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堀江貴文×東浩紀トークショー「電子書籍はなぜ使われないのか」

先日(6月5日)、思想家の東浩紀氏の経営するゲンロンカフェで行われた、堀江貴文氏と東浩紀氏の、堀江貴文×東浩紀トークショー「電子書籍はなぜ使われないのか」に参加してきた。

開催概要は下記の通り。
日時: 2013年6月5日(水) 19:00~21:00
場所: ゲンロンカフェ(五反田)
開催主旨

電子書籍の技術的有用性は各方面から取り上げられ、注目もされている現在。なぜ期待とは裏腹に、紙の書籍をすぐになくなるほどのスピードでは普及しておらず、かつ一般的に「電子書籍はお金にならない」といわれているのか?

それはビジネスモデルのせい?それとも作家性の問題?

4月末のニコニコ超会議で「EPUBはクソ規格」と切って捨てた堀江貴文と、まさに次号の『思想地図βvol.4』の編集真っただ中の東浩紀の異色対談。

堀江貴文収監前に収録した特別インタビュー「日本に止まること、日本を離れること」以来の邂逅です。一方的にやせたホリエモンと、一向に変わらないあずまんの出会いも見どころ!乞うご期待!!

堀江貴文×東浩紀トークショー「電子書籍はなぜ使われないのか」 | PeaTiX

ゲンロンカフェイベント終了後の東さん by 堀江貴文(Takafumi Horie) (takaponjp)

■二人のトレンドセッター

この対談は本当に楽しみにしていた。今の日本では、トレンドセッターとして頂点にいるといってもいい二人が2013年半ばという先行きが益々不透明な今邂逅すると、一体どんな話になるのか。時代に対する嗅覚が極めて鋭い二人の対談なら、何かきっと他では得られない貴重なヒントをつかむことができるのではないか。皆そう感じているのか、どんな話の断片であれ聞き漏らすまいという緊張感が会場を息苦しくしていた。

■初めて生で見る堀江氏

私自身は、特に、堀江氏のお話を生で聞くのはこれが初めてということもあり、話の内容もさることながら、どんな雰囲気を持つ人なのか身近で感じてみたいと思っていた。テレビやネットの動画等では伝わってこない、身体から発せられるものを察知するのに、ゲンロンカフェは理想的な場所(狭さ)だ。

結論から言えば、堀江氏が発するオーラに圧倒された。収監前の、世間を斜めに見て、突っ張って、何時もいらだっていた頃の雰囲気はみじんもない。発する言葉にも他者を刺すトゲはまったくなくなっていて、穏やかで落ち着いている。それでいて、聞く人の心を鷲掴みにする力強さがある。本当に凄い。堀江氏が本当にビッグになるのは、『これまで』ではなく『これから』だろうと思った。

■エンターテイナー東氏

一方、東氏のほうは、こちらもまぎれのない天才だと思うが、一流の漫才師でも裸足で逃げ出しそうな、『突っ込み』の技術は、これもまた天性の才能を感じてしまう。噺家になっても、超一流となったに違いない。この夜は、そちらのほうの才能が遺憾なく発揮された感じだった。

■予期とは違ったが・・

今宵のテーマは、『電子書籍はなぜ使われないのか』だったし、これ自体、実に興味深い問題なのだが、二人があまりに話題豊富ということもあってか、余談として語られ始めた話題がすぐに膨張するため、なかなか本題に集中できない感じで、しかも、お話の着地点は、この議題から予期される内容とはかなり違っていた気がする。ただ、それでも、話のコア/エッセンスは他では決して聞けない内容で、実に面白かった。

議題に関わる二人のお話を要約すると、おおよそ次のような感じだ。

■東氏の嘆き

東氏は、現状の電子書籍やブログ等のプラットフォームには不満がある、という。そのプラットフォーム上で中長期的に書き続けるためには、読者を集め(PVを稼ぎ)、マネタイズを実現することが必要になる(もちろん、アマチュアとして書き続けることは可能だろうが、大抵は疲弊して止めざるをえなくなる)わけだが、現状の仕組みでは、これを実現するための最も効率のよい方法は、中味(コンテンツ)を充実させることではなくなっている、という。すなわち、ブログに最も効率よく人を集めるためには、内容自体を良くすることに注力するより、『短くコンパクトに毎日書いて、時には問題発言や他者への攻撃等により意図的に炎上して大量のアテンションを調達』し、『リアルタイムで読者の動向を見ながら、書く事を変えて行く』ことだ。その実例として、ブロガーのイケダハヤト氏をあげて、彼は現状のプラットフォームにおいて(炎上作戦等)最適化を実現しているとは思うが、何か身についているかと言えば、何も残るものはないのでは、と指摘する。

だが、(東氏が思想地図でやろうとしているような)良質なコンテンツをつくろうと思えば、ある程度『仕込み』や『ため』に時間をかけることは不可欠で、その過程で人が育つ/人を育てることも必要だ。従来の出版社には、編集者が、素質はあるが、まだ書き手として売るには早い若い人材に、経験する場を与えて、食わせ、育てるような余裕があったが、出版不況でそれもままならなくなってきている。現状のプラットフォームで収益を最大化しようとすれば、このような従来の出版社のようなやり方は是認されないことになる。これは書き手にとっても読者にとっても不幸なことだ、と東氏は嘆く。

堀江氏の主張

これに対して、堀江氏は、コンテンツ自体に注力するより、様々な種類のプラットフォームを沢山つくれば、その多様なプラットフォームのそれぞれに呼応して、従来のマスコミや雑誌等の仕組みでは、世に現れることができなかった、隠れた才能を表に引き出すことが可能になると主張する(その例として、ブログ『金融日記』を書く藤沢数希氏や、『はあちゅう』の愛称で知られる、伊藤春香氏等の名前があがっていた)。 だから、東氏も、既存のプラットフォームの特性も利用してお金を稼ぎつつ、東氏の理想とするコンテンツが生まれるようなプラットフォームを作って、併用するのが一番いいのでは、という。

金融日記
伊藤春香オフィシャルブログ「はあちゅう主義。」

■一応の決着

ただ、東氏は、今取り組む福島第一原発観光地化計画の活動についても、お金がかかる割に、『アテンション』を得るのが難しいことを嘆く。だが、堀江氏は東氏のチェリノブイリでの取材費の捻出にも、マイクロパトロンプラットフォーム「CAMPFIRE」が役立ったことを指摘して(CAMPRIRE至上、最高額が集まったという)、今後も、有意義で興味深いが高額の取材費等が必要な案件には、このクラウドファンディングの仕組みを組み合わせていってはどうかと提案していた。東氏も、当惑は隠しきれないながら、一縷の可能性を感じたのか、議論はここで一応決着した。

福島からチェルノブイリへ! 津田+開沼+東が観光地化復興の実態を探るプロジェクト

『電子書籍はなぜ使われないのか』というお題を見れば、普通なら、ステレオタイプでありふれた議論を予想してしまいそうなところだが、さすがにこの二人がこの話題を取り上げると、一味も二味も違う。

天才に期待したい

東氏の問題意識は、自分自身ブログを書く私には、非常に身につまされるところがある。内容的にはそこそこ自信のある記事が書けても、注目されるとは限らない。それどころか、まったく誰にも読まれないことも珍しくない。マネタイズにはこだわらないが、やはりあまりに読まれないことが続くと、書くモチベーションは落ちてしまう。もし、本当に『良い内容なら必ず注目される』というプラットフォームがあるなら、人が読みに来なくても、自分の努力不足と自分を納得させ、再び良い記事を書くべく頑張ることができるように思う。だから、こういう問題意識を持って、この問題を解決しようと苦闘する東氏の存在は『救い』だ。クラウドファンディングだけでは解決しきれない問題だと思うが、是非これからも頑張って欲しいと思う。堀江氏にも、沢山の種類の違うプラットフォームをもっと沢山作って欲しいと思う。天才二人には、凡人の私は期待するところ大だ。

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