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23日の市場の動きと今後への不安

 5月23日の東京市場の動きは、記録にも記憶にも残るものであったと思われるので、少しまとめておきたい。

 異変がまずあったのが債券市場。債券先物は寄付から前日比1円安と急落した。FRBが早ければ6月にも「出口」というか「正常化」に向けた動きをはじめる可能性が出てきたことで、22日に米国の長期金利が2%台に乗せたことがひとつの要因。22日の日銀金融政策決定会合後の黒田総裁の会見で、長期金利の上昇についてはそれほど懸念してはいないと認識され、これも嫌気されての債券売りであったと思われる。

 債券先物は141円01銭に買い戻され、その後再び140円90銭まで売られて、8時53分にサーキット・ブレーカー発動し取引が10分間停止した。現物債は10年債主体に売られ、10年328回の利回りは1.000%ちょうどまで上昇した。つまり日本の長期金利が昨年4月5日以来の1%台となったのである。

 FRBの出口が意識された外為市場では円安ドル高が進み103円台に。この円安もあって、今日の東京株式市場は買いが先行し、一時前日比300円を超す上昇となり、日経平均は16000円手前まで上昇した。

 この一連の動きから、海外ヘッジファンドなどは103円台の円安と、それによる日経平均先物買い、同時に債券先物の売りを仕掛けていた可能性がある。22日の日米の中銀トップの発言は債券の売り材料ではあったが、先物のストップ安を誘うほどのものではなかったと思う。先物とともに現物はベンチマークの10年債主導の動きであり、メガバンクなどの動きが主導していたようにも思えず、海外投資家の仕掛け的な動きの可能性が高かったのではなかろうか。

 債券は売り一巡後は買い戻され、日経平均は16000円手前で買いは止まり、上値が重くなった。動きがあったのが10時10分で、日銀はシグナルオペと言える1年物共通担保資金供給(全店、固定金利方式)を午後ではなく午前中にオファー、さらに国債入札日(流動性供給入札)にも関わらず国債買い入れ(残存期間1年以下と1年超5年以下)をオファーした。このシグナルオペに債券先物は反応し、債券先物は買い戻しが加速、反対に日経平均先物は戻り売りに押され、中国の5月製造業PMIの低下などもきっかけに下げ幅を拡大させた。

 午前中のタイミングで、朝方の債先売り・株先買いのポジションをひっくり返してきた可能性がある。株式市場では次第に売りが売りを呼ぶような動きとなり、反対に債券は先物や10年債主導で、一気に上昇し142円台に。ただし、超長期債は14時以降はほとんど出合いなく、まさにディーリング相場となっていた。

 日経平均先物は震災後の2011年3月15日以来のサーキッド・ブレーカーが発動し、結局、前日比1143円安と2000年4月以来の大きな下げ幅となった。

 債券先物は142円74銭まで買い戻されて、大引けは61銭高の142円51銭。現物債は10年債が一時の1.000%から0.825%まで戻った。5年債は0.455%から0.355%と0.1%も当日中に利回りが低下した。以上が昨日の債券と株の動きであった。

 この株式相場の下落に対し、甘利明経済再生担当相は閣議後の会見で、「アベノミクスは順調に進展しており、また日銀は市場との対話を総裁自らが実践している」との認識を示した。

 果たしてアベノミクスは順調に進展しているのか。さらに日銀は市場との対話を総裁自らが実践しているのか。このあたり、やや疑問を抱かざるを得ない。

 アベノミクスの大きな柱となる金融政策で行おうとしているのはデフレからの脱却である。デフレからの脱却期待で長期金利が上昇との見方もあるかもしれないが、異次元緩和で物価が上昇している兆候はいまのところ見えていないし、市場参加者も2%の物価上昇には自信が持てないでいる。物価連動国債から算出されるBEIは流動性はほとんどなく、それを参考にするのはやや無理がある。日経新聞によると5月の民間エコノミストの経済予測平均で、2015年1~3月期の消費者物価上昇率は消費税率上げの影響を除いて前年同期比0.6%の上昇となったそうである。6月に消費者物価指数は前年比プラスに転じるのと観測だが、これは異次元緩和の影響というよりも円安による影響が大きい。

 アベノミクスが順調に進展しているように見えているのは、あくまで欧州の信用リスク後退を背景にした円安と米国株の上昇の影響なども受けた株高に負うところが大きく、アベノミクスが順調に進展していると言うよりは、順調に株高が進展してきたとみたほうが良い。

 日銀は市場との対話を総裁自らが実践しているとの見方も疑問を抱かざるを得ない。むしろ総裁と債券市場参加者の間には距離が出来ており、それが長期金利の上昇を招く要因のひとつになっている。日銀はシグナルオペなどを使って、長期金利の急激な上昇に対応しているが、これも小手先の手段でしかなく、総裁と市場との距離が縮まらない限り、そしてアベノミクスとそのための異次元緩和に対する市場参加者の不安が取り除かれない限り、長期金利を押さえ込むことは難しくなると思われる。

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