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イタリア靴職人の伝統を守るECサイト「Peter Nappi」で考える、ECサイトのブランディングとは?

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以前ご紹介した英国のジーンズメーカー「Hiut Denim」のように、伝えるべき哲学とストーリーをもっているブランドは強い。小さなECサイトは特に、素晴らしい製品と同じぐらい顧客の心をとらえられるストーリーがあることが大切だ。

2009年にニューヨークで創設し、現在テネシー州ナッシュビルを拠点とする「Peter Nappi」も、大量生産に走らず手作りにこだわりながら、19世紀のクラシカルなブーツをはじめとする革製品を販売するECサイトだ。

ブランド名の由来にもなった靴職人の祖父、Peter Nappi(以下ピーター)の遺志を100年経った現在に復活させ、妥協のない丁寧な手作りを重んじ、職人として家族として『Made In Italy』の伝統を守り続けている。

同サイトの2012年の売上は50万ドル(約5000万円)に達し、2013年度はその2倍になる見通しだという。

GQやLuckyなどのアメリカを代表するファッション雑誌に取り上げられ、Kings of LeonやThe Black Keysのようなグラミー受賞の大物ロックバンドのメンバーにも愛用されている、同サイトのストーリーをご紹介しよう。

ブランド誕生のストーリー

創業者であり、クリエイティヴ・ディレクターでもあるPhillip Nappi(以下ナピ)氏は、イタリア系移民の3世だ。11歳の時に両親を亡くし、ミシシッピの母方の親戚の元で成長した。

20歳のとき小さな靴屋で働いたことがきっかけでハンドメイドの靴作りに目覚め、将来ニューヨークで自分の店を持つことを夢見ていた。

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1999年、ナピ氏は資金作りのために、テネシー州ナッシュビルで靴とは全く関係のないビジネスを始める。その間も靴の設計やデザインスケッチなどを続け、ようやく準備が整った2009年にビジネスを売却。

自分のルーツであるイタリア製の靴に興味があったことから、妻Danaと娘を連れてイタリアのフィレンツェに滞在するため書類を準備していた時、祖父ピーターに関する書類を偶然見つけた。

その書類とは、第一次・第二次世界大戦時の移民用兵役登録カードと、イタリアとニューヨークを行き来した際の通行証で、職業欄には『靴職人』と記載されていた。

ナピ氏は、生前会ったこともなかった祖父が自分の目指している靴職人であった事実に驚愕した。

1887年にイタリアで生まれて靴製作の技術を学び、1904年に渡米してからも家族のため懸命に働いたという祖父ピーター。その靴作りに対する情熱を後世に伝えたいと、ナピ氏は決意する。

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彼は早速、滞在していたフィレンツェで、祖父と同じ古い製法のなめし革の靴を作る職人を探し回った。当時イタリア経済が不況だったこともあり、ファクトリーの職人はナピ氏の話を喜んで聞いてくれたという。

そして、ナピ氏がデザインした古典的なブーツを作ることができる78歳の靴職人とその家族を見つけ出し、彼らのファクトリーと契約に漕ぎつけた。

米国に戻ったナピ氏は、ニューヨークで祖父の名を冠したPeter Nappiを設立。しかし、すでに数多くの靴ブランドが乱立していたため、3カ月後にはナッシュビルの現在のスタジオに移転。2011年から本格的にビジネスをスタートした。

こうして祖父ピーターの靴は、孫のナピ氏の手によって現代に蘇ることになったのだ。

こだわりの革製品

ここでPeter Nappiの製品について少し触れよう。

英国のリーズでなめされた天然植物由来のタンニンのレザーを使用するなど、徹底的に品質にこだわった素材を使用。形成から縫製にいたるまで、イタリアのトスカーナ地方で一流の職人の手により、ひとつひとつ靴の加工が行われている。

大量生産に走らず手作りにこだわっているため、商品が売り切れたら二度と同じものは購入できない。

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上記の理由から、商品価格が545ドル~795ドル(約5万4500円~7万9500円)と高めだが、顧客のターゲット層が35歳から54歳、年収15万ドル(約1500万円)以上とかなり細かく絞り込まれており、製品やスタジオすべてから醸し出される、クラシカルでどこか懐かしいスタイルが受け、着実にファンを増やしている。

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ストーリーと、ブランドの「人格」

僕の会社、ネットコンシェルジェの仕事の一つにブランディングがある。僕たちの行うブランディングというものは、そのブランドの持つ人格を、商品や店舗のデザイン、コンテンツから果てはECサイトの機能にまで投影する作業を指す。かっこいいブランドはかっこよく、真面目なブランドは真面目に、正しく伝える。正しく伝えることで、本来顧客となるべき人が正しく顧客に、ファンになってもらえるのだ。

ブランディングを行うには「人格」が欠かせない。人格がないお店やメーカーのブランディングを行うことはできない。伝えるべき実態がないからだ。強いブランドを作るには、最低限その人格が誰かにとって魅力的でなければならない。

Peter Nappiのブランドをもう一度見てみよう。
「質のよい素材を使い、妥協のない丁寧な仕事を重んじることで、伝統を守り続ける」
この強い思いこそが人格の根幹である。そして、祖父とのストーリー。これもその人格がこれまで歩んできた証拠になる。このようなしっかりとしたコンセプトやストーリーがあれば、あとはそれを伝えるだけでいい。

あなたのブランドには、あなたの思いが詰まっているだろうか? ストーリーがあるだろうか?
それをきちんと伝えていこう。そうすれば、あなたがこだわって生み出した商品を、わざわざ安売りする必要なんて、どこにもないのだ。

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