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規制緩和は経済成長につながるのか?

 アナリストや学者は、異口同音にアベノミクスは第3の矢にかかっている。そのためには規制緩和が重要と言う。しかし規制緩和をするとなぜ経済成長するのか、誰も言及しない。もはやセオリーなので議論の余地がないということなのだろうが、この部分すっきりしないままなのは私だけではないと思う。

 例えば今回話題になった薬のネット解禁。これをやることで、どう経済成長に繋がるのか?これまで薬局薬店だけだった販売チャンネルが増えれば販売量が増えるのか?基本的に薬の需要はそんなことで需要が増えるものでもないと思う。

 ネットでの購入が定着している本やCDが、従来の販売チャンネルにネットが加わることで総販売量が増えたという話も聞かない。むしろCDなどはネットの普及が市場規模を縮小させている

タクシーの規制緩和は、規制緩和論者が意味を理解していない

 薬のネット解禁は、例えとして矮小過ぎかも知れない。今回のアベノミクス第3弾の発表でも、細かい政策をたくさん並べているだけでインパクトに欠けると評価は芳しくない。もう少しインパクトの大きい事例で、規制緩和のもっとも酷い失敗例として槍玉に上がるタクシーの規制緩和を敢えて取り上げたい。

 タクシーの規制緩和については、ワンコインタクシーなどが出現したもののタクシー需要は喚起されず、乗務員の給与体系が歩合制で事業者の固定費リスクがないため、増車のチキンレースが始まり、囚人のジレンマに陥って業界全体が疲弊してしまった。

 もっとも酷い失敗例と言われるタクシーだが、規制緩和論者はこの問題に反論も反省もしないことが、彼らの信頼感を失わせている。私は規制緩和論者が総括から逃げているというより、理解できていないという感じがする。もう少し丁寧に言うと、規制緩和論者がシナリオを理解していないのと、シナリオに無理があるという2つの誤謬が問題をわかりにくくしている。

 運輸部門はもっとも規制が多い業種と言われているが、それは経営体質が脆弱な企業が多く、保護が必要だと思われていたからだ。この分野の規制緩和の意味は、競争を激化させ、競争力の弱い事業者には退場してもらい、余剰となった運転士が成長専業に移動することにより経済成長に寄与するというものだ。

 ところが、規制緩和論者の多くが、それを理解せずに、タクシー業界が規制緩和により切磋琢磨し、新たな需要を開拓し、経済成長の牽引役になるような理解をした。そもそも経営基盤弱いのは事業の収益性が低いからであり、そのために保護されているような業種は経済成長の牽引役でなく、人材の排出源となって経済成長を支えるものと考えるべきなのであるが、それを理解している人はほとんどいなかった。

 もちろんシナリオにも無理がある。タクシーの運転士が成長産業に移動して、経済成長の担い手になるなんて同考えても非現実的だ。タクシー業界に限らず、規制産業や衰退産業の人材はプアで、職業訓練をしたからといって成長産業の担い手として期待するのはムリがある。この辺は机上の理論として規制緩和=経済成長が正しくても、現実にはそうならないボトルネックの一つであり、きちんと解決策を考えないと、他の分野で規制緩和をやっても失敗する。

LCCは経済成長の牽引役か?

 タクシーという明らかな失敗例を挙げて規制緩和に疑問を呈するのはいささか不公平であろう。同じ運輸部門でも成功時事例として挙げられている航空分野について考えたい。

 航空自由化は世界の潮流であり、今さら抵抗もできないが、単に航空業界だけ考えれば、航空運賃が下がり、航空会社の社員の給料が下がった。むしろデフレを加速させた要因に過ぎない。これによって国内旅行が活発化し、観光産業が潤って初めて経済成長の牽引役として認められる。ところが、これについて具体的データが余りなく、本当に経済成長の牽引役なのか疑わしい。規制緩和論者は積極的にLCCの経済効果を調査しアピールすべきではないか。

まとめ

 つまるところ、規制緩和論者は、規制緩和は経済成長に繋がるという机上の理論を具現するための突っ込みが足りない。失敗事例や成功事例の検証が足りない。成功事例のアピールが足りないの「3ない」状態ではないか。

 反規制緩和論者も、バスの規制緩和がツアーバス事故を招いたとか建築確認民間解放が姉歯事件を招いた等、規制緩和が招いた安全やモラルのリスクを強調するきらいがあり、規制緩和は経済成長を生まないのでは?という疑念に基づいた突っ込みを余りやらない。

結局、規制緩和は経済成長には寄与するが、国民生活の安全上負の側面があるというような模範解答に収斂してしまい、議論が深まらない。

 今後は、規制緩和論者も反規制意緩和論者も、徹底的に考えてもらって、以下のような議論が進むことを期待したい。

  • 規制緩和の経済効果についてはもっと疑って検証する。
  • 規制緩和が上手く行かない原因をもっと追究する。
  • 規制緩和が有効なTPO を明らかにした上で、哲学があり、的が絞れた政策を実行する。

 付け加えるが、私は反規制緩和の立場に立って規制緩和を潰したいのではない。規制緩和をセオリーと信じて慢心な学者や評論家、マスコミの鼻を一度へし折って一度反省してもらってから、もう一度立ち上がって地に足がついた規制緩和を考えて欲しいのだ。

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