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  • 新恭
  • 2010年08月09日 11:52

物神化しメディアの自家中毒を誘発した世論調査

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世論調査はいったい何を調べているのだろうか。

むろん、世論を調べているということになる。では、世論とは何か。辞書にはこう書いてある。

「社会的問題・政治的争点や政策などについての人々の意見・態度を把握するための統計的な調査」

仕方がない、この説明にそって考えよう。

「社会的問題・政治的争点や政策」。「人々」は何によってこれを知るのかというと、言うまでもなくメディアであろう。

メディアは当然のことながら、社会、政治、政策のすべてを書いたり、放送したりすることはないし、物理的にもできない。

何かを主観的に切り取り、情報、あるいは評論という商品として、それを受け取る「人々」に提示するのが関の山である。

メディアの記者たちは「人々」の関心を惹きそうな物事を、例えばさまざまな利害のからむ政治というフィールドでも、瞬時のうちに探し出す訓練を受けている。

「取材」の前に、「狙い」があり、記者は「狙い」にそった発言や行動に目を向ける。それによって、締め切りまでの短時間のうちに、記号的なフレーズを多用して単純化し、「人々」の頭にすーっと溶け込むような情報商品につくり変えることができる。

その技術は、記者クラブという伝統的ギルド組織のなかで、メディア各社とも共通化しており、かくして画一的なニュースが巷にあふれる。

なぜかそのような情報が事実そのものであることを前提にテレビ番組がつくられ、有力キャスターの番組支配のもとにある評論家、コメンテーターがお追従して、肉や色をつけて強調することで、いったん「人々」の頭に入った記号的情報、論評が一時的に定着する。

その定着した観念が、辞書に言う「人々の意見・態度」と無関係であるとはいえないだろう。

電話による、いささか恣意的に構成された質問群によって、「人々」の頭に一時的に刷り込まれた観念を、「意見・態度」として引っ張り出すことくらい、世論調査にとっては朝飯前のことである。

つまり、タテマエはともかく、世論調査は実質的に、メディアの横並び、画一報道による情報シャワーが人の頭脳に与える影響を調べているのであり、いってみれば「社会心理学」「社会病理学」の範疇に属するものとさえいえよう。

以上は、筆者の独断と偏見かもしれないが、あまりにもマスメディアが世論調査を多用するために、このところ、硬派の雑誌媒体を中心に批判的な記事が目立っているのも事実である。そのいくつかを紹介してみたい。

中央公論9月号で、東大教授、御厨貴氏は「物神化された支持率」と題して、次のように書いている。

「日本の政治を危うくしている要因としては、メディアが主導する『支持率決定論』も大きい。支持率が下がっているときにどれだけ持ちこたえて上向きにするか、という場面こそが総理大臣の腕の見せどころなのに、逆に数字に一喜一憂している」

「今やどのメディアも支持率をのべつまくなしに調査している。私が出演している政治討論番組でも『庶民には一番わかりやすい』と支持率を示したフリップを毎回必ず出すことになっている。そこで「支持率が急落していますが菅政権は・・・」と、あたかも退陣期待の雰囲気を醸し出していく」

「知人の政治部記者も『確かに異常だ』と認めた上で、『けれども他社もやっているから止められない』と断言するのだ・・・確かに、支持率フリップを出した瞬間に視聴率の数字が上向く・・・結局、支持率調査を待ち望む国民もまた、振り回されている・・・数字の上げ下げを見て・・・ある種のギャンブルを楽しんでいる感覚なのだ」

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