で、別室からカイジを救い出す」。最後の最後にチームの言葉を信じ、カイジは安心して別室に向かいますが、事態は「チームメンバーの裏切り」により急展開を迎えます。

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参加者は全員、乗船後に新たに高い金利の借金を背負わされています。つまり、勝者は乗船前に抱えていた借金は帳消しになっても、乗船後の借金は残っているので、これを返済しなくてはいけません。
勝ち残れば、星を高額で売り、その儲けで借金を返済できます。しかしカイジを救うためにこの儲けを使ってしまうと、手持ちの資金がなくなり、借金が返済できなくなります。そのためメンバーはカイジを助けることはせず、自身の借金返済のためにお金を使うことを決意します。

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要するにカイジのミスは、はじめに相手に得をさせることで協力を得ることはできたものの、同時に自分を裏切りやすい状況を作ってしまったことでした。最初の利益はメンバーに、でも勝ち逃げさせるなというのはとても難しいですね。

ここに、チーム作りの難しさがあるわけですね。身近な「裏切り」の例もありますか?

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企業にとって貴重な技術やノウハウを持った社員が他社に引き抜かれるケースは「裏切り」に近いかもしれませんね。
終身雇用制度がある会社は、企業と社員の間で「暗黙の契約(=将来的なポスト)」が交わされている状態です。若いうちは報われなくても「契約」がある限り、カイジが受けたような「裏切り」には発展しにくいのです。
終身雇用は、一見非合理的な制度ですが、意外と合理的です。終身雇用と言っても、まったくの格差なしではなくて、50代には大きな給与差が付きますよね。退職金の格差を考えてください。これは、最後まで裏切られない仕組みを作っているとも言えますよ。

将来が約束されているから互いに信頼が生まれ、転職やリストラといった「裏切り」が生まれにくいわけですね。

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そうなのです。終身雇用と言う「契約」は、会社への信頼と言うべきではなくて、個人が会社とかわす「長期の契約」と言い換えるべきです。
一方で、流動が激しい会社の場合はどうでしょうか。こちらは、毎回、短期契約を更新していくようなものです。例えば、こんな会社はないでしょうか。社内の競争を厳しくしたら全員が積極的に行動しなくなった。競争が「積極的な戦略」を生み出すとは限りません。「フォロワー病」が蔓延するかもしれませんよ。

ということは、企業も個人も「積極的戦略」をとりながら、相手に「裏切られない」ようなインセンティブ設計ができれば、互いに成長が見込めるということですね。

まさにその通りです。今の閉塞状況では、フォロワー病の退治、「積極的戦略」の立案者の増加が求められています。もちろん、難しいことだけど「積極的戦略」ができるリーダーが増えてほしいですね


今回は、「生死を賭けたギャンブル」という極限の状態で、どうリーダーシップを発揮すべきかという話を紹介しましたが、「企業が守ってくれるから安心して身を任せていよう」と言っていられなくなった現代も、同じような過酷な状況なのかもしれません。「信頼のおけない社会」と言ってもいいでしょう。
このような社会や組織の中で生き残るためには、自らリーダーとなって舵を取り、利益を取りに行く姿勢が大切です。変化の激しい時だからこそ、特に裏切られないような体制を整える必要があります。
関わる一人一人(一社一社)との利害関係を計算して、「契約」を交わし、最大利益を得る。これこそが、これからの時代に求められるリーダーシップ像なのかもしれませんね。
うーん。せちがらい世の中になったものです。

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