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憲法勉強会とドラッカー

1. パルシステム東京と憲法勉強会
 パルシステム東京の招きで、『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』というテーマに講演した。パルシステム東京主催の憲法勉強会のシリーズの一貫なのだそうだ。
 牛のマークのついた小型トラックを見かけたことがある人は多いと思うが、東京の生活協同者組合(パルシステム東京)の車である。正職員は400人、非常勤職員は2000人で、東新宿にある新ビルの全室がパルシステムの事務所になっている。非営利組織としては、かなり規模の大きな事業体である。
 あまり知られていないのだが、日本は世界でも最大の生協大国で、延べ6000万人、人口の半分がどこかの生協に属しているという。だが、そのことがあまり認識されていないのは、共同消費の手段としては理解しているが、それが社会的な使命をもった会員による自己統治組織であること、そして、会費を払った者は、その構成員であるということがあまり理解されていないからだろう。
 ところで、なぜ、パルシステム東京が憲法勉強会なのか?「日本の国民である以上、憲法改正問題についてきちんと意見を述べたい」という要望が複数の役員や会員から出されたそうだ。そこで、シリーズの憲法会勉強会を企画したのだそうだ。大久保と目と鼻の先に位置するパルシステムの事務所では、土曜日午後になると反韓国のヘイトスピーチの大音響が聞こえてくる。日本人はどうなってしまったのだろう、という漠然とした疑問や不安も抱いていた。
 会場には男女半々の聴衆が集まっていたが、主婦層も目立った。土曜日の夕方は家族団らんの時だと思うが、勉強会に参加するために時間をやりくりしてきたようだ。庭の花を切ってきて、壇上を飾ってくれる参加者もいた。

2. ドラッカーと憲法勉強会? 
不覚にも、それが憲法勉強会シリーズの一貫であることを知ったのは会場に入ってからだった。ドラッカーについて話してほしいということを主催者側から聞いていたが、「憲法勉強会にどうして呼ばれたのだろう?」と心配がよぎった。
 しかし、主催者の狙いは適切で、ドラッカーがナチスと筆の力で闘っていた時代背景を振り返ることは非常に重要だった。当時、世界で最も民主的と言われた憲法をもつワイマル共和国がわずか4年で倒れ、大連立政権が生まれ、以降、政権交代が繰り返される中で、ナチスが第1党になっていった過程を振り返りながら、なぜ、ドイツ国民がナチ党を選択したのかをドラッカーは批判的に分析している。そして、氏は次のように結論づけている。すなわち、全体主義に陥ったことをドイツ人の国民性のせいにすることは誤りである。全体主義に陥るか否かの違いは、「与えられた民主主義」と「獲得した民主主義」に起因する。つまり、激しい闘いの末に市民が自身の手で民主主義を勝ち取った記憶が、人々の中に残っている国と、それを経験していない国の差なのだと。
 ドラッカーのこの論説をもとに、会場の参加者と議論した。お年寄りから30代の女性まで、様々な人々が自分の体験や知識に基づき意見を述べた。これらの意見は次のようにまとめることができるだろう。
 すなわち、ドイツの経験は、ドイツ特有の事件でも、歴史上の過去の問題ではなく、現代日本において、私たちが市民としてどう生きるかという問いかけにつながっているということである。
 立憲主義とは、本来、国民を政治権力から守り、国民の権利を守ることを基本としている。憲法改正を遠い政治の決定事項としてではなく、どこまで己が事として国民が考えることができるかが、問われているのだろう。この勉強会の議論は、肌感覚でこのことを再認識させてくれるものだった。

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