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誰かに厳しい質問をすることはKYで失礼なのか?~BBC HARDTALKスティーブン・サッカ-との会話から。

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橋下市長の慰安婦問題を巡る件でのやり取りや、オリンピック誘致を巡る猪瀬知事の失言を追及する記者会見でのやり取り、そしてプーチンにKY?な質問をぶつけたことが話題となったTBSの記者のように、報道しようとする取材の主体者の行い、それ事態までもが、報道メディアのアジェンダになることが増えてきた。

つまり、報道された内容だけでなく、そのような報道を生み出すまでの、メディアと取材対象者とのやり取りそのものが、ニュース・メディアの世界で主なテーマになりつつあるようだ。



インターネットの登場によって、時間軸の長さや紙面の限界がなくなったこともあって、記者会見全体が、質問する側の立ち居振る舞いも含めて「見える化」されるようになってきたことがその主な要因だと思う。基本的に私はこのように、報道メディア側自体も批判され、検証されるようになること自体は大変にいいことだと思っている。

しかし、例えば、愛国的だということで、人気のある政治家に対し、厳しい質問を行う記者の存在自体が、ソーシャル・メディアなどで「あいつはKYだ。ブサヨだ。」と猛烈に批判されるような事態が近いうちに起こるのではないか、とやや危惧も感じる。なぜなら、取材過程や記者会見での質問プロセスが可視化され、場合によってはアンフェアな批判にさらされることで、報道メディアを萎縮させることは決して社会全体のためにならないからだ。

報道メディアが取材対象者に、ある意味では厳しい質問をハードに行うことは、プロ野球のバッターが、ピッチャーの投げた球に対して、フルスイングするような、職業的な「義務」であり、当然の努力なのだ、ということを忘れてはいけない。いくら熱狂的な阪神ファンといえども、甲子園で阪神のピッチャーから、逆転のタイムリーヒットをかっ飛ばしたからといって、打った選手を口汚く野次ることが褒められたことでないのは、誰にでも分かるだろう。別にバッターもピッチャーが憎くてフルスイングをするわけではないのだ。

野球でバッターが投げられた球を渾身のフルスイングでぶっ叩くように、あるいは、ボクサー同士がノーガードで撃ちあうように、厳しい意見のぶつけあいが行われる様を英語ではHARD HITという。日本語で、喧々諤々・丁々発止の激論というところだろうか。

そして、この文字通りのHARD HITな議論を見せよう、という意図で放送されているBBCの看板インタビュー番組に「HARD TALK」がある。筆者のお気に入りの番組だ。スティーブン・サッカーというキャスターが質問を各界の有名人や政治家になげかけるのだが、見ているこちらが、ある意味では「失礼ではないか?」とヒヤヒヤするような質問をズケズケと単刀直入にぶつけ、30分という短時間だが、非常にHARD HITで高密度な議論が見られる。

英語で厳しくネチネチと詰問されることを、グリルで肉が焼かれるように「料理されるという意味でgrillingというけど、スティーブンは、まさしく、これぞgrillingだ、という感じの強面インタビュアーぶりなのである。

筆者のお気に入りの回が幾つかある。分かりやすい回の1つは日本人にも、非常に有名で、ジョージ・ソロスとコンビを組んでいたことでも知られる伝説的な投資家であるジム・ロジャースの招かれた回だ。別に英語がそれほど達者でなくとも、いかに激論かは見るだけでも分かるのでぜひ見てほしい。

例えば、9分過ぎあたりからの激論が実に面白い。スティーブンは、典型的なリベラルの立場に立って

「食料品の高騰に苦しむ貧困層が多数いるのに、あなたは、農産物などのコモディティ相場への投機でオカネを儲けることが適切だと思っているのですか?」と切り込む。それに対して、ジム・ロジャースは猛全と反論する。

「誰かが農業に投資しない限り、ビジネスは回らないんだっ!。穀物価格が上がれば、最後には、必ずや最終生産者である農民にも利益があるはずだ!。」見て頂ければ分かるが実に丁々発止のやりとりだ。

また、もう一つの回は、この前、亡くなったベネズエラの大統領でもあるチャベス。

西欧的な民主主義の価値観(法の支配/人権の尊重)に基いて、「あなたは要するに独裁者ではないか?」と政敵の追放劇などについて、スティーブンは切り込むわけだが、チャベスからの「オマエは何も分かってない!!!!」と鼻で笑ったような態度で猛反論が見ものだ。(特に10分過ぎあたりからのやり取りが見もの。)

この質問者であるスティーブンを馬鹿にしきったような態度での反論は、放送事故?のような印象すらある凄いものだ。

また、日産ルノーCEOであるゴーン氏との回も面白い。

ゴーンに対して、例えば「ドイツ系の同業他社よりも、日産・ルノーの経営パフォーマンスは悪いのでは?」(4分過ぎ)や「電気自動車に関するルノー幹部による機密流出の件で、あなたは辞任すべきでは?」と日本の民放インタビュアーでは、大スポンサー日産様の総帥であるゴーン様への質問としては、考えられないように聞きにくいことをズバズバと聞いている。

さて、スティーブンがここまで厳しい質問を行う理由はなぜだろうか。そこから、「日本人は議論ができない」と言われている我々は何を学ぶべきだろうか。

3月のBBC訪問以来、そこでのディスカッション内容を紹介してきたこのシリーズのラストを記事として、超強面インタビュアーであり、国際放送協会(IAB)が2010年度の'International TV Personality of the Year'に選んだTVキャスターである、スティーブン・サッカーに逆インタビューする機会を得られたので、その内容を紹介したい。

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