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診療放射線技師における乳がん予防啓発活動について

~ジャパンマンモグラフィサンデー(JMS)の参加~

(財)ときわ会常磐病院 診療放射線技師
白土恵 小松亜希子 秋山淳一
2013年6月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●女性のがん死亡率のトップ

現在、日本女性の16人に1人が乳がんにかかると言われています。死亡率は年々増加し、欧米の乳がん死亡率を追従しています。実際に乳がんにかかる人の数は、年間3万人を超えると言われ、女性のかかるがんの第1位となっています。乳がんの急激な増加は遺伝的要因の他に食生活やライフスタイルの変化に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の分泌増加に影響していると言われています。エストロゲンは月経など女性の体で重要な働きをするホルモンですが、その一方で乳がんを促進する作用があります。現在の豊かな生活が初潮を早め、逆に閉経を遅らせること、また女性の社会進出により晩婚化、高齢出産、子供を産まない女性が増加しているため、エストロゲンが昔と比べ長い期間分泌されるようになってきました。また、動物性脂肪の多い食事や高カロリーの食事が、エストロゲンを介して乳がんのリスクを高めるというデータもあります。このような要因が発症年齢を早め、30歳から徐々に発症率が上昇し、45~50歳でピークを迎えます。

●乳がんの生存率

乳がんの生存率において一番重要とされているのは「乳がんの進行度」すなわち病期(ステージ)です。乳がんの進行度は「腫瘤の大きさ」と「リンパ節への転移の状態」によって0期~Ⅳ期に分けられています。0期とⅠ期が早期と呼ばれていますが、この時期の乳がんの生存率は非常に高く、0期の生存率は約90%、Ⅰ期の生存率は約80%です。Ⅱ期は70%、Ⅲ期は40~50%、Ⅳ期は20~30%となっております。乳がんは検査や治療の進歩により早期発見が可能となり、一般的に他のがんと比べて5年生存率や10年生存率が高いと言われています。

日本の検診率・マンモグラフィ受診率は欧米の70~80%と比べ大きく下回っています。
このような背景から日本の受診率を高めるために、がん検診推進事業のひとつとして40歳以上の女性に定期的に無料クーポン券を配布し、受診を促していますが未だ利用率が低いのが現状です。無料にも関わらず利用率が低いのは、乳がんの危険性や実施医療機関が分からない、申込方法がわからない、仕事や家事で忙しく受診出来ない、羞恥心等があると考えられます。

●診療放射線技師がやるべきこと

診療放射線技師は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下に、放射線を人体に対して照射することを業とする者と記されています。言い換えると、放射線を用いて病気を見付ける職と言えます。近年、日本診療放射線技師会では厚生労働省所管の公益法人となりました。技師会の理念には放射線技術の向上と発達の他に、公衆衛生の向上を図り、国民の健康維持に寄与すると明記されているように、診療放射線技師は人々が健康に生活できるように社会活動をする義務があります。よって、当院では女性のマンモグラフィ担当技師が中心となって、受診者の立場になり受診率向上を目指した活動をしていますので御紹介します。

●就労中の女性の72%が日曜日のマンモグラフィを希望

まず第一に、アンケート方式で受診者の考えを聞いてみました。アンケート期間は10日間で、63名(年齢内訳10代:1名 20代:1名 30代:3名 40代:15名 50代:16名 60歳以上:27名)の方に協力してもらいました。『これまでにマンモグラフィを受診したことがありますか?』に対して、初めて:30.2% 毎年:23.8%という結果から学会で推奨している毎年の受診をするという方は少ないことが分かりました。 『自己触診をしていますか?』に対しては、はい:41.3% いいえ:58.7%の結果となりました。『日曜日にマンモグラフィを受診したいですか?』に対して、はい:55.6%、いいえ:42.9%(無回答:1.5%)となり、就労中の女性では72%の方が日曜日のマンモグラフィを希望しておりました。また、受診者からは女性医師を希望する意見が多かったです。

アンケート結果から、仕事を持つ女性は休日のマンモグラフィを希望し、予防法である自己触診の方法がわからない女性が多いことが分かり、当院では【ジャパンマンモグラフィサンデー(JMS)】に賛同することにしました。

●受診者の立場になって

女性の社会進出が高まってきている現在、仕事を休む、家族の介護、または子供を預けて受診することが難しい女性が多いと思います。このような女性のために、NPO法人が主となりピンクリボン活動の一環で【ジャパンマンモグラフィサンデー(JMS)】を開催しております。JMSは子育て・介護・仕事など多忙な平日を過ごす女性がマンモグラフィを受けやすい環境を作ることを目的としたNPO法人です。全国の医療機関で毎年10月の第3日曜日に開催されます。2012年は全国で約340医療機関がJMSに賛同し、福島県では当院を含め2つの医療機関で開催されました。2012年は10月21日(日)に開催され、当院のJMSは受診者に配慮し、受付・検査・診察(視触診)・会計は全て女性が対応しました。当院では完全予約制とし、25名/日の検査枠で実施しました。工夫した点は、受診者の待ち時間を利用し、女性の診療放射線技師が乳がんの概要と日常出来る乳房の自己触診の方法を乳房の模型(ファントム)を用いて説明しました。乳房の模型は色々な種類の乳房の病変(しこり)が配置されており、自ら触れることで病変の硬さや形を憶えてもらい、日常の自己触診に活かして頂きたいと考えております。また、自己触診を習慣付けるために自己触診カレンダーを作成し、受診者に配布しました。診察(視触診)に関しては、非常勤の女性医師にJMS賛同の経緯を説明し快諾して頂きました。女性医師が対応したため乳房以外の女性特有の病気について相談することが出来て安心したという御意見をもらいました。

●今後の取り組み

当院はときわ会に移譲され3年が経過しましたが、女性技師の努力もあり、昨年度のマンモグラフィ件数は1500件/年となりました。今年5月には最新のマンモグラフィ装置を購入し、今まで通り、女性診療放射線技師が検査を行うようにしています。また、今年4月から当院外科に女性医師が赴任しましたので、全検査が女性で対応しております。検査室も女性が安心して検査を受けられるよう、照明や壁紙に工夫をしました。

診療放射線技師として検査技術の向上は勿論、定期的な勉強会を開催することで皆さんに乳がんの正しい知識を持ってもらい、自己触診の習慣化や抵抗感のあるマンモグラフィ検診を定期的に受診できる環境を作っていきたいと考えております。

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