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シリコンバレーの利益団体化に注目が集まっている Facebook、LinkedInが運動の核

今週号の「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」にジャーナリストのジョージ・パッカーが書いた「世界を変えろ(Change the World)」と題されたルポルタージュが掲載され、話題になっています。

これまでシリコンバレーのハイテク企業はアメリカの政治に無関心で、自らの政策課題をワシントンDCに働きかけることは稀でした。しかしFacebookのマーク・ザッカーバーグとLinkedInのリード・ホフマンが中心となって、FWD.usという政治運動が始められ、その手始めに移民法改革に焦点が当てられているというのが記事の内容です。

シリコンバレーの起業家たちが社会や政治の問題に無関心で居られなくなったひとつの理由は、Facebookのお膝元であるパロアルトで、ルート101を境に高速道路の反対側に貧困が広がっているということがあります。つまりシリコンバレーはアメリカで最も格差が酷い場所になってしまったのです。

カリフォルニアには「提案13号」という条例があり、不動産税が低く抑えられています。その関係もあって地域の学校は十分な予算を貰えないという問題が生じています。

これがウッドサイド小学校のような裕福な場所にある公立学校なら、父兄がチャリティー・イベントを催し、運営資金を集めることが出来ます。

例えばオラクルのラリー・エリソンCEOの自宅にある日本庭園を見物して回るツアーの券は200万円で売れたそうです。そのようにしてウッドサイド小学校は毎年約2億円の「維持費」をPTAから集めることが出来るのです。

メンローパークにあるFacebookの本社はタウンスクエアのような広場があり、その舗道には「ハック(HACK)」という文字がデザインされています。その文字はとても大きいので空を飛ぶ飛行機からも見えます。

アップルはクーパチーノに50億ドル近い予算をかけて新しい本社を建設中で、宇宙船のような姿をしたその本社で仕事をすると外界との接触をする必要は無くなります。

このようにシリコンバレーはリアルな世の中と隔絶された、浮世離れした世界に入って行ってしまっているのです。

若いエンジニアたちは「オレ達は世界を変える!」というのが口癖になっています。二言目には「インパクトがあることをやり、スケーラブルなことを試みたい」と言います。Facebookのモットーは「速く動いて、ぶち壊すのを恐れるな」ということです。

こうした考え方の背景にはシリコンバレーに根強い、個人主義の風潮が関係しています。そこでは「自分が先ず変わり、ひとりで何かを始めた方が、ずっと多くのことを達成できる。キミもそうするべきだ。なぜ他の連中には、それがわからないのかな?」というメンタリティーがあるわけです。

マーク・ザッカーバーグがハーバードの寮でFacebookを始めた時、殆どの寮の友達はFacebookの社員になりました。でもジョー・グリーンという寮友だけは社員になりませんでした。

ジョー・グリーンとマーク・ザッカーバーグはフェイスマッシュ(Facemash)というサイトで、ハーバードの女学生のうち誰がいちばん「そそる」ルックスかを競うプロジェクトを立ち上げ、大学側から謹慎処分を受けました。ジョーの父親はUCLAの数学の教授ですが、このニュースを聞いて「もうザッカーバーグと遊ぶな」と交遊を禁止しました。それでジョーはニュー・ハンプシャーにおけるジョン・ケリー議員の選挙運動チームに参加します。

こうして政治の途に進んだジョー・グリーンが、後になって旧友のマーク・ザッカーバーグと再会し、二人はシリコンバレーの利益団体を結成するアイデアを話し合います。そして元ネットスケープのマーク・アンドリーセン、グーグルのエリック・シュミット、ヤフーのマリッサ・メイヤー、リンクトインのリード・ホフマンなどの参加を得たわけです。

2011年にオバマ大統領がシリコンバレーに来て、ベンチャー・キャピタリストのジョン・ドーアの自宅でスティーブ・ジョブズなどを交えて会食した際、シスコ・システムズのジョン・チェンバースCEOはオバマ大統領に「アメリカの税制を改革してくれないと、海外に留め置かれてある利益を米国に持ち帰れない。これでは雇用は増えない」と切々と訴えました。

その横でマーク・ザッカーバーグはオバマの経済アドバイザーであるバレリー・ジャレットに「なんでアイツは自分の会社の利益になることだけしか主張しないのだ。もっとアメリカ合衆国にとって大事な問題がある。それはH-1Bビザをもっと発行することだ」と耳打ちしました。

H-1Bビザはプログラマーなどの優秀な人材に交付されるビザです。

当初、ザッカーバーグはインドや中国からハーバードやスタンフォードに学びに来る、優秀な学生をどう確保するか? という点だけに関心を持っていました。しかしそれでは良心の問題を解決することは出来ません。それはつまり秀才だけでなく、全ての移民の抱えている問題に政策課題を広げて、根本的な移民法の改革を働きかけて行くべきではないか? ということです。

これがザッカーバーグを中心とするグループがFWD.usというサイトを立ち上げ、不法移民の子供などの戸籍の無い(アンドキュメンテッド)アメリカ人の問題などを含めた運動を展開しはじめた経緯なのです。

※本記事はBLOGOSへの書き下ろしです。

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